第200話 優位性

目を細める。

本当にディオンの父親は、この世界で自分達、妖精族が1番に尊い存在だと思っている様子。

呆れて、隣のディオンを見上げる。



「ですって、ディオン。」

「無礼者なのは、父上、いえ、お前の方だろうに。」

「なっ、父親に向かって!」

「父親?私に父親などいませんが。」

「何だと!?」

「何を怒っているのです?私を捨てたのは貴方の方でしょう?」



父親のアホ過ぎる反論を、ばっさりと冷たく切り捨てるディオン。

まさに正論である。

自分がディオンの事を捨てたくせに、未だに父親だと主張が出来ると思っているのだろうか?



「ぷっ、まさか自分が捨てた息子に、まだ父って呼ばれたかったのですか?ディオンの事を自分の息子と認めていなかったのに?」



笑ってしまう。



「っっ、だ、黙れ!」

「えっ、嫌です。」



笑顔で拒否。

なぜ、私が言う事を聞かないといけないのか。



「っっ、この、」



わなわなと身体を震わせ、怒りにどす黒く変わっていくディオンのお父様の顔色。

あらあら、大変。

頭の血管が切れないか心配だ。

そんな簡単に退場しないでくださいよ?



「そもそも、疑問なんですが人間だとか、妖精だとか言ってる貴方は何様なんですか?」



神様なの?



「わ、私は尊い精霊様の血筋の、」

「だから?」

「・・何?」

「精霊の血筋だから貴方は偉いの?」

「当然だ。」



胸を張るディオンの父親。



「何で?」

「は?」

「精霊の血筋だからって、何で貴方が偉い事になるの?」



甚だ疑問だ。

昔の栄光、しかも、自分以外の事で威張られても意味が分からん。



「で?貴方は誰かに誇れる様な何か偉い事を成し遂げたのですか?」

「っっ、それ、は、」

「ないのですか?」

「・・・。」

「ーーない、の、ですね。」



やっぱり。

呆れの溜め息を吐き出す。



「そんな誇れる要素皆無の貴方に自分は尊いのだからと威張られて、敬えみたいに上から目線で言われても、ねぇ?」



ディオンの父親としては敬うよ?

でも、自分は精霊の血筋だから偉いんだから敬えって可笑しいでしょ。



「少しでも誇れるものがあってから、どうぞ存分に自分は尊いのだと、私や周囲へご自慢くださいな。」



いい加減に現実を見ろ?

じゃなきゃ、ただの痛い大人だ。



「・・っっ、貴様、黙って聞いていれば!」

「あら、何か間違っていますか?」



反論や言い訳があるなら聞くよ?

それが出来れば、だけど。



「我が妖精族は、神の創りし精霊様の姫君の血筋。神に愛される尊い存在なのだ!」

「はぁ、」



まだ、言うか。



「・・我が父親ながら、救いようもない。」



ほら、ディオンも呆れてるよ?

残念な者を見るような眼差しを、私はディオンの父親へ向けた。

神に愛される存在。

まぁ、そう思うのは本人の自由だけど、私達にその考えを押し付けるのはいかがなものか。



「ーー分かりました。」

「ほう?ようやく理解したか。」

「はい、理解出来ない貴方に何を言っても無駄だと分かりましたわ。」



バカに何を言っても無駄。

時間の無駄遣い。

そう言う事なのでしょう?



「き、貴様っっ、!」

「ですので、ご本人達にお聞きしましょう。貴方様が言う様に神に愛される存在かどうかを。」

「「「は?」」」



怪訝な表情になる皆様。

まるっと、そんな皆様の反応を無視してディオンの事を見上げる。



「ディオン、お願い。」

「貴方のお望みのままに。」



甘く微笑んだディオンは、私の希望通りの魔法を行使した。

膨れ上がる膨大なディオンの魔力。

それも直ぐに霧散する。



「ーーっっ、ディオン、貴様、一体、今、私達に何をした?」



辺りを見渡す皆様。

ディオンの父親が私達に詰め寄る。



「何も?私が行使した魔法は貴方達の身体に何の害もありませんよ。」

「バカを言え!ディオン、あの魔力量は一体、何なのだ!?」

「・・私が貴方に教えるとでも?」



冷笑を浮かべるディオン。



「そんなに私が何をしたか知りたいのなら、彼女達に聞いたらいかがですか?」

「彼女達?」

「おや、崇拝しているのでしょう?」

「なっ、まさか!?」

「えぇ、精霊王様ですよ。」



ディオンが頷いた、その瞬間、4つの神聖な魔力が私達の側に降り立った。



「うふふ、私達を呼んだのは愛おしい子ね?」

「あら、ここは私達の始まりである原初の森ね。」

「本当に懐かしい。」

「里帰りに呼んでくれたのかしら?」



唐突に現れた美しい4人の女性達が口々に話し出す。

彼等は知らない。

自分達の優位性が覆る事を。

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