第27話 コクヨウを可愛がる

コクヨウとの奴隷契約も何事もなく無事に終わり、ハビスさんと別れて宿へと戻った私達は、そのまま部屋の変更を行なった。

人数が1人、増えたからね。

始め、コクヨウを見た女将さんは黒い瞳に驚いたようだけど、何も言わなかったのは、ありがたい。

少しでもコクヨウに敵意を向けたなら、宿を変えなきゃいけなかったから。



「ふふ、まぁ、私がそれだけで済むかは分からないけどね。」



怯えるだけだったから、私も何も言わない。

今やコクヨウとリリスは、この世界で私のもっとも大切な存在だ。

そんなコクヨウを、バカにされたり、見下されるなんて許せないし、我慢が出来そうにないもの。

私のコクヨウに敵意を良いを持つ者は許しません。



「うーん、でも、早急にコクヨウの瞳の色を認識できない様にした方が良いかしら?」



私は平気だが、他の人達は違うもんね。

無用な厄介ごとに巻き込まれない為にも、コクヨウの人見の色を認識できない様にするべきだろう。



「常時発動させるなら、魔道具かな?」



少し考えてみよう。



「さて、コクヨウ。少し、これからの事を話そうか?」



新しい私達が泊まる、部屋の一室。

ソファーに座る私の隣、ーーーー最初はその足元に腰を下ろそうとしたコクヨウを強引に横に座らせて話を切り出す。



「はい、女神様。」

「ふふ、コクヨウ?私の事は女神様では無くて、ディアって呼んで?」

「・・・ディア、様?」

「ぐはっ。」



首を傾げて私を見上げるコクヨウの可愛らしさに、胸を撃ち抜かれたよ。

ハビスさんは、ちゃんとコクヨウの世話をしてくれていたのか、健康状態は悪く無いし、清潔に整えられている。

これからも、しっかりとコクヨウに食事を取らせて、お風呂にも入れなきゃ!



「っっ、コクヨウ!」

「!?」



ガバリと、思わず隣のコクヨウを抱き締める。

もう、可愛すぎだよ。



「大好きよ、私のコクヨウ。」

「っっ、はい、ディア様。」



コクヨウを覗き込めば、ほんのりと頬を染めて嬉しそうに微笑む。

やだ、うちの子、本当に可愛いんですけど!?



「うん、ちゃんと表情も少しずつ出てくるようになって嬉しいわ。」



何で、こんな素直で可愛い子の事をコクヨウの両親は奴隷商へ売ったのか。

本当、信じられないよ!



「ーーーーディア様、コクヨウが可愛いのは、分かりますが、このままでは話が進みませんよ?」

「っっ、!?」

「・・・リリス。」



可愛いコクヨウに頬擦りする私を諌めたのは、私の影の中から出て来たリリスだった。

そんなリリスの姿に、私の腕の中で身体を固くし、コクヨウが怯えて身構える。



「ふふ、コクヨウ、大丈夫よ?彼女は、リリスと言って私の従魔だから危険な事は何もないから。」



宥めるようにその背を撫で、抱き締めていたコクヨウの身体を離す。



「リリス、コクヨウに挨拶してあげて?」

「かしこまりました、ディア様。コクヨウ、ディア様の従魔のリリスです。共にディア様のお役に立てるよう、頑張りましょうね?」

「は、はい!」



・・・う、うむ、お2人さん?

どうして、挨拶の後に私の素晴らしさなんて話を、本人の前で始めるのかな?

て、照れる!!

ーーーー何でか私の事でヤル気になってる2人は、置いておくといて。



「お互いの紹介も何とか終わった事だし、これからコクヨウの強化をしていきますか!」



私の可愛いコクヨウ。

誰にも傷付けられぬよう、早急に力を与えなきゃ。

コクヨウのステータスを呼び出す。




名前:コクヨウ

LV1

性別:男

年齢:14

種族:人族

隷属:ディアレンシア・ソウル

称号:闇に愛されし者

HP:280/280

MP:120/120

スキル

生活魔法




コクヨウのステータスは、弱い。

本人から聞いた話によると子供の頃から屑な両親によって隔離されたような生活だったのだから、それは致し方ない事なんだが。

それとーー




「あのね、コクヨウ。」

「はい?」

「コクヨウが黒い瞳なのは、貴方の称号にある『闇に愛されし者』が理由だと思うの。」



これは、伝えておかなきゃね。



「・・え?」



見開かれるコクヨウの瞳。



「・・・ディア様は、僕の称号が見えるんですか?」

「うん、私は他人のステータスが見える。鑑定のスキルを持っているからね。」



本当に、このスキルには助かっている。



「だから、ね?例え魔族と同じ黒い色彩を持っていても、コクヨウは何も悪くないんだよ?」



逆に、コクヨウは加護を得られるぐらい闇に愛されているって事なんだから。



「・・そう、なんですね。ーーディア様。」

「うん?」

「その称号は、ディア様のお役に立ちますか?」

「・・もちろん、立つよ。」



コクヨウの髪を梳く。



「なら、黒い瞳も悪くない。全然、悪くないです。」

「そう。」



コクヨウは強いね。

ちゃんと自分の全てを受け入れられるんだから。

コクヨウの強さがとても誇らしい。

大切にしよう。

私は決意を強くする。



「うーん、さて、コクヨウに与えるスキルはどんなのが良いかな?」



悩む。

鑑定、経験値倍増、マップは絶対に付与するでしょ?

後の候補はーーーー




気配察知、危険察知、状態異常耐性、体力回復上昇、魔力回復上昇、攻撃力上昇、防御力上昇、身体強化、思考加速、黒魔法、詠唱破棄




ーーーかな?

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