第262話 ドワーフ姉弟の購入

呆けるルミア。

うん、可愛い顔が台無しだよ?



「だから、私に買われない?あ、ちゃんとルミアの弟君も私が一緒に買うよ?」

「弟も?」

「うん、家族は一緒が良いでしょう?」

「・・本気ですか?」

「もちろん。」



私は本気ですとも。

懐疑的な目を向けるルミアに頷く。



「私を買ったら、貴方様にも、大変なご迷惑がかかりますよ?」

「覚悟の上よ。」



楽しい迷惑なら、大歓迎。

ウエルカム。



「・・なぜ、ですか?」

「ん?」

「貴方様が、そんなにも私を買おうとする理由が分かりません。ご自分の不利益になる私を買う理由が、貴方様にありますか?」



ルミアを買う理由?



「貴方の事が欲しいから。」



さらりと返す。



「は?」

「私は、ルミアが欲しいと思った。」

「・・・。」

「で、そのついでに変態さん退治の楽しい遊びがしたいから?それがルミアを買いたい理由かな?」



ぶっちゃけ、ルミアを買うと決めたのは、自分本意な理由です。



「へ、変態の退治って・・。」



引き攣るルミアの顔。



「え?変態さんの退治は、大事でしょ?」



主に、今可愛い幼児をお持ちの親御さん達には特に。

うん、大感謝されると思うんだけどな。

自分の大切な娘が変態ロリコンに狙われるかも知れないじゃん?



「・・ま、まぁ、あんな変態を野放しにしない事は、確かに大事かも?」

「ふふ、でしょう?だから、ルミアを買う必要が私にはあるの。」

「必要?」

「ルミアを買った私をゲスナンが許すと思う?」

「いいえ、絶対、何かしますね、あのクズなら。」

「でしょう?なら、自衛も止むなし、よね?」



口角を上げる。



「こちらから何かしたら批難されるけど、自衛なら、文句は言われないでしょう?」

「なるほど。」

「だから、ルミア、貴方が必要なの。そんな理由じゃダメ?納得がいかない?」

「いえ、理由には納得しました。」



苦笑いを浮かべるルミア。



「貴方様は、物好きなのですね?ご自分から厄介者を招き入れようなんて考えるなんて。」

「そう?私は、自分の好きなように生きているだけなんだけど?」

「そんな風に言える方の側でなら、私も楽しく生きれそうです。」

「あら、ふふ、なら、私に買われてくれる?」

「お願い致します。」

「姉ちゃん!?」



私へと深々と頭を下げるルミアの腕を、弟であるルルキが掴む。



「ルルキ、私は大丈夫よ。何の心配もいらないから。」

「っっ、でも、」

「この方は、私達に無体な事はなさらないわ。」



ルルキの髪を撫でるルミア。



「そうですよね?」

「えぇ、もちろん。貴方達の事は、大切にするわ。」



ルミアに微笑む。



「私は、ゲスナンと遊ぶ為に貴方達を利用する。貴方達は、生きる為に私を利用しなさい。」



等価交換。

私は、生きる為の力を与えましょう。



「ふふ、これから先、私の為に生きなさいな。」



私が彼女達に望むのは、それだけ。



「どうする、ルルキ?」

「・・分かり、ました。姉共々、よろしくお願いします。」



頭を下げるルルキ。



「ふふ、では、名乗りましょう。私はディアレンシア・ソウル。ディアって呼んで、2人とも。」

「はい、ディア様。」

「かしこまりました。」



恭しく、私に対して頭を下げる2人。



「ハルマンさん、さっそく2人との契約をお願いします。」

「はい、承りました。」



部下に指示を出し、2人の契約書を用意させるハルマンさん。

ーーーこうして、ルミアとルルキのドワーフ姉弟が家族となった。



「本日は、ありがとうございました。」

「こちらこそ、良い子達に出会えました。ありがとうございます。」



ハルマンさんと別れの挨拶を交わす。

ルミアとルルキ以外にも、私が気に入った11人の子を新しく家族として招き入れ、ハルマンさんの見送りで宿へと戻る。

上機嫌で宿に戻った私は、アディライトに新しい子達の部屋の手配を任せてソファーに腰掛けると足を組む。



「さて、」



考えるのは、これからの事。

やる事は多い。

考え込んでいれば、部屋のドアが叩かれる。



「ディア様、ルミアがお会いしたいようですよ。」

「ルミアが?」



来客の確認に向かったディオンが告げたルミアの名前に目を瞬かせる。



「はい、いかがなさいますか?」

「会うわ。ディオン、ルミアを部屋の中に入れてあげて。」

「かしこまりました。」



一礼したディオンがルミアの元へ向かい、私の元へと連れて来る。



「おくつろぎのところ、申し訳ありません、ディア様。」



私の前に来たルミアが頭を下げた。

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