第244話 幼女竜の名前

涙目の幼女に呆然とする。

・・泣かすような事、何か私したっけ?



「あの、?」

「っっ、良かろう!」

「へ?」

「一緒に風呂に入ってやると言っておるのだ!」



真っ赤な顔の幼女。

・・うん、その顔も、とても可愛い。

って、そうじゃなくて。



「本当?一緒に、お風呂に入ってくれるの?」

「妾に二言はないのじゃ!」



びしりと、幼女に指を突きつけられる。

そんな仕草も可愛らしい。



「あ、ありがとう。」

「うむ、感謝すると良い。」

「ふふ、うん、感謝してます。」



尊大な口調。

でも、なぜか憎めない。



「全身、私がきっちり綺麗にしてあげるね?」

「!?」



笑顔の私に、幼女の顔が引き攣った。

・・ふふ、とても楽しみ。



「ーーディア様、そろそろ屋敷の中へ入りませんか?」



笑う私に、アディライトが声をかける。



「ん?そう、だね。」



話は、屋敷の中でしようか。

てな訳で、幼女を屋敷の中へ招き入れると、ソファーへ座らせる。



「・・ふむ、この屋敷の中は精霊の力が満ちておるな。」



ぐるりと、幼女は室内を見渡す。



「あ、分かる?精霊達の力を借りて、この屋敷を建てたの。」

「ほう、精霊が人間に力を貸したか。」



珍しいと、幼女が笑った。



「ふっ、ディアよ、そなたは、本当に面白い人間よの。」

「そうかな?」

「知らぬのか?精霊は、滅多に人間に力を貸さぬのだぞ?」

「うーん、そう言われても。」



頬を掻く。

こればっかりは、幸運の成り行きとしか言えないんだよね。



「少し、理由があるのよ。」

「ほう?」



興味を引いたらしい。

仕方ない、私の秘密を話すとしますか。



「ーーと、言う訳なの。」



この世界に来た経緯を話し終わる。

魔族とも戦ったし?

なかなか、壮大な話だ。



「くくっ、そなたが神の采配でこの世界に来たとはな。」

「・・今の話、信じてくれるんだ?」



結構、突拍子も無い話なのに。

あっさり、私の話を信じるなんて、ね?

少し意外。



「何を言っておる。そなたが妾に嘘をつく理由などなかろう?」



呆れたように笑う幼女。



「・・まぁ、そうだけど、異世界とか、転生とかってありえないと話だと思うよ?」



私だったら、疑う。

あるいは、頭がおかしくなったと思うね。



「ーー信じるよ。」

「え?」

「ディアは、嘘をついておらぬ。」

「っっ、ありがとう。」



ありがとう、信じてくれて。

胸が温まる。



「ふむ、そうと決まったら、さっそく妾に名前をつけるのじゃ!」

「・・名前、」



じっと、目の前の幼女を見つめた。



「うーん、」



どんな名前が良いだろうか?

彼女の名前はーー



「ーー・・ヴァレンティーナ。」



それは、直感。

一つの名前が、私の口から零れ落ちた。



「ヴァレンティーナ?』

「うん、貴方にぴったりだな名前と思うんだけど、どうかな?」



ヴァレンティーナには、「勇敢」・「活発」の2つの意味を持っている。

目の前の竜に相応しいと思う。



「うむ、ヴァレンティーナ、か。なかなか良い名じゃな。」

「気に入ってくれた?」

「あぁ、気に入ったぞ。」

「ふふ、なら、良かった。」



安堵する。

この名前を気に入ってくれなかったら、どうしようかと思ったよ。



「さっそくなんだけど、ヴァレンティーナにお願いしても良い?」

「何じゃ?」

「ヴァレンティーナの事、鑑定をしても良いかな?」

「む、スキル付与の為、じゃな?構わぬぞ。」

「ありがとう。理解が早くて助かるわ。」



ヴァレンティーナの了解を得て、さっそく鑑定を発動させる。




名前:ヴァレンティーナ

LV1

種族:竜(水竜)

隷属:ディアレンシア・ソウル

HP:1360/1360

MP:1120/1120

スキル

気配察知、危険察知、状態異常耐性、咆哮、威嚇、水魔法、風魔法、ブレス




「おぉ、」



結構なスキルを、思っていた以上に持っているヴァレンティーナ。

本当に、期待以上である。



「ヴァレンティーナは、水竜なんだね?」



ステータスの種族が、竜(水竜)になっているヴァレンティーナ。

だから、髪色も青いんだ。



「うむ、妾は水を司る竜なのじゃ。」

「なら、水を司るヴァレンティーナ以外の竜もいるの?」

「おるぞ。」



頷く、ヴァレンティーナ。

いわく、水、火、風、地、闇、光の六竜がいるらしい。

おいおい、ヴァレンティーナ以外の竜についても聞くとしようか。



「ヴァレンティーナ、欲しいスキルとかある?あるなら、付与するよ?」

「ふむ、スキル、か。何でも良いのか?」



何でも、か。

うーん、世界を滅ぼす規模のスキルはダメ、かな?



「一応、この世界の害にならないスキルなら、付与するのは何でも良いよ。」



天候操作とか?

作物への影響があるのは、却下である。



「ふん、分かっておるわ。妾とて、この世界を滅ぼしたい訳ではないからな。」

「それは、何より。」



自分の従魔がこの世界を滅ぼすなんて、シャレにもならない。



「では、妾が欲しいスキルはーー。」



ヴァレンティーナがいくつかの欲しいスキルを上げていった。

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