第330話 母の愛

ずっと、私が悪いんだと思ってた。

お母さんを奪ってしまった私がお父さんに恨まれるのも仕方ない事なんだと。

愛される事を諦めていた。



「ねぇ、こうは考えられない?お母様にとって、自分の命よりも生まれてくる我が子がの方が大事だったのだと。」

「・・・自分の命よりも、」



お母さん、私の事が大事だったのですか?



「その証拠に、お母様の切なる願いを聞いたあちらの世界の神が私に貴方に新しい肉体を与え、幸せな未来を作れるよう尽力してくれと頼まれたわ。わざわざ、こちらの世界に自分が来てまでして、ね。」

「・・・だから、私の肉体を作ってくださった?」

「ふふ、貴方は覚えていないだろうけど、新たな肉体を得るまで、魂のままここにいたのよ?」



悪戯っ子のようにウィンクするニュクス様。

肉体を得るまで、ここにいた?



「言うなれば、ディアちゃんは神界で生まれた私の子。だから、私の愛し子なの。」



絶句する。



「ふふふ、急に色々と言われて困惑するわよね?でも、貴方には覚えていて欲しいの。」

「・・何をですか?」

「貴方は、弥生ちゃんは、お母様に愛されていたわ。」

「っっ、」



ねぇ、お母さん。

本当に?

私の事を、お母さんは愛してくれていたの?



『幸せになって、“やよい”』



あの日。

これが、リデル、お母さんが私に伝えたかった事だった?



「ーーーっっ、お母、さん、」



顔を覆う。

どんなに悲しかっただろう。

命懸けで生んだ我が子が自ら死を選んだ事を知って。



「ごめんなさい!」



どんな思いで、私の幸せを願ってくれたの?

時に迷って、立ち止まって。

私達は選択する。



「お母様は、貴方を追い詰めた原因となった自分を許せず、あの日の真実を伏せる事を望んだ。でも、弥生ちゃん、今の貴方は自分が愛されていた事を知るべきだわ。」



時に世界は残酷で。

でも、その時に選ぶ選択は、幸せへの一歩。



「怯える事は何もないわ。貴方の側には、ずっと変わらない愛情があったのだから。」



なんて愛情は尊いのか。

こんなにも、私の事を幸せにしてくれる。



「私の愛し子よ、幸せになりなさい。お母様の為だけではなく、自分の為にも。」

「っっ、は、い、ニュクス様。」

「ふふ、私の事をお母様と呼んでくれても良いのよ?」

「ニュクス、お母様・・?」

「まぁ、」



嬉しそうに、ニュクスお母様は破顔した。

ねぇ、お母さん、見ていて?

この世界で、どんなにみっともなくても良い、幸せになる為に足掻いて頑張ってみるから。



『ずっと見守っているわ、私の大切な娘。』



お母さんの声が聞こえた気がした。

例え気のせいだとしても、私の側で見守ってくれていると信じたい。



【ーーー新たな称号、『神の愛娘』、『全精霊王に寵愛される者』を獲得しました。】



「へ・・?」



新しい、称号の獲得?

慌てて自分のステータスを目の前に表示させる。



名前:ディアレンシア・ソウル

LV153

性別:女

年齢:16

種族:人族(半神)

称号:世界を渡りし者、神に見守られし者、神の愛娘、全精霊王に寵愛される者

HP:93450/93450

MP:90005/90005

スキル

言語理解、空間収納、鑑定、経験値倍増、マップ、気配察知、危険察知、隠蔽、状態異常耐性、体力回復上昇、魔力回復上昇、攻撃力上昇、防御力上昇、身体強化、精神耐性、全属性魔法、詠唱破棄、武器作成、思考加速、剣術、体術、転移、従魔召喚、スキル付与、スキル改変、リバイブ、経験値共有、魔道具製作



ユニークスキル

創造魔法



従魔:リリス

従魔:アスラ

従魔:ユエ

従魔;エトワール

従魔:ヴァレンティーナ

従魔:エイル



・・・なぜか、称号が増えていた。



「ニュクス様!」

「お母様、よ、ディアちゃん?」

「っっ、、ニュクスお母様、私のステータスに新しい称号が増えているんですが!?しかも、種族も人間の後に半神って何です!?」

「あらあら、うふふ、私の娘なのだから、当然よ?」



愕然と目を見開く。



「これで、わ。例え、ね。」



はっと、息を飲む。



「そ、れは、」

「そう、ディアちゃんが勇者に何をしようとも、私は味方よ。」



ニュクスお母様が嫣然と微笑む。



「ディアちゃんの好きな様にすれば良いわ。その為に勇者は、相馬凪は、この世界に召喚させたのだから。」



残酷なまでに美しく。



「あれは、ディアちゃんへの贄。いいえ、ディアちゃんが幸せになる為の踏み台かしら?」



私の頬をニュクスお母様が撫でる。



「私の愛し子。貴方の幸せを、私も見守っている事を忘れないで。」

「ーーーっっ、ありがとう、ニュクスお母様。」



涙を滲ませて、私は微笑んだ。

行こう。

相馬凪が待つ、聖皇国パルドフェルドへ。

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