第302話 ルドボレーク国

私の為に宿の手配をしてくれたアイリス達。

嬉しそうに頬を染めるアイリス達だが、冒険者としても超一流の子達なのだ。

私達に続き、次にSランク冒険者になるのもアイリス達だと思われる。



「いいえ、ディア様のお役に立てることこそ、私達の何よりの喜びでございますので。」



私からの労いに瞳を潤ませ、感激する子達。

本当に可愛い子達である。



「何か欲しいものとかある?今回のご褒美にするから、何か希望があるなら遠慮なくいってね?」

「・・ほう、び、ですか?」

「うん、何かある?」



アイリスが口元を手で覆う。



「・・それは、何でも、よろしいのでしょうか?」

「ん?私が与えられるものならね?何か欲しい物でもあるの?」



可能な範囲で叶えますとも。



「っっ、では、誠悦なお願いなのですが、ディア様に抱き締めていただきたいです!」

「「「私(僕・俺)達も同じでお願いします!!」」」



全員からのお強請りに驚く。



「・・え、そんな簡単な事で良いの?」



それ、ご褒美になる?

ただ抱き締めるだけだけなんだけど。



「もちろん、それが私達の何よりのご褒美になります!」

「一生分のご褒美と言っても過言ではありませんね。」

「それだけで、どんなモンスターでも倒せそうです!」



アイリス達が深く頷く。

きらきらと期待に輝く、全員の瞳が私の方へと向く。



「なら、良いよ?」



逆に、そんなので皆んなに悪い気がする。

あとで他のご褒美も考えよう。



「「「「ありがとうございます、ディア様!」」」」



一通り全員の希望通り、ご褒美でハグし終わり、頬を蒸気させたアイリス達がルーベルン国の屋敷へと転移で戻って行くのを見送る。



「あんなので満足するなんて、変わった子達ね。」



しみじみ思う。

皆んな私に対して、盲目的に崇拝しすぎだと思う。

私は普通の一般庶民なのに。

ただ抱き締める事がご褒美になんてならないと思うんだけど。



「ふふ、ディア様、私はそんな事ないと思うますよ?」

「アディライト?」

「こんなにも美しく、慈悲深く、お強い方はこの世界にはいませんもの。」



うっとりとするアディライト。



「このアディライト、ディア様にお仕えでき、とても幸せです。」

「・・あぁ、うん、ありがとう。」



引き攣る私の頬。

・・・ここにも、私信者がいたよ。



「さ、さて、私は明日からのルドボレーク国の散策場所を考えようかな?」



アディライトから目を逸らす。

現実逃避は大事よね!

アイリス達が作成したルドボレーク国の詳しいお店のマップに私は視線を落とす。



「うわ、ルドボレーク国のお店が詳しく書いてある。」



感心する。

リリスからの手伝いがあったとしても、ここまで精密に、なおかつ丁寧にお店までの道順まで書かれているなんて感動した。

作るの大変だったろうな。



「うん、やっぱり他にもアイリス達にご褒美を買っていこう!」



この手作りマップもあるし。

色々なお店を見て回って、アイリス達のご褒美を探そう。

決意して、マップに目を通した。



「あれは何だろう?」



これから開催される海竜祭の為か、街中で出店が多く出ている。

何とも喜ばしい事だ。

アイリス達お手製の詳細なお店の位置のマップを手に、私達はルドボレーク国の街中を歩く。



「あっ、あれも美味しいそう。」



あっちへふらふら。



「なんかあっちから良い匂いがする。」



こっちへふらふらと、気の向くままに出店を堪能する私。

幸せである。



「ディア様、汚れた手をお拭きしますね?」

「ん、ありがとう、アディライト。」



アディライトや他の皆んなに甲斐甲斐しくお世話され、見守られながら出店をはしごする。

どこも食べ物が美味しいので、大満足な私。

太りそうな気分。



「ディア様、そろそろーーー」

「・・アディライト?」



アディライトの声に被さり、呼ばれた名前に全員が振り向く。

私達の後ろにいたのは、1人の青年。



「・・トム?」



驚きに目を見開いたアディライトが、1つの名前を呟いた。

どうやら、目の前の青年の名前らしい。



「・・・やっぱり、アディライト、なんだな。」

「えぇ、そうよ。久しぶりね、トム。」



顔を強張らせた、トムとアディライトに呼ばれた青年が私達の方へと近付いてくる。

当然のように、私の前に立つコクヨウ達。



「ディア様、暫く僕達の後ろへ。」

「あっ、うん。」


コクヨウの言葉に頷き、近付くトムを見つめる。



「・・あれ、あの子。」



コクヨウ達の後ろから顔を出し、私はじっとトムの顔を見ていた私は気が付いてしまった。



「アディライトの事しか見えていない?」



トムの瞳は、アディライトの事だけを見ている。

アディライトの側にいると言うのに、私達の事は眼中外のようだ。

ふむ、これはーーー



「恋、ね。」



知り合いみたいだし、アディライトがトムの初恋相手だったりして?

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