第7章〜精霊編〜

第188話 旅の準備

カーシュ公達の一件から数日後。

注文した馬車が出来上がったと業者から連絡が入り、取りに向かう。

出来上がった馬車を見て私は、満面の笑顔で頷く。



「うん、私の期待通りの出来だね。」



満足の出来だ。

私が色々と注文して出来上がった馬車は、王族が乗っていても可笑しくない立派な馬車であろう。

ご機嫌で馬車を持ち帰る。



「さて、」



家に持ち帰った馬車を前に、さっそく作業に取り掛かる事にしよう。



「まずは、馬車の中の空間を広げて、と。」



個別の部屋を馬車の中に作っていく。

他にはリビング、トイレにお風呂、キッチンも馬車の中に設置。

旅の間も快適な空間となる様にしていく。



「おぉ、」



なかなかな出来事。

これ、良く出来たんじゃない?

自画自賛。



「・・まぁ、」

「「広ーい。」」



私の側で見守っていたアディライトとフィリアとフィリオが驚きと喜びの声を上げる。

気に入ってもらえた様だ。



「さすがは、ディア様ですね。素晴らしいです。」

「ディア様のお力があれば、これぐらい当たり前の事ですよ。」



誇らしげな顔で私を褒め称える、コクヨウとディオンの2人。

うむ、2人らしい。



「必要な物を皆んなで、馬車の中に設置しようか?」

「「「はいッ!」」」



全員が頷く。

順調に進む旅の準備。



「エトワール、旅の間の馬車を引くのお願いするね?」



エトワールの鼻先を撫でる。

旅の間、エトワールに馬車を引いてもらわなくちゃならない。



『私にお任せ下さい、ディア様!』



おぉ、やる気一杯だね。

心良くエトワールが引き受けてくれる。



「ふふ、楽しみだなぁ。」



ーーーー妖精の国へ行くのが。

準備は万端。

いつでも旅に出られる様になった私達。



「ディア様、王宮からお手紙が届いております。」



うきうきの私に手紙が届く。

自室で寝る用意をしていた私に王宮からの手紙を差し出すロッテマリーにお礼を言って受け取る。

ロッテマリーが私の自室から下がるのを見送り、王宮からの手紙に目を通していく。



「あら、元王女様の修道院に行く日が決まった様ね。」



手紙に書かれていたのは元王女が5日後に修道院へ行くとの王ミハイル様からの報告だった。



「ふふ、貞操帯を付けられてから元王女様は泣き叫んで暴れているそうよ。無駄な事をしているわ。」



どんなに暴れて泣いても、王である父親が決めた決定が覆る事はないと言うのに。

無駄な抵抗。

無意味な抗議と言うものだ。



「うん?」



手紙のある一文に目が止まる。

これって。



「ディア様、どうされました?」



手紙を持ったまま沈黙する私に側に控えるアディライトが首を傾げた。



「んー、何だか第2妃が王宮から離れた静養地へ行く事が決まった様よ。第2妃って、元王女様の母親だったわよね?」



その第2妃が娘と同じくして王宮から離れる?

意味深である。

アディライトも驚きに目を見開く。



「まぁ、第2妃が?ディア様、第2妃が静養にな理由とは元王女の件でなのですか?」

「そうみたい。第2妃が王宮の外へ静養に行く

は、実の娘の件に心を病んだ事になるんですって。」



くすりと笑う。



「リリス、第2妃が王宮から離れる本当の理由を貴方は知っているわね?」



自分の影へと私は視線を落とす。



『第2妃が不貞を働いていたと善意の密告があった。その証拠も克明に記された書類が、どうしてか私の自室にあったのだがな?』



手紙に付け足された一文。

善意の密告?

しかも、王ミハイル様の自室に、だ。



「ふふ、王様の自室に第2妃の不貞の証拠を置いて来たのはリリスなのかしら?」

「はい、ディア様。勝手をいたしまして、申し訳ありません。」



私の問いかけに影から滑り出て来たリリスが頭を下げて謝罪する。



「大丈夫、リリスのした事を私は怒っていないわ。ただ、第2妃の不貞の証拠を王様へ渡した理由を知りたいの。」



私の優秀なリリスが何の理由なく、こんな事をするわけが無い。



「リリス、理由を教えてくれる?どうせ、私の事について第2妃が暴言でも吐いたとか何でしょう?」



リリスの触れてはいけない逆鱗は私。

第2妃は、リリスのその逆鱗に触れたのだろう。



「第2妃の事を報告してくれても、皆んなへの被害が無いなら私は動かないもの。だから、リリスは動いたのよね?」

「はい、実は第2妃は今回の元王女の件は王妃の陰謀だと騒ぎ出しまして。」

「王妃様の陰謀?」



意外な報告に目を見張る。

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