第14話 佐久間と巫女

佐久間と巫女




「ふぁー、よく寝……てないけど、すっきりした!」


寝た気はしないけど、頭はすっきりしている。なんでだろう? そんなことを考えつつ周りを見渡すと、珠樹が、


「良く寝てたよ。かなりスヤスヤだったよ。でも、夢の中で、違う体になって、皐文ちゃんと共に外の世界に行ってたんだよね?」


「うん、そうなんだけど、それじゃあ、睡眠時間が足りている気がしないんだよね」


「でも、すっきり起きているから、多分足りているんだと思うよ。おそらくだけど、アミちゃんの頭と体は休んているから大丈夫なんだろうね」


「なるほど、じゃあ、寝ずに動けて、便利ぐらいで良いのかな」


「かもね」


「ところで、佐久間には会えたのかな?」


「それが昨日は帰ってこなかったみたいだよ」


たしかに、佐久間宅を見ても誰もいない。というか、壁がないのは嫌だね。ほぼ野宿だもんね。


「戻ったでござる」


「うわっ! ビックリした。って千代か、どうしたの? 何か気になっていた事があったんだよね。分かった事が有ったのかな」


「そうでござる。まずは、この近くに二人の人影が見えたでござる。一つ目は村に入る前に見つけた、弓を携えた少女でござる。此方を狙っていたので、追いかけたでござるが、逃げられたでござる。近くまでは行けたのでござるが、矢を大量に射られて、それを回避するのが大変でござった。そして、その時に、出会った男がいたでござる。それが二人目でござる。その男は矢を膝に受けて負ったので、治療したでござる。今から迎えに行こうと思うのですが、いかがでござるか」


「一人目の少女って、巫女服じゃなかった?」


あれ、なんか、珠樹が焦っている風に見えるね。というより、


「知り合いの子かな? だとすると、前に言ってた代美って子?」


そう、前に言っていた、珠樹の友達の事かなっと思って聞いてみたけど、


「うん、そうだとすると、この旅も終わりなんだけど、後は目的あるとするなら、悪魔集めだけなんだけど」


「たしかに、巫女服でござった。とりあえず、男の方を助けに行くでござる」


「うん、そうだね」


「おそらく、佐久間って人だろうからね」


こうして、私たちは、千代の案内で、その男が待つ場所に向かった。



洞穴



「ここの穴の中? 少し怖いんだけど」


「そうでござる。この中に隠れているはずでござる」


この洞穴の中に、いるのかぁ。少し入るの怖いなぁ。


「私後から入るから、先行ってくれないかな?」


「承知」


千代は、魔術で灯りを出して、ずんずんと闇の中を進む。次に私、その後ろに珠樹、最後に乃理という順番で、歩いている。


「って、なんで私が二番目なの? 一番後ろで楽に歩きたいよ!」


「一番後ろは、一番危ないけどいいのかな? 後ろからの襲撃に気をつけながら歩かないといけないけど」


「真ん中がいいです」


たしかに、後ろ危ないかも。そう考えなおして、大人しく真ん中にいることにしました。


「真ん中も、おっと何でもないでござる」


なんか千代が不穏なこと言おうとしてなかった?


「千代、なんか真ん中も危ないのかな?」


「い、いえ大丈夫でござるよ」


「んー? 心配だけどまあいいか。ってならないよ! なに教えて!」


「いや、襲われた際は仕事が多いってことでござる。両面から襲われたら、前も後も相手しなくてはいけないので」


「じゃあ、楽な位置ってない?」


「そうでござる。ですが、今回は危険なことはないはずでござる」


そんな会話をしつつも、奥に着いた。そこには、


「おお、ありがとう。来てくれたか。っと仲間も一緒か?」


「早く治療するぞ。乃理殿は治療をお願いするでござる」


「じゃあ私はアミと見張りをしておくよ」


「御意にござる」


「まず、消毒をしなくてはなりませんね。というか、こんな洞窟の奥に隠れているなんて、破傷風になりますよ!」


「昨日消毒したでござるが、それならもう一度やった方が……」


「そうですね。もう一度消毒して……」


ちゃんと治療しているみたい。そういえば、今って、珠樹と話すチャンス?


「珠樹、さっき言ってた、巫女服の子とはどんな関係なの?」


「親友だよ。昔からの。けど、代美ちゃんがこんなことするとは思えないんだよね。何かあったのかな?」


「いや、私にはわからないけど、でも、今この時だけ見るとその子は敵だよ。戦えるの?」


「うん、無理」


「即答!」


「でも、多分止めることはできるよ。親友だもん。間違っていたら止めないとね。っと探索用に出していた、ドローンからのモニターに映っているね。……やっぱり、代美ちゃんだ。ごめんちょっと止めてくるよ」


「一人で行くの?」


「うーん多分何とかなると思うよ!」


行っちゃった。けど心配だよ。オロオロしちゃう。


「アミ様、行ってあげてはどうですか? ここはもう、千代と私めで大丈夫でございます」


「……ありがとう!」


私は遅い足で走る。珠樹の手伝いをしたいがために!

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