第42話 ディオン購入
まだまだ先は長い。
お目当ての子達全員を購入する為にも頑張らねば。
アディライトの事を無事に大金貨80枚で落札した私達は、オークションが盛り上がっていくのを眺めながら購入候補の子達がステージ上に出るのを待つ。
その合間にも武器や骨董品、絵画が出品するから奴隷の落札まで待つのが長く感じてしまう。
「・・・白熱、していますね。ここまでオークションが凄いとは思いませんでした。」
「そうね、コクヨウ。この街で一番大きなオークションなだけの事はあると思うわ。ふふ、一回に動く金額も大きいし、主催者も気合が入っているわね。」
盛り上がり続ける競り。
この日に使われた全ての購入金額の総合計は、とても凄そうだ。
「この世界は娯楽となるものが本当に少ないもの。このオークションなどでお金持ちの人達は普段、滅多に味わえない遊びをとことん楽しんでいるのよ。」
スリルと興奮。
多くの人達との駆け引き。
そんな刺激を、ここに居る人達は求めているのかも知れない。
「まぁ、奴隷のコクヨウにとっては、このオークションは不愉快な事でしょうけど。」
奴隷のコクヨウ。
こんな風に競り落とされる場面を見るのは、奴隷として売られたコクヨウにとって不愉快な事だろう。
「いいえ、ディア様。僕は大丈夫です。」
「そう?」
「えぇ、それに、今回のオークションをディア様に進めたのは僕ですから、お気になさらないで下さい。」
コクヨウが微笑んだ。
本当にコクヨウは優しい子だね。
白熱する競りを横目にまたコクヨウと戯れていれば、次に商品としてステージ上に出たのは、私が待ちにまった子。
「続きまして、希少な妖精族を本日は皆さまにご紹介いたします!」
妖精族のディオンだった。
ステージ上に立つディオンの表情は、先ほど会った時と変わらない。
「妖精族だと!?」
「なっ、妖精族と言えば、滅多に人間の前には現れないと言うのに!今回のオークションに出品されるなんて凄いじゃないか!!」
妖精族であるディオンの登場に、会場内がまた騒然とする。
その目は、一様にステージ上に佇む秀麗なディオンの姿に釘付けだ。
「こちらの妖精族、名をディオンと申しますが、何と年齢は68才!長命の妖精族らしく、68才の年齢でもこの美貌!!片方の羽が残念ながら有りませんが、買う価値はあるはず!どうぞ、皆様こぞって競りにご参加下さい。では、片羽のディオン、白金貨10枚からスタートです!」
ディオンの競りが、白金貨10枚、1000万円から始まった。
「ワシは白金貨12枚出すぞ!」
「私は白金貨13枚。」
「なら、俺は白金貨15枚だ!」
どんどん白熱していくディオンの競りが進む。
勢いを増していくディオンの競り。
ディオンの落札金額も高額なものへとなっていく。
「白金貨20枚。」
「白金貨23枚」
「白金貨25枚。」
例え片羽だとしても、それを抜きにしてもディオンの美貌と希少さの魅力には、この場の誰も抗えないのだろう。
その証拠に、どんどんディオンの落札額が上がっていくのだから。
「ーーーー・・あの、ディア様?」
「うん?」
「まだディア様は競りに参加されないのですか?」
「ふふ、もう少し人数が減ってからね。」
私を見上げるコクヨウの頭を撫で、ディオンの競りに参加する人数が減るのを、じっと静かに待った。
「っっ、白金貨38枚。」
「・・・ぐぅ、白金貨40枚。」
やがて、とうとうディオンの競りに参加するのは2人だけに減る。
「・・うーん、そろそろかな?」
ではーーー
「白金貨50枚。」
白金貨50枚で、私もディオンの競りに参加です。
満を期して、私も手を上げる。
集まる視線達。
「し、白金貨50枚です!他にいらっしゃいませんかっっ、?!」
司会者がぐるりと会場内見渡す。
「・・・・、っっ、な、なら、こちらは白金貨53枚だ!」
「白金貨60枚。」
「っっ、!?」
最後までディオンの競りに参加した男が競い合ってくる。
貴方も、私に勝負を挑もうって事ね?
ーーなら、その貴方からの勝負、私が受けて立ちましょう。
「ーーーーっっ、し、白金貨61、枚!」
「白金貨70枚。」
「っっ、!?ぐぬ、白金貨71枚!!」
「白金貨80枚。」
「・・・・白金貨81枚。」
はぁ、しぶとい。
ならーー
「白金貨100枚。」
で、どう?
私が告げた白金貨100枚に、会場内が大きくどよめく。
「っっ、!?な、なんと、あちらのお客様から白金貨100枚が出ました!!他にいらっしゃいませんか!?」
司会者がぐるりと騒然とする会場内を見渡すが、他には誰の手も上がらない。
ふむ、勝ったかな?
「っっ、では、白金貨100枚で希少な妖精族は、あちらのお客様が落札です!!」
コールする司会者に会場内がわっと湧き、私へと拍手が送らる。
よし、これでディオンも無事に落札ね。
「ーーーー・・・・。」
「・・・ディオン?」
ステージ脇に下がる際、一瞬だけどディオンの瞳が私を捉えた。
その瞳が揺らいで見えたのは、私の気のせい?
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