第156話 招待状

突然のお城からの手紙に困惑する私は、アディライトと顔を見合わせた。

目の前の手紙から嫌な予感しかしないんだけど。



「・・まさか、不幸の手紙?」



なの?

王宮からの手紙なんて、絶対にろくでもない事に決まっているじゃないか。

厄介ごとは私は御免ですよ、王様?

テーブルの上にある、お城からの厄介ごとであろう手紙に顔を顰めた。



「・・・これ読みたくないんだけど。」



目の前の手紙から距離を取る。

捨てるか?

燃やして証拠隠滅的な。

最悪、お城から手紙の事を聞かれても私の元へ届いてないって言ってしまうとか?



「うん、それが良い。そうしてしまおう!」



手紙は私の元へ届かなかった。

私は何も知らない。

そうと決まれば、さっそく証拠隠滅ーーー



「ディア様、一応はお城からの手紙ですし、取り敢えず内容は読まれた方が良いかと。」



目の前の手紙を燃やして証拠隠滅してしまおうと魔力を練ろうとした私は、アディライトから止められる。



「うっ、けど、」

「ディア様。手紙の内容を読んでみない事には、対処のやりようがありませんよ?」

「ぐっ、ぬ、」



アディライトからの指摘は全て正論すぎて、何も返す言葉もない。

渋々、魔力を散らす。

とても気が進まないけれど、取り敢えずこの手紙を読むしかないようね。



「はぁ、」



肩を落とし、嫌々だけど手紙を手に取る。

アディライトが見守る中、私は手紙の封を開けて中の内容に目を通していく。



「ーー・・やっぱり、」



厄介ごとだ。

思わず眉根を寄せる。



「ディア様、手紙の内容はなんと書いてあったのですか?」

「王様からの招待状よ。本当に余計な事をしてくれる。」



ぐぬぬ。

王様芽、どうしてくれよう



「招待状?ディア様の事を、ですか?」

「そう、各国から要人を呼んで、今回Sランク冒険者になった私のお披露目をお城で大々的に行うんですって。そのお披露目会への招待状よ。」



手紙を机へと放り投げる。



『申し訳ないが、国として今回のSランク冒険者となったソウル嬢達のお披露目をしない訳にはいかないのだ。

どうか、了解して欲しい。』



手紙の内容を要約するとこんな感じ。

うん、無理。

国としては自国から出たSランク冒険者の他国へのお披露目は大事だと分かる。

が、私達には国の事情なんて関係ないんだけど?



「これってお披露目と言う名の、欲望や打算ばっかりのパーティーでしょう?」



うんざりとする。

私は客寄せパンダか何かなの?



「・・まぁ、」



アディライトが驚きを表す。

だよね?

普通に驚く事だよ。



「はっ、庶民の私が、お城で要人の偉い人達へお披露目?一体、なんの嫌がらせよ。」



Sランク冒険者となったとは言え、私は一般市民。

そんな私がお城で各国の要人と接するなんて場違いなんですけど!?



「王の決定を私が断れるはずないのに!」



何度でも言うが、私は一般市民。

王からの決定を拒否?

そんな事をしたら完全なる無礼者である。



「いくら私達がSランク冒険者となったとは言え、悔しいけど、このお披露目を拒否できる理由がないじゃない!?」



王様め。

絶対に恨んでやる。



「・・そのお披露目に呼ばれているのはディア様だけなのですか?」

「いや、私を含めた主要のパーティメンバー全員だね。けど、フィリアとフィリオの2人は王城へ連れて行きたくないな。」



まさか、王城で魔道具である『幻影の指輪』を使用する訳にもいかないし、魔族であるフィリアとフィリオの2人には今回のお披露目の場は酷すぎるだろう。

本当はコクヨウの事も今回のお披露目へ連れて行きたくはないのだが。

きっと理不尽な事を言われる事、間違いない。



「どうしよう、アディライト。誰かがコクヨウの事で暴言を言って、私がキレる予感しかしない!」



間違いなく、そうなったら私はキレる。

お城で暴れる一般市民。

うん、お尋ね者になるの確定だよね。



「あぁ、確かにコクヨウの事で何か言われたらディア様は怒りますね。」



生暖かい眼差しをアディライトから向けられる。



「はぁ、フィリアとフィリオの2人は言い聞かせれば平気だけど、コクヨウは絶対に家でお留守番なんて事に納得してくれないでしょうし、困ったよ、アディライト。」



溜息を吐く。

あのコクヨウが大人しく留守番?

うん、あり得ない。

何を言っても私の側から離れないわ。



「・・まぁ、確かにコクヨウなら留守番はしないでしょう。」



苦笑いのアディライト。

コクヨウが大人しく留守番をしないとアディライトも同意見らしい。



「この王様からの手紙にもフィリアとフィリオの2人は、今回のお披露目に出なくても良いって書いてあるの。2人が魔族だと知っているんだろうね。」



私の事は調べたんだろうし。

魔族であるフィリアとフィリオを私が購入した事も承知済みなのだろ。



「だからフィリアとフィリオは留守番で、私、ディオン、コクヨウ、アディライトの4人でお披露目会へは出席かな?」

「そうですね。王からの招きだとは言え、もしも魔族であるフィリアとフィリオの2人が王家主催のパーティーに出てしまったら、参加者の混乱は必須ですからね。」



納得するアディライト。

なら、最初からお披露目会などと言うパーティーをしなければ良い話だと思うのは私だけ?



「あー、お披露目なんか行きたくないー!」



駄々をこねる。

欠席では駄目だろうか?



「ディア様、今回は仕方ないですよ。お城からの招待状なんですから諦めてください。」

「えー、なんで?」

「王様も体面がありますから。」

「体面?」



私は首を傾げる。



「この国の王としてディア様のお披露目をして、Sランク冒険者と王家との強い繋がりを周囲に見せたいのではありませんか?」

「だから私に犠牲になれ、と?」



・・・なんだ、それ。

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