第74話 外堀埋められました
どうやら、今日はコクヨウではなくディオンが私と一緒に寝てくれるらしい。
こうして、ディオンと寝るのは初めてだ。
「本日は、私がディア様と共寝をさせていただきます。よろしいですか?」
「うん、良いよ。」
「ありがとうございます。」
ベットにディオンが入れるようにスペースを空ける。
そこへ腰掛けるディオン。
ディオンの瞳は、真っ直ぐに私を見つめる。
「ディオン?」
「ディア様。寝る前に私はディア様に1つお伝えしたい事があるのですが、聞いていただけますか?」
「私に伝えたい事?」
目を瞬かせる。
真剣なディオンの眼差しに、私もベットの上で背筋を伸ばす。
「何?」
「ーーー・・私は、ディア様の事が好きです。」
「はい?」
・・・・何、ですと?
思わず固まる。
今、ディオンはなんて言った?
『ーーー・・私は、ディア様の事が好きです。』
目を見開く。
・・ディオンが、私の事を好き?
「はは、」
ふふ、あれ、おかしいな、何だか変な幻聴が聞こえてしまったよ。
疲れてるのかな?
今日は、新しく従魔のユエを作ったりしたし。
「うん、そうかも知れない。」
よし、落ち着け自分。
きっと、疲れている私がディオンの言葉を聞き間違えたたけだ。
疲れてるんだね、私。
うん、きっとそうに違いない。
そうなーーー
「・・・私のこの気持ちは、ディア様のご迷惑ですか?」
「・・・・。」
・・・はず、では無かった。
何故だ!?
愕然と私は言葉を失う。
え、本当にディオンに告白されたの?
「っっ、あの、ディオン?」
「はい、ディア様。何でしょう?」
「好きって、あの、本当、に・・?」
「もちろんです、ディア様。この世界で、ディア様以上に愛おしいと思える方はおりません。」
「・・・。」
ちょっと、待て!
これは、どこの乙女ゲームだ!?
おかしいでしょ、これ!
「え、えっ、何で!?ディオンが私を!!?」
混乱するしかない私。
コクヨウに告白されたと思ったら次はディオンからも、だと!!?
私は、どこの恋愛物語の中の逆ハーヒロインですか?
ダメだ、凄く混乱しているらしい。
思考が定まらないもの。
「それに、ここに来る前にコクヨウからも応援されました。」
「応援・・?」
「はい、ディア様をお支えし、愛おしむ存在は多い方が良いから、と。」
「何、ですと!?」
まさかの、ディオンの口から驚愕の事実が告げられる。
なんと、このディオンの告白はコクヨウからの許可あり、ですと!?
衝撃の事実に眩暈が起こる。
ーーー・・コクヨウ、貴方、一体、何を考えているの!?
「っっ、あのね、ディオン?」
額を押さえる。
容量オーバーな事態に、頭が痛むんですけど。
「はい?」
「普通、誰かと付き合うなら一対一が当たり前でしょう!?」
「私の父は母を亡くしてか、側室をたくさん持っていましたが?」
真顔のディオン。
「それに、裕福な家では、一夫多妻は多いと思いますよ?」
「うっ、」
「ですので、何ら可笑しい事では無いと思います。」
「・・・。」
・・な、何故なんだ。
だんだん私の方が追い込まれていく様な気分なんですけど。
私の考えの方が可笑しいの?
「で、でも、私は女なんだし、男性とは違うんでは・・・。」
「いえ、男を侍らせる女性も少なくないですよ?」
「・・・。」
私の全ての反論を、ディオンに一蹴されてしまう。
・・だ、ダメだ。
全く、勝てる気がしない。
「ディア様が私も愛してくれるなら、例え二番目でも構いません。」
ーー・・私、知らぬ間に外堀を埋められてる?
身震いするしかない。
「ディア様は私の事が嫌いですか?」
「っっ、まさかッ!」
私がディオンを嫌う?
ない、ない、そんな事、これから先も、絶対にあり得ない。
「ディオンを、好き、だ、けど、その、同じ気持ち、かは、分からないの。」
目をさ迷わせる。
何、この恥ずかしさは。
「・・そう、ですか。安心しました。」
「安心?」
「私の事を嫌いじゃないなら、まだ望みはあるって事でしょう?」
ディオンの指先が、私の髪を掬う。
優しい手付きで私の髪の毛を掬ったディオンは、そのまま口付ける。
「貴方の事を心から愛してます、ディア様。」
「っっ、」
直球の告白に顔が火照った。
目の前で、こんなにも綺麗なディオンに愛の告白をされて平常心でいらる人がいるだろうか?
いや、いない。
絶対にいないと断言出来る。
「っっ、ディオン、は、勘違いしてるんだよ!」
「勘違い?」
「私がディオンの羽を治したから、だから、それだから、感謝の気持ちを愛情と勘違いしてるんじゃない!?」
だって、おかしいでしょ?
こんな私の事をディオンが好きになるなんてさ。
「・・・ディア様、怒りますよ?」
「え?」
「私の気持ちに応えられないのなら、それは仕方がない事です。ですが、私の貴方への気持ちを疑うのは、例え、それがディア様でも許せません。」
「・・ディオン。」
どう、しよう。
ディオンの本気の怒りが、ひしひしと伝わってきて、分かってしまった。
私への気持ちが真実なんだと。
「私の気持ちを受け入れられないなら、ディア様に好きになって貰えるよう頑張ります。ですから、この私の気持ちだけは、疑わないで下さい。」
「・・・うん、分かった。ごめん。」
目を伏せる。
「ディア様、もっと貴方に触れてもよろしいですか?」
「・・・うん。」
こんなにも、胸が苦しいのはなぜ?
ディオンの震える指先が、今度は優しく私の手に触れた。
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