第72話 ユエの強化

9本の尻尾が、ゆらゆらと揺れている。

私がイメージした通りの姿。



「いかにも、私は汝が望んだ存在。汝の名前は?」

「ディア、よ。私の名前は、ディアレンシア・ソウル。私の事はディアって呼んで?」



新しい家族となる九尾に私は笑い掛けた。



「私の後ろにいる子は、コクヨウよ。コクヨウは私の大切な家族の1人なの、よろしくね?」



新しい従魔となった九尾に、私は自分とコクヨウの名前を伝える。



「ふむ、ディア、と、コクヨウだな。私は汝の従魔となる九尾だ。2人共よろしく頼む。」

「コクヨウです。こちらこそ、よろしくお願いします。」



互いに挨拶し合うコクヨウと九尾。

皆んなが帰って来たら、九尾の事を紹介しなくちゃね。



「ーーー・・して、ディアよ。」

「うん?」

「汝はなぜ、そんなにも私の尻尾を凝視しているのだ?」

「・・・お気になさらず。」



そっと、私は九尾の尻尾から目を逸らす。

貴方の素晴らしい、ふわふわの尻尾につい目がいってしまうだけだから。

・・あぁ、撫でたい。

思う存分、撫で回したい、そのふわふわの尻尾を!!



「・・ディアよ、内なる声が全て出ているぞ。」

「・・ディア様。」

「はっ、!?」



慌てて口を押さえるけど、遅かった。

九尾とコクヨウの1人と1匹から、呆れたような眼差しを向けられてしまう。

・・うぅ、でも、仕方なくない?



「っっ、だって、目の前には9本のふわふわの尻尾があるんだよッ!?私を誘惑するのは、それはもう、仕方ない事でしょう!!?」



そして、ふさふさの毛並み。

もう、私の心を揺さぶる要素がたくさんあるあるんですけど!?



「ふむ、どうやら、この姿がディアの心を乱す原因か。なら、人間の形をとろう。」



突如、九尾の身体が淡い光に包まれる。

そして目の前に現れたのはーーー



「・・へ?人間・・?」



さらさら金髪の、美青年だった。

目を剥く。

私の周り、美形が多くない?



「ディアよ、私のこの姿でどうだ?」

「はい、素晴らしいです!」



即答。

まさに、眼福。

とても目の保養になります!!



「う、うむ、何だか汝の興奮が収まっていない様だが・・?」

「いえいえ、そんな事ないので、お気にせず!」



素敵なお姿、ありがとうございます。

もちろん、九尾の姿の毛並みも凄く堪能したかったけどね?



「・・まぁ、良いだろう。さぁ、ディアよ、そろそろ私に名前を付けてくれ。」



ゆるり、と。

青年の姿の九尾は、とても秀麗に微笑む。

クールな雰囲気だった。

なのに、柔らかく笑った九尾の破壊力と言ったら、言葉では表せない。



「っっ、グッチョブ、異世界!」



なんて素晴らしい。

余りの感動に私は歓喜に打ち震えた。



「まさか、青年の姿の九尾のこんな素敵な笑顔を見せてもらえるなんて、本当にありがとうございます!」



出来れば、私の記憶の中に永久保存をお願いしたいぐらい何だけど?

この世界、映像を保存する魔道具はないの!?



「ディア?」

「あっ、名前、だよだね!?喜んで付けさせていただきます!」



いけない、いけない、思考が変な所にトリップしてた。

名前を考えるの張り切るよ!

もっとも九尾に相応しい名前を考えなくちゃね。



「うーん、九尾、名前、」



迷う。

まず、九尾と言えば狐が進化した存在だったよね?



「九尾って、私の中では夜に活動するイメージなんだよね。」



良く聞く、狐の嫁入りとかさ?

・・・ん、夜?

あっ、



「ーーー・・ユエ。」



頭の中に思い浮かんだ、1つの言葉。

ーー・・ユエ。

夜の象徴である、月を表す言葉。



「ユエ?」

「そう、ユエ。私の生まれた国で月って意味なの。」



まさに九尾にぴったりの名前。

私の中で、九尾にはこれ以上ない名前だと確信している。

どうだろうか?



「・・あの、どう、かな?ユエって名前は気に入らない?」

「嫌、良い名だ。」

「本当?」

「あぁ、今日から私はユエだ。」



ユエが名前を受け入れた瞬間、2人の間に目に見えない繋がりが強固になる。

しっかり私達の従魔契約が完了した様だ。



「ディアよ、末永く頼む。」

「ふふ、こちらこそ。」



九尾、ユエの名前も無事に決まった。

後はユエの強化だ。



「じゃあ、ユエにこのままスキルを渡してもいいかな?」

「ん?スキルを渡すとは一体何だ?」

「ユエに力を与えたいの。その事を私は強化って言ってる。」

「・・・強化。強くなれると言うことか?」

「もちろん、ユエの力を最大限に引き伸ばして欲しいからね。」



ユエも、もう私の大切な存在だもの。

誰かに傷付けられぬ様に、ユエにも絶対的な力を与えたい。

その為の、私の力。



「ーーー・・分かった。全てディアの好きなようにしてくれ。」

「良いの?」

「あぁ、構わない。」

「ありがとう。ますば、ユエのステータスに見させてもらうね?」

「承知した。」



ユエの了承を得て、『鑑定』でステータスの確認をする。

どれどれーー



名前:ユエ

LV1

種族:妖狐

隷属:ディアレンシア・ソウル

HP:1210/1210

MP:1960/1960



ほう、ユエはMPが多い。

なら、ユエの新しいスキルは、魔法系を重点的に与えた方が良いかな?

まず候補はーーー



「光魔法、風魔法、火魔法、水魔法、土魔法、氷魔法、雷魔法、鑑定、経験値倍増、マップ、気配察知、危険察知、状態異常耐性、体力回復上昇、魔力回復上昇、攻撃力上昇、防御力上昇、身体強化、精神耐性、詠唱破棄、思考加速、気配遮断、威圧、って感じかな?」



こんな所だろうか?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る