四季のうた

秋雛(アキヒナ)

序章「手紙」

買い出しから帰り、家のポストを開けると、一通の手紙が入っていた。

差出人は知らない人物だったが、この手紙は確かに私宛のものだった。

家に入って手紙を開くとそこには、季節のあいさつの後に、

「この手紙が貴女の手元に届いている事を幸運に思います」

と書かれていた。

少し滲んだインクから察するに、今時珍しく万年筆か、つけペンで書かれた物のようだ。

そして手紙には、

「大切な話が有るからぜひ、一度会って話がしたい」

と、切々と綴られていた。

その文章に私は何となしにこの人に会ってみたいと思わされた。

私は早速返事をしたためると、ポストに投函して、遠出のための支度を始めた。

手紙の主は、見も知らぬ人物だが、何となく、この鬱屈した人生に何かを与えてくれる気がした。

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