第95話 眠気
甘い食べ物は、どこの世界でも人を幸せな気持ちにしてくれるよね。
それを今、強く私は実感している。
「ふん、ふん、ふん、」
鼻歌を鳴らす。
私は今、アディライトが作ってくれたゼリーを食べて大変上機嫌なのである。
甘みは偉大だね。
「とても上機嫌ですね、ディア様は。」
「ふふ、だって、コクヨウ、アディライトが作ってくれたゼリーがすごく美味しかったんだもん。こんな美味しいデザートを食べられるなんて幸せだよ!」
コクヨウに微笑む。
昔の小さい頃の私にとって、甘いお菓子類は贅沢品。
滅多に食べれなかった。
運良く食べられたとしても、たまに食べていたお父さんが残したクッキーのカスとかだったし。
保護施設も誕生日とかにケーキを食べたぐらい?
「はぁ、最高。」
でも、今の私はあの頃とは違う。
好きな時にアディライトが作ってくれるデザートが食べられると言う贅沢が出来る。
なんて至福な世界。
「ふむ、ディア様に甘味を捧げれば、たいそう喜んでいただけるのですね。」
ディオンが小さく呟く。
その目はとても本気だった。
私がお願いすれば、ディオンや他の子達は本気でお菓子類などを買い占めてきてしまいそう。
それだけの資産を、彼等は稼いでいるのだもの。
「・・うーん、ディオンがそう言うと、際限なく甘いものを買い占めそうだわ。」
限度を考えないからね、私の子達は。
安易に皆んなの前で何かを欲しいとは言えないよね。
怖い事になるもの。
「私が朝起きてみたら、大量のデザートが買われてあったりとか?」
喜ぶけども。
お店から全て買い占めてしまいそう。
他のお客様の迷惑だから、やめて欲しい
「ディオン、買い占めたりしたらダメだからね?さすがにお店の品を買い占めても、絶対に食べられないから!」
「・・・はい、ディア様。」
残念そうな表情でディオンが頷く。
その隣でコクヨウも残念そうに肩を落としていた。
・・貴方も、なのね、コクヨウ。
よく言い含めて寝室へ。
「ーーー・・はぁ、明日もあのゼリーが食べられるのか。」
ベットへと寝っ転がる。
頬が緩む私。
「くくっ、先ほどからゼリーしか頭にないご様子。ディア様にとって、明日の迷宮攻略はなんの問題にもしてないのですね。」
「あら、コクヨウ。今の私達の実力で、明日の迷宮攻略で何か心配する事があると思う?低層のモンスターなら、気をつけて入れば私達ならなんの問題はないでしょう?」
油断は禁物。
しかし、今の私達のレベルなら低層のモンスターぐらいならなんの問題もない。
「それは、全てディア様のお力の賜物です。」
首筋に落ちる、ディオンのキス。
「ーー・・甘い匂いが、ディア様からしますね。私も食後のデザートをもらえるのでしょうか?」
「っっ、ディ、オン・・?」
「そう、ですね。僕達も美味しいデザートが欲しいですよ。」
「へ?コクヨウっっ、!?」
煌く2人の瞳。
その瞳に欲情が孕んで見えるのは、私の気のせいだろうか?
ぞくりと身体を震わせる。
「っっ、あの、2人とも?明日、は、迷宮攻略が・・。」
「えぇ、ちゃんと明日の迷宮攻略に差し障りの無いように加減はしますよ?」
「大丈夫です、私達にお任せ下さい。」
「っっ、」
・・あ、これは何を言ってもダメだ。
迫り来る2人に、私は反論するだけ無駄だと悟った。
「ーーー・・ちゃんと手加減してね?」
「えぇ、もちろん。」
「ご安心ください、ディア様。」
蕩ける様な表情を浮かべるコクヨウとディオンの2人に、私は身を委ねる事にする。
その後は2人に翻弄されるがまま、気がつけば朝に。
明日に控える迷宮攻略がある為、2人曰く、あれで多少は加減したとの事。
「・・うぅ、眠い。」
が、眠気には勝てる訳もなく私は寝不足である。
何度も欠伸をかみ殺す。
「・・・コクヨウ、ディオン?」
そんな私の様子に気が付いたアディライトが、黒い笑顔で2人に微笑む。
・・・目が笑ってない様に見えるのは、私の気のせい?
「何か申し開きはありますか?」
「・・いえ、ありません。」
「申し訳ない。」
あまりのアディライトの迫力に逆らえない様子の2人。
ただ平謝りである。
「全く、ディア様に無理をさせるなんて。今日は迷宮攻略をするのですよ?ディア様の身に何か起きたらどうするのですか!?」
2人に目を吊り上げて怒るアディライトが、溜息を吐き出す。
「2人とも、そこで少しは反省する様に。さぁ、ディア様、眠気覚ましにお風呂にいたしましょう。このまま迷宮へ行くのは危険です。」
「ん、」
アディライトに促されお風呂場へ。
温かいお風呂で眠気も取れ、多少は頭が冴えた気がする。
まだ少しは眠気はあるけどね。
「ディア様、しっかりと朝食も食べて下さいね?」
「はーい。」
言われた通りにしっかりと、アディライトの作った朝食を食べる。
ご飯は元気の素だもの。
「お辛い様なら本日の迷宮攻略は止めますか?」
「んー、大丈夫だよアディライト。何とか眠気も治ったし、行けそう。
「分かりました。ですが、絶対に無理はしないで下さいね、ディア様。」
「分かった。」
「約束ですよ?」
過保護なまでに心配するアディライトを何とか説得して、私達は迷宮の11階層へと向かった。
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