第18話 定番の

色が変わったギルドカードに首を捻る。

そんな私の疑問に答えてくれたのは、笑顔の受け付けのお姉さんだった。



「色が赤色になったのは、私がそちらのギルドカードの持ち主ではないからです。持ち主が手にしている時は、金色のままですよ。」

「つまり、赤色のギルドカードは盗難されたもの?」

「はい、そうなります。本人のギルドカードかは一目で分かる様になっているのです。」

「なるほど。」



笑顔の受け付けのお姉さんに、頷く。

防犯機能付きとは。

素晴らしいね、異世界は。



「ちゃんと本人の確認が出来るなんて凄いですね。」



発達した技術に感心する。

他にどんな技術があるのか、楽しみに調べよう。



「ふふ、皆様、ギルドカードの機能をお知りになると同じ様に感心してくださいますよ。」



受け付けのお姉さんが微笑む。



「こちらのギルドカードは、お客様の身分証となりますので、失くさないよう十分にお気を付け下さいね!また、ギルドカードを紛失した際の再発行には、また銀貨5枚が必要になるので、そこもご注意下さい。」

「はい、気を付けます。」



有り難く、その忠告はいただこう。

このギルドカードは、普段は空間収納の中にしまっておく事にする。

必要な時だけ取り出せば良いよね!

ポシェットの中にしまうふりをして、空間収納の方へ移動させる。

良し、これで大丈夫。



「これで、お客様の登録は全て終わりです。お疲れ様でした。本日は、このまま依頼を受けられますか?」

「いえ、今日は登録だけにしましす。あっ、でも、今持っている薬草だけ買い取りしていただけますか?」

「かしこまりました。今お客様がお持ちの薬草の買い取りをさせていただきますね。薬草関係は常時、依頼が出ていますので、依頼を受けた事にして、ポイントを付けておきます。こちらのトレイの中に、お持ちの薬草をお出し下さい。」

「分かりました。」



言われた通り、トレイの中に持っている全ての薬草を置く。

トレイの中に出したのはーーーー




回復草×28

毒消し草×16

麻痺消し草×16




これ。

今、私が持っている全ての薬草だ。

せっかくなので、このまま手持ちの薬草を全て売却してしまおう。



「お願いします。」

「はい、確かにお預かりいたします。では、薬草の査定をしてまいりますので少々お待ち下さい。」



トレイを持って移動する受け付けのお姉さんを見送る。

本当は、ね?

モンスターも売却したかった。

けどーーーー


「ーーー・・私への敵意がある人がいる前で、あまり自分の手の内を見せたく無いんだよね。」



ぼそりと、小さく呟く。

マップ上に点滅する赤マーク。

ーーーー私の敵だ。

向けられる悪意。

何事もなく、このまま終われば良いのだけど・・。



「大変お待たせ致しました。」



程なくして、カウンターへ戻って来る受け付けのお姉さん。

トレイの上に置かれているお金。



「今回の売却品は回復草28個、毒消し草16個、麻痺消し草16個、どの薬草も取り立てのようでした。素晴らしいです!合計金額は、全部で金貨5枚でいかがでしょうか?」



ふむ、50000円か。

不満は無い。

今の所、お金には困っていない事だしね。



「はい、それでお願いします。」

「かしこまりました。では、金額をご確認下さい。」



トレイの中のお金を確認した。

きっちりトレイの中には金貨5枚ある。



「はい、大丈夫です。」

「ありがとうございます。今回の買取分はギルドカードに入金されますか?」

「ギルドカードに入金できるんですか?」

「出来ますよ。ギルドカードにお金を入金されていれば、ほとんどのお店でお買い物の支払いも簡単に出来ますし。」

「おぉ、」



電子カードにもなるのね!

色々と街で買い物した時は、店員さんに聞かれる前にお金で支払っていたから知らなかったよ。



「うーん、では、ギルドカードの方に全て入金で。」

「かしこまりました。入金させていただきますので、お客様のギルドカードをお預かりいたしますね。」

「はい、お願いします。」



お姉さんに自分のギルドカードを預ける。



「はい、ご入金が終わりました。ギルドカードをお返しいたします。」



何やら作業を終え、返されるギルドカード。



「お客様、正しくギルドカードにご入金されているかご確認下さい。」

「分かりました。」


 

促され、ギルドカードの情報を呼び出す。

そうすれば、ちゃんとギルドカードの中にお金が入金されている事が確認できた。



「大丈夫です。ちゃんとギルドカードの中に入金されていました。」



ギルドカードへの入金を確認して、ポシェットの中、から空間収納の方へしまう。

よし、これで冒険者ギルドでの用は全て終わった。

早く図書館へ行こう。



「今日は、色々とありがとうございました。」

「いえ、お疲れ様でした、ソウル様。」

「私の事はディア、と呼んで下さい。お姉さんのお名前を聞いても?」

「あっ、はい、私はミュアと申します。ディア様のまたのお越しをお待ちしておりますね。」



ミュアさん。

今日はこんな良い人に会えてよかった。

にこやかにミュアさんと笑顔を交わし合い、カウンターへ背を向ける。

さぁ、お待ちかねの図書館へ行こう!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る