第108話 帰還の首飾り
疑問に首を傾げながら、食事を終える。
今日も、美味しかったです。
「で、アディライト、私にお願い事って何?」
食事終わりに口直しのお茶をアディライトに淹れてもらい、一息ついて問い掛ける。
「はい、ディア様。実は、全員に転移のスキルを付与して頂きたいのです。」
「転移のスキルを全員に?まぁ、皆んなが欲しいって言うなら、私に断る理由は無いかな?」
「ありがとうございます、ディア様。後は、ある魔道具を作成して欲しいのですが、ディア様のスキルで出来ますか?」
「魔道具?うーん、魔道具作成のスキルを作れば可能だと思う。アディライト、どんな魔道具が必要なの?」
「帰還の首飾りです。」
「ふむ、」
自分の顎に手を添える。
ーーー帰還の首飾りを、ねぇ。
「アディライト。」
「はい、ディア様。」
「それは、迷宮の奥の不透明な厄介ごとへの対処の為なの?」
ひたりと、アディライトの目を見据えた。
何も知らなかった訳じゃ無い。
皆んなが、何かから私を遠ざけようとしていた事だって知っていた。
「・・お気付き、だったのですね。」
「まぁ、ね?あれだけ、こちらを監視していた視線が急に無くなれば気が付くよ。」
苦笑いを浮かべるアディライトに、私は肩を竦ませる。
迷宮内で常にあった視線。
その視線がある日から急に無くなった事を不思議に思わないはずがない。
「で、魔道具は、その為に必要なの?」
「はい、ディア様。何かしらの不測の事態に備えておきたいのです。」
「うん、分かった。皆んなが傷付くのは嫌だし、作るよ。」
私に断る理由は無い。
となれば、さっそく皆んなへ渡す魔道具を作ってしましまおう。
そう言う訳で。
スキル『魔道具製作』を作成しました。
お馴染みの、スキル作成のアナウンス。
今回の迷宮攻略が終わったら、生産職系のスキルをもっと増やして色々と作っていこうかな?
自作のポーションも作ってみたいし。
楽しみ。
魔道具製作
魔道具作りに必要なスキル。
製作には、その魔道具の元になるアイテムを使わなければならない。
魔道具製作に必要なスキルは無事に手に入れた。
「さて、魔道具を作るのに必要な『錬金術』のスキルを得たから次は製作するんだけなんだけど、直ぐに作れる訳では無いみたいね。」
魔道具の元になるアイテム、かぁ。
何が必要なのかな?
眉根を寄せる。
・・・アイテム、ねぇ。
「アディライト、魔道具を作るのにアイテムが必要みたい。帰還の首飾りを作るには、何のアイテムが必要なのか調べなきゃ。」
「では、図書館へ行って参ります。何かしらの資料が有るでしょうから。」
「なら、私も行くよ。」
アディライト1人で図書館へ行かせるのは悪いし、久々に本も読みたいし。
いつかこの街に拠点を持てたら、いっぱい本を集めて立派な図書室を作りたいと考えている。
密やかな、私の野望だ。
「てな訳で、魔道具作りに必要なアイテムが何か調べる為にこれから図書館へ行くのは決定って事で。」
自分の影へ視線を向ける。
「リリスの方でも、色々な魔道具についての情報集めをよろしくね?」
『かしこまりました。』
頭の中に流れる、リリスからの返事。
優秀なリリスの事だから、色々な魔道具を作るのに必要なアイテムを調べてくるだろう。
期待して待つことにする。
「アディライト以外の皆んなは、今日、これからどうする?私とアディライトは図書館に行くけど、行きたい所とかあれば、自由にしてても良いよ?」
「もちろん、僕もディア様のお供をいたします。」
「調べ物には人数が必要でしょうからね。私もコクヨウ同様にディア様にお供をいたしますよ。」
「フィリアも!」
「フィリオも!」
ふむ、人数が多ければ、それだけ調べ物は早く終わるかな?
全員で図書館へ行く事になりそうだ。
その日1日を図書館で魔道具について色々と調べた私達。
念願の帰還の首飾りの魔道具を作れたのは、その日から4日後の事だった。
「うん、我ながら良く出来たと言えるね。」
魔道具製作に勤しんだ私。
無事、私達の目的の魔道具である帰還の首飾りが完成した。
出来上がった帰還の首飾りをじっくり眺め、私は満足げな笑みを零す。
帰還の首飾り
レア度:
機能:破壊不可、所有者制限
製作者:ディアレンシア・ソウル
帰還の首飾り
願った瞬間にその場から登録した場所へ一瞬で戻れる国宝級の魔道具
もちろん、登録する場所は安全な場所。
転移した先が危険な場所だったら意味ないし。
「登録する場所の候補としては、宿の部屋の中、迷宮の入口外、街の出入りする門かな?」
候補はこの3つ。
一番無難なのは、宿の部屋の中だろう。
その他の場所は人目があって、転移した所を見られる恐れがあるし。
宿の部屋の中なら、後から誤魔化しが効きそうだもの。
「よし、皆んなに見せてこよう。ふふ、これなら、皆んなも喜んでくれるよね?」
人数分、作った帰還の首飾り。
転移先をこの宿の部屋の中へ設定してしまう。
さっそく、出来上がった帰還の首飾りを手に皆んなの元へと向かった。
「素晴らしい出来です、ディア様。」
出来上がった帰還の首飾りを見たアディライトが、感嘆の溜め息を吐き出す。
でも、帰還の首飾りの出来上がりを1番喜んだのは、コクヨウとフィリアとフィリオだった。
「銀色のチェーンに、漆黒の石に白銀の薔薇の意匠、ですか。まさに、この帰還の首飾りの魔道具はディア様の為にあるようです。」
魔道具の帰還の首飾りを手に、コクヨウが恍惚の表情を浮かべる。
そう、歓喜しているのだ。
あちらとこちらの世界の、私の髪の色に。
「あんまりこの世界では黒色は好まれないけどね。」
苦笑いを浮かべた。
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