第148話 ミシュタル商会
愛され方を知らない私。
そんな私が、コクヨウとディオンの2人に愛情を与えてあげられているのだろうか?
「何でもない、ただお腹が空いただけ。」
大切なの。
ずっと、私の側にいて。
この執着心だけは本当の気持ちなの。
「では、早くリビングへ行って朝食を食べましょう。」
「ディア様の好きなゼリーが出ると良いですね?」
「うん!」
頷いて、コクヨウ達とリビングへ歩き出した。
オリバーと目も会うこともなく朝食を食べた私は、さっそくハビスさんに紹介されたロックスさんのお店、ミシュタル商会へと向かう。
「・・オリバーに避けられているのかしら?」
落ち込む。
しくしくと胸が痛い。
「希望に沿うような子がミシュタル商会にいれば良いですね、ディア様。」
「うん、家族が増えるのは嬉しい。」
気を取り直してミシュタル商会へ向かう道すがらアディライトと談笑を楽しむ事にする。
夜の事を考えると憂鬱な気分になるが、新しい家族が増えるかもしれないのは嬉しいから気分はいくらか上がっていく。
「ディア様の身の回りに人出が増えるのは喜ばしい事です。」
アディライトも嬉しい様。
しばらくするとたどり着く、目的地。
門番に名前を告げると話が通っていたのか、直ぐに中へと通される。
「ソウル様、お待ちしておりました。」
お店の入り口で私達を出迎えたロックスさんがにこやかに頭を下げた。
「ロックスさん、今日は、よろしくお願いします。」
「こちらこそ、よろしくお願いします。ささ、中へどうぞ。」
ロックスさんに促され、お店の中へ。
私達は一室へと通される。
「ハビスより伺っておりますが、ソウル様のご希望される奴隷の条件は、お変わりないでしょうか?」
お茶とお菓子が私の前のテーブルへ置かれた後ロックスさんが口を開いた。
「はい、ハビスさんの時と私が求める奴隷の希望条件は変わり有りません。」
「かしこまりました。当店にいます、ソウル様の条件に合う奴隷を連れて参りますので、少しお茶でも飲みながらお待ち下さい。」
私達にお茶を促し、ロックスさんは側に控えていた男性に数人の奴隷をこの部屋へ連れて来るように指示を出す。
直ぐに部屋から出て行く男性。
「いやはや、ハビスより手紙を貰った時は驚きました。まさか、オリバーとクロエの他にもうちの商会でソウル様が奴隷をお求めになるとは。」
男性が出て行ったのを見送り、ロックスさんもお茶へと手を伸ばした。
持っていたカップを私はソーサーへ戻す。
「私の訪問はロックスさんのご迷惑でしたか?」
「迷惑などとんでもない。またソウル様とこうして商談ができ光栄ですよ。」
「ふふ、そう言っていただけると嬉しいです。」
多くの奴隷を求める私はロックスさん達商人にとったら良い上客なんだろうね。
たわいない幾つかの話をロックスさんとしながら、奴隷を待つ事数分。
「ーーーーお待たせいたしました。」
先ほどの男性が数人の奴隷を連れて、この部屋へ戻って来る。
種族、年齢もバラバラの奴隷達。
「皆んな、きちんとお客様へご挨拶なさい。」
「「「はいッ!」」」
ロックスさんの声に、それぞれが挨拶を始める子達。
ふむ、全員で12人ね。
「初めまして、ディアレンシア・ソウルです。」
挨拶を返し恒例の質問へ。
「で、どう?彼らも私の大事な家族なんだけど、一緒には無理だと思うなら言ってくれる?」
もちろん、コクヨウやフィリアとフィリオの3人の本来の色や種族の事を見せ、教えるのも忘れない。
結局、最後まで残ったのは10人。
残念な事に、魔族のフィリアとフィリオ、コクヨウの瞳を見て恐怖心が拭えなかった2人は私に買われる事に難色を示して断念。
無理強いはしないので、2人の事を無理に引き止めはしなかった。
「ロックスさん、10人全員買います。」
「ご購入ありがとうございます。さっそく全員の契約書をご用意いたしますね。」
ホクホク顔のロックスさんは、すぐさま10人分の契約書を用意する。
さくさく用意された契約書の書類の内容を確認してからサイン済ませ、お金を支払って全員の購入を終わらせてしまう。
「皆んな、今日からよろしくね?」
「「「「はい、よろしくお願いします!」」」」
元気に声が揃う10人。
今日から、私の新しい家族達です。
新しい家族となった10人の奴隷達を連れて屋敷へと戻る。
「ロッテマリー、ルルーシェル、この子達の事を、よろしくね?きちんと面倒を見てあげてちょうだい。」
「かしこまりました、ディア様。」
「仰せのままに。」
ロッテマリーとルルーシェルの2人が頷く。
「アディライト、ロッテマリーとルルーシェルのフォローを頼むわ。フィリアとフィリオも頼むわね?」
「はい、お任せください。」
「「頑張ります!」」
2人へのフォローをアディライト達はへ任せ、自室へと引っ込む。
憂鬱なほど、その時が来るのは早いもの。
ーーーー・・夜が来てしまった。
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