第250話 閑話:ミンティシア⑤
ミンティシアside
どうして、こんな事になったのだろう?
なぜか、聖王国パルドフェルドに対して、やる気のソウル様に困惑するしかない。
「っっ、ソウル嬢!?」
「まぁ、王様?震えた声を出されるなど、どうしました?」
「そ、そなたが物騒な事を言ったからだろう!?」
「物騒?」
頭痛を堪えるような表情のお父様に、ソウル様が首を傾げる。
「
「・・・。」
あまりの言いように、私達は絶句するしかない。
・・・ソウル様、何か聖王国パルドフェルドに強い怨みでもあるのでしょうか?
「で、困ります?」
「・・ソウル嬢、もう少しだけ言葉を選んでくれ。」
その場に、お父様が項垂れた。
お疲れ様です、お父様。
私は憐憫の眼差しをお父様へと向けた。
「実はここに1つ、王様への書状を預かっております。」
そう言って、1枚の書状を取り出すソウル様。
「書状?」
「はい、あの里、今はティターニア国と名をつけましたが、その女王陛下からの書状でございます。」
「何!?」
お父様が身を乗り出す。
「ーーっっ、なっ、こ、これは、」
書状を読んだお父様が、大きく瞳を見開いた。
「書状をお読みになりました通り、かの里は古き因習を捨て、生まれ変わ始めております。そして、他国との関わりを持ちたいと、女王陛下はお考えなのですわ。」
ソウル様がまた、衝撃の発言を放つ。
「まず、この書状の御覧の通り、これで王様の願いの1つは叶うかと思います。」
にっこりと、ソウル様が微笑んだ。
「・・あぁ、そうだな。こうも用意が良いのが末恐ろしいが。」
「ふふ、少しの保険、ですわ。」
「保険?」
「王様が私に対して権力を持って何かを強要した場合、この書状はティターニア国の後ろ盾があると言う何よりの証明になりますでしょう?」
お父様が顔を強張らせる。
当然、私も。
ソウル様は、こう言っているのだ。
ーーーこの国が自分を利用しすぎた場合、見限るぞ、と。
「ーー・・我が国を捨て、あの里、いや、ティターニア国へいつでも行けると言う、私への牽制にもなるの、か。」
「ふふ、好きにお取り下さい。」
魔族が暗躍出した今、Sランク冒険者がこの国から出ていく事がどれ程の損害になるか考えるまでもない。
ソウル様を利用していると罵られようと、王族の1番は民を守る事。
甘んじて誹りは受ける覚悟はある。
「まぁ、ティターニア国の女王陛下は、そう思われても良いと思っている、とだけ言っておきますわ。」
が、そんな私達の欲を、ソウル様は決して許してくださらなかった。
お父様の望みを叶えた書状は、私達への牽制となるものへと変わってしまう。
「っっ、そこまで、あの里と
「
そして、また知らされる驚愕の事実。
ソウル様のお側にいられる妖精族のディオン様が、そんな貴き血を引いていたなんて、誰が予想しただろうか?
私達の驚愕の視線は、一斉にディオン様に向いた。
「王様、今の私は、ディア様の奴隷であり、夫の身に過ぎません。どうぞ、いつもの通りに接して下さい。」
向けられる私達の視線に動じる事なく、ディオン様が何の迷いなくおっしゃられる。
そこにあるのは、ソウル様への忠誠。
ーーー深い愛情だった。
「・もしも、」
結婚するなら、相手の方とは相思相愛の関係になれれば良い。
そう、思う。
例え王女であっても、恋には憧れるもの。
「・・・羨ましいわ。」
小さく呟く。
あんな風に、自分も愛されたいと思ってしまう。
王族に生まれた自分には、そんな恋愛は難しい事だと分かっていても、羨ましく思う気持ちは無くならない。
「・・ふむ、直ぐにユリーファ女王陛下へ書状の返事を送らなければならぬな。」
顎を撫でる、お父様。
「さて、そうとなれば誰を使者に送るか。」
視線が向うのは、お兄様達。
そこに私は含まれない。
「ーーお父様、いいえ、王様、その使者、どうか、このミンティシアにお命じ下さい。」
誰よりも先に、使者への私は名乗りを上げた。
「・・お前を?」
お父様から視線を向けられ、ひっそりと唾を飲む。
王家の末姫。
それが、今の私の呼び名。
この国の為、王女として私が成せる事は何?
「はい、王様。ユリーファ女王陛下は、女性ですので、年も近いのですし私が使者として適任かと。」
守られるだけは嫌。
幼い私にも、成せる事がある。
そうでしょう?
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