第205話 侵入者
平伏するディオンの父親。
「っっ、はい、かしこまりました!お前達、マスクルを離れへ、エンリケを自室へ監禁しろ!」
「「「はっ!」」」
精霊王である皆んなの攻撃魔法で腰を抜かした弟くんは、ディオンの父親の指示で屋敷の離れへ、母親は自室へ監禁される事になった。
当然の処置である。
これ以上、自分達が敬愛する精霊王である皆んなに何かしたら、ねぇ?
逆鱗に触れるのも怖いのだろう。
「・・どうぞ、お好きなだけ、このお部屋でお寛ぎ下さい。」
やつれた顔のディオンの父親。
最初に会った時の、あの傲慢さは、どこえやら。
すっかり心が折れた様子。
ディオンの父親自ら立派な屋敷の一室へ私達は丁寧に通される。
「ありがとうございます、ディオンのお父様!」
笑いが止まりません。
ディオンの父親自ら案内してくれた一室のソファーへ座り、私は1人ご機嫌である。
「・・・いえ、何か誤用がありましたら、いつでもお呼び下さい。では、失礼いたします。」
逸らされる目。
なぜか私は何もしてないのに、ディオンの父親に怯えられている。
そそくさと出て行くディオンの父親。
「少しディオンのお父様の事を虐め過ぎたかしら?」
うむ、私自身は何もしてないんだけど。
心をへし折り過ぎた?
張り切ったのは、精霊王である皆んなだよ?
「ディア様、あんなバカの事など気にしなくてもよろしいのでは?これぐらいの天罰は、バカには良い薬になった事でしょう。」
「・・ディオン、自分の父親なのにバカとしか呼ばないのね?」
「あれは、バカで十分なので。」
良い笑顔のディオン。
もう父親とは思っていない模様。
「あっ、そう。」
そっと、ディオンから目を逸らした。
うむ、確かに、あの酷すぎる思考の親子を自分の家族と思いたくはないだろう。
ディオンと父親達との溝が、前以上に増して深まってしまったらしい。
「精霊王様達も、あの者達の事で大変、申し訳ありませんでした。私からも精霊王様達へ謝罪いたします。」
が、私のディオンは凄く良く出来る子。
自分のせいではないのに、精霊王の皆んなへの謝罪と礼儀も忘れなかった。
ディオンが精霊王の皆んなへ深く頭を下げる。
「良いのよ、ディオンちゃん?」
「そうよ、ディオンちゃんは何も悪くないのだから。」
「ディオンちゃんが私達に謝る必要は何1つないのよ?」
「大丈夫、何もディオンちゃんは気にしなくて良いの。」
口々にディオンを慰め始める精霊王達。
あの人達がしでかした事で一番、ディオンが居た堪れないだろうからね!
「ですって、ディオン。ふふ、良かったね?」
「正直言って、精霊王様達があんなにも私の事を慈しんでいただけるとは夢にも思いませんでした。」
精霊王である彼女達はディオンの心強い絶対的な味方となってくれる事だろう。
とても有難い事だ。
「私の事も最愛と呼んで良くしてくれるし、精霊王の皆んなには感謝しかないわ。」
ディオンの父親や一族達への復讐も手伝ってくれたし、良い事ばかり。
感謝の気持ちしかない。
「もう、この里でディオンちゃん達を下に見る者達はいないだろうけど、気をつけるのよ?」
「何かあったら、私達の事を直ぐに呼んで?」
「ディオンちゃん達の為に、どこに居ても私達が駆けつけるから!」
「遠慮はいらないからね?」
とは、有り難い精霊王達のお言葉。
それを最後に、現れた時と同様に急に精霊王である彼女達は神が住まう聖域へと帰って行く。
『招かざる者が里の中に侵入したから、警戒して。』
そんな警告を残して。
「ふむ、招かざる者が侵入、ねぇ?」
私達がけの里の中へ入る為に結界が緩まった瞬間に侵入した招かざる者。
相手はバレぬ様に慎重を期したようだが、精霊王である皆んなや私達には隠れようがなかった。
「ディア様、どうしますか?」
コクヨウが首を傾げる。
「まだ、この里に侵入した相手の目的も分からないし、しばらく様子を見る為に泳がせましょう。」
招かざる者の事は保留。
皆んなにも警戒を促し、招かざる者の監視だけは続ける事にしよう。
「しかし疑問なのですが、なぜ人間であるディア様の事を精霊王様達は最愛と呼ぶのですか?」
全員のお茶を入れる為にティーポットを手に持ったアディライトが疑問を告げた。
有能な彼女は私達の世話の全ての他の人には任せられないと言って、自ら率先して動いている働き者。
「うーん、アディライト、気になる?」
「ディア様は理由をご存知なのですか?なら、気になります。」
アディライトがティーポットを置いた。
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