第21話 まず始めに

奴隷を買う。

そう、私は心に決めた。

けどーーーー



「・・・奴隷を買いたい?」



ひとまず、奴隷を買うにあたって、どうすれば良いのか分からない。

だから、宿屋に戻った時に女将さんに聞いてみた。

何事も情報は大事だからね。



「えぇ、今日、ようやく冒険者登録をしたので、私の手伝いをしてくれる子が何人か欲しいんです。ーーーーそれも、何よりも信頼が出来る子が。」



最初では、私はソロで冒険者をやっていこうと考えていた。

知り合いもいないこちらの世界で、私は人を信用できなかったから。



「奴隷なら、絶対に主人を裏切れないんですよね?」



が、今では私のそんな考えは変わった。

その点、契約で縛られるから奴隷は私にとって誰よりも安心ができる存在だ。



「確かに、奴隷は主人を裏切れないですけど・・。」

「なら、奴隷をどうしたら買えるか私に教えてもらえませんか?」



奴隷の子達で、私の周りを固める。

例え何があっても、絶対に私を裏切る事の出来ない子達だけで。

そして、全ての国に拠点を作り、最高の冒険者になった子達を配置。

あらゆる情報が、私の元へ集まる。

闇も、光も。



「分かりました、冒険者にとって、仲間への信頼は大事ですからね。その点、奴隷ならもっとも安全と言う訳ですか。」



分かりました、と、女将さんが頷く。



「まず、このルーベルン国には三ヶ所、奴隷商がございます。その中で1番大きい奴隷商なのは、オーヒィンス商会ですね。」

「・・オーヒィンス。」

「奴隷は、お金さえちゃんと支払えれば誰でも買えます。」

「誰でも、ですか。」



なら、私も奴隷を買える、ね。



「私のような低ランク冒険者でも、奴隷の購入は大丈夫ですか?」

「それは大丈夫ですよ。ただ、奴隷は金額が高いのから低いものまで様々ですので、お客様がお望みの者が買えるとは限りませんけどね。」

「やはり、種族によっては金額は変わりますかね?」

「えぇ、変わります。後は年齢、性別でも金額は変わりますよ。」



ふむ、年齢や性別でも金額は変わる、と。



「あの、持てる奴隷の人数の制限はありますか?」

「それはありません。」



その問いに対して女将さんは首を横に降る。



「よろしければ、オーヒィンス商会までの地図をお書きしましょうか?」

「お願い出来ますか?」

「えぇ、構いませんよ。」



さらさらと、女将さんは紙に地図を書いて、手渡してくれる。



「はい、こちらになります。」

「ありがとうございます。さっそく明日にでも行ってみますね。」



よし、奴隷商への地図をゲット!



「女将さん、もし明日奴隷を買って泊まる人数が増えたら、その時は部屋もよろしくお願いしますね?」

「はい、かしこまりました。」



さぁ、明日が楽しみだ。

ウキウキしながら自分の部屋へと戻る。

これで私の明日の予定は決まった、と、くればーーー



「うん、次は戦力の強化、ね。」

 


私のレベルは、今ではかなり上がった。

でも、私1人でやれる事もこれから先は限りが出てくるだろう。

なら、増やせば良い。

私の為に忠実に働く優秀な子を。



「まず始めに、その為に必要なスキルを確保して、と。」



『スキル『従魔召喚』を作成しました。』



頭の中に、お馴染みのスキル作成のアナウンスが鳴る。





従魔召喚

自分でイメージした魔物を作り出し、呼び出す。

込める魔力が少なく、明確なイメージが行われない場合、失敗する事がある。




「ーーよし。」



今私に必要なスキルは、出来た。

部屋に魔法で結界を施し、鑑定で新しく作ったスキルを確認し、さっそく召喚する子のイメージを固める。



「・・・そう、私の手足となって、動けるような・・・、情報を集め、管理させるに適した子ーーーー」



あらゆる国や場所へ。

ーーーそう、そこに居ても、誰にも怪しまれず、何らおかしくないであろう子。



「・・・貴方は、蜘蛛。」



私の足元が光る。

浮かび上がるのは、魔法陣。

その魔法陣へ、固まったイメージと魔力を流し込んでいく。

ゆっくりと。

明確な姿を思い浮かべて。



「そう、貴方は、私の、蜘蛛のアルクネっっ、」



叫んだ瞬間、一層光が輝き、あまりの眩しさに、思わず目を瞑る。

目の回復に、数秒は要した。

恐る恐る、目を開ければーーーー



「・・・あっ、」



目の前に微笑みながら私を優しい眼差しで見つめる、彼女はいた。

私は目の前の彼女におずおずと口を開く。



「っっ、私の従魔・・?」

「ーーーーはい、そうです。我が主。」



私の問いに答えたのは、優しく透き通るような声だった。

震える手を、彼女へと伸ばす。

するとーーーー



「大丈夫です。私は、ちゃんとおりますから。貴方様の目の前に。」



優しく、その手を握り締めてくれる。

彼女のその手は暖かくて愛おしさを感じた。

この子が私の従魔。

新しい家族。



「ーーーー嬉しい。」


ぽつりと、私の口から零れ落ちたのは、飾りない心からの本音。

もう、これで私は孤独ひとりじゃないんだ。

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