第406話 襲撃前の計略

ロッテマリーとルルーシェルの無双により、呆気なく瓦解したリュストヘルゼ帝国の侵略行為。

ある者は身体の一部を失い。

ある者は死に絶える。

それでも、私達の方への被害は皆無。



「ロッテマリー、ルルーシェルお疲れ様。良くやったわ。」

「はっ、ありがとうございます、ディア様。」

「お褒めいただき嬉しゅうございます。」



私の賛辞に跪き頬を染めるロッテマリーとルルーシェルの2人。



「アスラとユエも2人を守ってくれてありがとう。2人のおかげでロッテマリーとルルーシェリにも怪我なく終わったわ。」

「うむ、ディアのお願いだからな。」

「また何かあれば言うのだぞ?」



嬉しそうなアスラとユエの2人は私の影の中に消える。



「ーーーーさて、と。」



この戦いは無事に相手方の兵達を蹴散らし、私達の勝利に終わった。

次なる事は。



「そろそろ、あちらのラスボスの登場かしら?」



リュストヘルゼ帝国皇帝の寵妃マリア、魔族であるマリアージュとの最後の戦いだ。

こちらへの被害は皆無。

となれば、陰で暗躍していたご本人様のご登場となるだろう。



「リリス、あちらの様子は?」

「はい、寵妃は自分の計画が潰されて怒り狂っている様です。あちらに残る文官や民衆達を集め、新たに進軍させる計画を進めている様なのですが。」



うつすらとリリスが笑う。



「ディア様がお許しになるはずありませんのに。」

「ふふ、再進軍なんて計画を潰された寵妃の考えそうな事ね。何も知らない民達を私が危険に晒す訳ないじゃない。」



なぜ、寵妃の計画通りに駒を与えると思ったのか。

考えが足りない。



「今頃、ディア様が命じた事をエトワールを筆頭に遂行している事でしょう。寵妃の企みの再進軍は不可能かと。」

「でしょうね。ほとんどのリュストヘルゼ帝国の民は私が命じて結界で保護しているし、寵妃が使える駒は王宮に護衛と残った者と文官達だけでしょうからね。」



全てを合わせても、数千もいない。

そんな人数で再進軍しても返り討ちにあうのは明白。



「となれば、寵妃様ご本人様がご登場となりそうね。早くて今日か明日にでも奇襲を仕掛けるかしら?」



狙うとしたら、国の柱。

王や高官の人間。



「ーーーまたは、ニュクスお母様の愛し子である私への襲撃ね。」



確率として高いのは私への襲撃。

その事実を口実に、自分は決起したと言う理由を作れるのだから。



「えぇ、えぇ、私達のディア様を狙うでしょう、あの寵妃は。うふふ、そんな事、このリリスが、皆が許すはずがありませんのに。」



目の笑っていないリリスが寵妃を嘲笑う。



「ディア様を狙うと決めただけでも万死に値する事ですが、明確な証拠を皆へ示す為に襲撃を受けなくてはいけないとは口惜しいです。今すぐ、その首を刎ねしまいたいと言うのに。」



瞳の中に増悪の火がゆらめく。



「ふふ、リリス、可愛い戯れと思い許してあげなさい。どうあっても、この私へ寵妃の刃が届く事はないのだから。」



皆に守られている私へ、寵妃の刃は届かない。

全て無駄な抵抗なのだ。



「逆に寵妃からの襲撃を利用して民衆を煽りましょうか。か弱いニュクス様の娘が襲われて怯えているなんてゴシップなんてどうかしら?もちろん、寵妃の襲撃の映像も添えたら効果は抜群よね?」



どちらが悪で、正気なのか。

襲撃に走った寵妃の事を民衆はどう思うのか楽しみだ。



「ふふ、私への襲撃の時はフィリアとフィリオの2人が守ってね?」

「「はい!」」



元気よく頷くフィリアとフィリオの2人。

同じ魔族であるフィリアとフィリオが私への襲撃を防ぐ事で、2人への非難の声を抑えようと思っている。

それでもうるさく喚く様なら、じっくりお話が必要だろう。



「この私のそばにいるフィリアとフィリオへの非難や暴言を許す訳ないのにね?」



完璧、敵認定。

徹底的にお話し合いを行おうと思う。



「あらあら、ディア様とのお話し合いですか。直接お会いし、お話もできるなんて感謝に大泣きする事でしょう。」

「だよね、リリス!?頑張ってお話しするね!」



喜べ?

ニュクスお母様の娘が直接お話ししてやるからな?



「では、その時は護衛として僕もディア様のお側におります。」

「良いですね、私もコクヨウと共に護衛としてディア様のお側におりましょう。」

「ん?コクヨウとディオンも一緒にお話ししないの?」



コクヨウもディオンも、フィリアとフィリオの2人を可愛がっているもんね。

言いたい事の1つや2つあると思うんだけど。



「大勢で迫ったらいじめだと言われかねませんから。僕とディオンはディア様の護衛と記録係としてお側におりますよ。」

「うっかり記録した魔道具を無くしてもお許しくだいさいね?」



にっこりと微笑む2人。

微塵もフィリアとフィリオへの非難の声や暴言を許すつもりはない模様。

うむ、素晴らしい。



「じゃあ、暇だから記録の魔道具をたくさん作ってようかな?あっ、ガルモンド王国の王宮に記録の魔道具を置かせてもらおうかな?」



寵妃様の襲撃の備えてだと言えばヒューイット様も許可してくれるだろう。



「うっかりガルモンド王国の王宮内に置き忘れた記録の魔道具に色々と映っていても、しょうがないよね?」



誰だってうっかりはあるものだもの。

私は悪くない。



「まぁ、ディア様ったら、お悪いお方。では、私はガルモンド王国の王宮内のメイド達を掌握して参ります。えぇ、彼女達は噂のスペシャリストですから。」

「ふふ、アディライトも悪い子ね。でも、頼むわ。」



アディライトと笑い合う。

他国の王宮?

自粛しろ?



「ふふ、自衛は大切よね?」



全て自衛の為。

そうであると言えば、そうなのである。

寵妃が私の襲撃に来たのは、次の日の夜の事だった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る