第243話 竜と幼女

さっそく、従魔召喚を発動させる。



「っっ、!」



・・これ、は、結構、キツイ、な。

私から結構な魔力が、浮かび上がった魔法陣に奪われていく。

浮かぶ、冷や汗。



『ーーー妾を呼ぶのは、誰だ?』



そんな時だった。

頭の中に、その声が聞こえたのは。



『名を名乗れ。』

ーー私は、ディアレンシア・ソウル。



『ふむ、我を呼ぶのは、ディアレンシア・ソウルと言う名か。』

ーーえぇ、そうよ。ディアって呼んで?



『では、ディアよ。何故、妾を欲する?』

ーー力が欲しいから。



『力、とな?ディアよ、そなたは妾がいなくとも、十分な力があるのではないか?』

ーーある、ね。



『それ以上の力を欲すると?』

ーー欲しいよ。



『ふっ、欲深い人間よの。』



頭の中の声が嘲る。

しかし、楽しげでもある。



『今の力で満足しておらぬとは、まこと、人間とは欲深い。』

ーーそれは、いけない事?



『ん?』

ーー今以上のモノを得たい。それが、生きているって事でしょう?



現状が満足なら、人は努力をしない。

足掻こうとしないだろう。



『・・ディアよ、そなたは力を得て、何とする?』

ーーどういう意味?



『得た強大な力で、この世界を欲するか?』

ーー世界なんて、いらない。



即答する。

私が求めている事は一つだけ。



『では、なぜ、それ以上の力を欲するのだ?』

ーー大切な存在を奪われない為。



『ん?』

ーー私には、大切な存在がいるの。その存在を奪う人は許さない。



その為に、誰にも負けない力がいる。

圧倒的な力が。



『・・そなた、面白いな。』

ーーえ?



『良かろう。妾がそなたの、いや、ディアの力となろう。』

ーーありがとう。



『ディアよ、妾を楽しませてくれよ?』

ーーうん、任せて。



一緒に、色んな事をしよう?



「っっ、来て!」



私の竜。

一層光り輝く魔法陣。

その中から、1匹の竜が飛び出した。



「ーーっっ、これが、竜。」

「なんて、立派な。」



コクヨウとディオンが息を飲む。



「「凄ーい!」」



目が輝かせるフィリアとフィリオ。



「まぁ、あ、」



アディライトも驚きに口元を手で覆う。

そう言う私は、感動中。



「おぉ、憧れの竜が、私の目の前に!」



大きなその身体、はためく翼。

空に浮く青色の竜は、私達を見下ろす。

感無量である。

今、私の目の前には憧れの竜がいるのね?



「・・ふむ、妾のこの姿では、そなた達には少し都合が悪い、か。」



聞こえてくるのは、竜からの声。

頭の中で聞いた声だった。



「よし、ディアよ、少し待っておれ。」

「え?」



何が、と聞く暇もない。

一瞬の内に、竜が光に包まれてしまう。

な、何事!?



「ーーディアよ、この姿でなら、どうだ?」



光が治まり、現れたのは。

ーー頭の両脇でツインテールにさせた8歳ぐらいの幼女だった。

・・ま、まさか。



「・・あな、た、さっきの竜、なの?」

「うむ、妾が先ほどの竜じゃ。」



無い胸を張る、幼女。



「っっ、か、」

「か?」

「可愛いっっ、!!」



がばりと、目の前の幼女へと抱きつく。

なに、この可愛い生き物。

頬擦りをする。



「っっ、な、何をする、ディア!」

「やん、その口調も可愛い。」



誰が思う?

あの竜が、こんな可愛い幼女になると。

眼福である。



「お姉さんとお着替えする?」



アディライト達が私を着せ替えしたがる理由が分かる気がした。

色んな服を着せたい。

いや、着て欲しいです、切実に。



「ふふ、どんな服も似合いそうよね?」



頭の中は、妄想でいっぱい。

ふりふりの洋服も似合いそうよね?



「し、しないぞ!?」



ふるふる顔を横に振り、青ざめさせる幼女。

誠に残念である。



「・・お風呂も、ダメ?」

「う、うむ、それぐらいな良かろう。」

「本当!?なら、身体を洗ってあげるね!?」



期待にうきうき。

あぁ、お風呂が楽しみだな。



「っっ、な、何!?」



目を剥く、幼女。



「・・?どうしたの?」

「妾の身体をあらう、だと!?」

「うん?そうだよ?」



それが何か?



「か、身体ぐらい、自分で洗えるわ!」

「えー?洗いっこ、すごく楽しいよ?」


アディライト達とし合うし。

楽しいのに。



「っっ、そんな問題じゃ無い!そんな事は絶対しないぞ!」



これも全力で拒否られる。

一体、なぜだ。



「・・どうしても?」

「どうしても、じゃ!」

「・・絶対?」

「絶対!」

「・・・・、そっ、か、」

「うっ、」



しょんぼりと肩を落とす。

そうすれば、幼女が小さく呻いた。



「ず、狡いのじゃ!」

「へ?」


目をぱちくり。

狡い?



「狡いって、何が?」

「っっ、そんな顔をして、妾を懐柔しようとは、狡いではないか!?」

「はい?」



・・そんな顔?

ぷるぷると身体を震わせ、涙目の幼女。

懐柔って、何ですか?

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