WAKA HAGE ~髪は死んだ~
冨田秀一
エピローグ ハゲたちの、はげによる、禿のための物語
WAKA HAGE
Wakahage――若禿げ。進行していく薄毛で、10~20代前半で発症するケース。一生の付き合いを覚悟せねばならない進行性の不治の病。
アルファベット横文字にしたところで、やはり禿げは禿げなのである。頭から分かりきっていたが、かっこよくも何ともない。
なお、漢字一文字の「禿」ではげと読むし、送り仮名ありの「禿げ」とも表記できる。平仮名の「はげ」も、「ハゲ」と片仮名にされることも多いが、どの表記でもどこか哀愁染みた寂しさを感じさせる言葉である。
この題名にした理由は、頭から最後まで禿げについて綴っているので、シンプルに「wakahage」とした。アルファベットであれば、「あれ? なんだこの英単語?」と疑問が生じ、一見禿げを隠せるのではないかという姑息な狙いが込められている。
ちなみに他の案としては、「人の頭を笑うな。」とか、「人は毛量が9割」とか、「世界の終わりだハーゲボイルドワンダーランド」などがあったが、多方面から怒られそうなのでやめた。
さて、若禿げの定義から入り、長々と禿げの表記について語ったが、これからもまた延々と禿げの話が続く。
そんなことを言うと、「禿げの話なんて聞いてらんねぇよハゲが! フサフサの俺には関係ねぇぜ!」と嘲笑してる読者がいるかもしれないが、明日は我が身と思って、今すぐその浅はかな考えを改めることを忠言させていただく。
僕だって、祖父・父親ともふさふさの家系に生まれたのに、まさか24歳にてwakahageに悩まされるなんて露に思っていなかった。
いわゆる僕は――突然変異種というやつなのだろうか。
もしくは母が若い頃に過ちを犯し、僕の本当の父はどこかの知らない禿げ親父という可能性もある。ともかく僕が禿げ出したのは、まさに青天の霹靂であった。雨風は禿げにとっての大敵である。
この話は、若禿げに悩まされた僕が、同士(他の禿げ)たちに出会い、寒々しい頭を寄せ合いながら、禿げ頭を懸命に隠して尻を曝け出しながらも前向きに生きる話である。
同士の禿げたちに一筋の希望を、禿げへの差別撤廃を、禿げに勇気を与える聖書(バイブル)たるそんな物語を。
そしてハゲの悩みとは無縁のフサフサ達にも、いかにハゲが苦労して生きているかを知っていただきたい。これを読めば、きっと明日から禿げを見る目がかわるだろう。毛根が絶滅しかけている禿げたちには、絶滅危惧種動物並みの愛を与えてもらいたいものだ。
さて、前置きはこれくらいにしよう。そろそろ――禿げたちの、禿げによる、禿げのための物語を始めよう。
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