第44話 叩き潰します

固唾を飲んでフィリアとフィリオの2人の落札額が上がるのを見守る観客達。

一体、あの魔族の事を誰が落札するのか?

その落札額は?

誰もが競りの行方を見守る。



「白金貨740枚!」

「・・・・白金貨741枚!」

「白金貨、な、745枚!」

「白金貨746枚!」



互いに落札を譲らない両者。

フィリアとフィリオ2人の落札額だけが、どんどん上がっていく。



「白金貨750枚!」

「っっ、白金貨753枚だ!」



ーーーーさて、そろそろ良いかな?



「白金貨760枚!」



ついに、フィリアとフィリオの白金貨760枚に落札額が到達する。

今日のオークション、最高額。

観客が歓声を上げる。

オークション会場内の盛り上がりは最高潮。



「ついに、本日のオークション最高額である白金貨760枚が出ました!!他にはいらっしゃいませんか?」

「白金貨770枚。」



ゆるりと、ここで私は手を上げる。

さぁ、ここからは、この私もフィリアとフィリアの2人の高額となった競りに参加です。



「なんと、白金貨770枚です!!他にはいらっしゃいませんか?!」

「っっ、白金貨771枚。」

「白金貨780枚。」

「っっ、な、くぅ、」

「・・・、白金貨781枚だ。」



ついに、フィリアとフィリオの競りに1人が降りたらしい。

悔しそうな呻き声を上げている。

フィリアとフィリオ2人の競りに残る私の敵は、後1人だけ。



「白金貨790枚。」



ここで私は落札額を上げていく。



「っっ、!?・・・、白金貨な、791枚。」

「白金貨800枚。」

「し、白金貨801枚。」

「白金貨810枚。」

「白金貨811枚。」



どんどん上がる2人の落札額。



「白金貨820枚。」

「っっ、な、なら、白金貨821枚。」

「ついに、白金貨821枚です!!他にはいらっしゃいませんか?!」



司会者が声を大きく張り上げる。



「おぉ、821枚。」



凄い。

そこまで2人にお金を出すのね。



「ふっ、」



感心していれば、私に優越感の笑みを浮かべる競り相手。

はてーー



「まさか、その金額で私に勝った気でいるのかな?」



冗談でしょう?

どこの誰が、2人の競りから降りるって言ったのかしら?



「全く、私も舐められたものね。」



とても不愉快だ。

小娘だと思って、私を侮っているの?



「ふふふ。」



極上の笑みを、競り相手に送る。



「!!?」



真っ赤になって、固まる競り相手。

ならーーー



「白金貨1000枚。」



ーーーー徹底的に、その勝ち誇った顔を叩き潰すしかないよね?

2人の購入を邪魔するなら、徹底的に潰す。

この私に、喧嘩を売ったんだし?



「っっ、!?」



言葉もなく固まる競り相手。

こちらをガン見して、口を開け閉めを繰り返す姿はとても滑稽で笑える。

静まり返る会場内。

次の瞬間には、会場内に盛大などよめきが起こった。



「っっ、っっ、なんと、驚きです!白金貨1000枚が出ました!!他にはいらっしゃいませんか?!いかがでしょう?」



司会者がぐるりと会場内を見渡す。

競り相手は悔しそうに沈黙を続けたまま、その手を上げる事はない。

勝負あったかな?



「他にはどなたもいらっしゃいませんね!?では、魔族の双子は白金貨1000枚であちらのお客様が落札です!!」



わっと湧く、会場内。

そこかしこから私へ拍手が鳴り響く。



「皆様、本日は長い時間を私どもが主催したオークションにご参加いただき誠にありがとうございました。これにて、本日のオークションは閉会させていただきます。商品をご購入されましたお客様は、係員と共に小部屋へと移動し、お支払いをお願いいたします。」



頭を下げる司会者。

これで全ての競りが終わったらしい。



「・・・ふう、無事に全てのオークションが終わったわね、コクヨウ。」

「はい、お疲れ様でした、ディア様。」

「ふふ、コクヨウもお疲れ様。ありがとうね?」



可愛いコクヨウが私の隣にいてくれたから、すごく癒されたよ。

私のオアシスだわ。



「・・・?え、ディア様、僕はお礼を言われるような事は何もしてませんよ?」

「コクヨウが私の隣にいてくれるだけで、すごく心強かったんだよ?だから、ありがとう。」

「っっ、はい、ディア様。」



ほんのりと頬を染めたコクヨウがはにかむ。

うん、うん。

はにかむコクヨウも可愛いねぇ。

可愛いは正義だわ。



「さて、皆んなに支払いを済ませて宿に帰ろうか?今日は疲れたし、ここに長居したら良くないだろうしね?」

「・・・・そう、ですね。ここにはが多いようなので、そうした方が良いかもしれません。」



コクヨウがちらりと周囲に視線を送る。

主に、こちらに強い敵意を持つ人達に対して、だけだけど。



「私に競り負けたのが、そんなに悔しいのかな?」

「そうなのでしょうね。全く、僕の大切なディア様に対して敵意を向けるなんて、それだけで万死に値します。」



コクヨウが冷たく吐き捨てた。

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