第12話 この世界、初の街
思っていた以上の自分の容姿に、顔が引き攣る。
「・・はは、笑えない。」
歴史上、その容姿で国を傾けさせた美女の話は多い。
が、自分がその存在になり得そうな事実に眩暈を起こしそうである。
「・・はぁ、終わってしまった事を、今さらぐじぐじ言ってても仕方ない、か。」
大きく諦めの溜め息を吐き出して、がっくりと肩を落とした。
「街へ行く前に確認しておいて良かった。」
心から思う。
何も知らずに街へ行っていたら、厄介ごとに巻き込まれる所だったと。
平穏無事な人生は遠いようです。
ーーバカ、リデル。
「うーん、街中では、目立たないようにずっと外套を被っておくべき?」
いや、逆に怪しい人満載だよね?
しばらくの間、色々と防衛策を考えなくちゃ。
レベルが上がれば、もっと自衛も楽になるだろうし・・・・。
それまでの、我慢!
「・・・恨むからね、リデル。」
異世界へ送ってくれた事は、本当に感謝してるんだよ?
でも、それとこれとは別だから!
「うぅ、厄介ごとに巻き込まれないように、十分に気をつけなきゃ、ね。」
溜め息を落とす。
頭が痛いよ。
「嫌だよ?街に向かって早々、この容姿のせいで人さらいに会うとか。」
この容姿だ。
そんな犯罪にも合いそうである。
「ーーーー私の忠実な番犬でも、飼おうかしら。」
ふと、思いつく。
私だけを忠実に守る番犬を。
・・うん、なんだか良い考えかも。
「それに、冒険者として自分の仲間を増やすのは、とても良い事だよね!」
戦力アップにもなるし。
冒険者としての生活も、段々と大変になっていくだろうしね!
「問題は、絶対に私を裏切らないか、かな?」
裏切りは嫌い。
自分の側に置くのであるならば、絶対に裏切らない子が良いだろう。
「そんなスキルを魔法で作るとか?」
契約のスキルとかね。
色々と創造魔法で作れそうだし。
「その事も、おいおい街へ着いてからゆっくりと考えますか!」
今は、レベル上げだ!
せっかくの新しい私の生活を楽しみますか。
「おぉ、ここが街の城門!」
ーーーーはい、やって来ました、この世界初の街へ。
今、私の目の前にあるのは、街の名前はまだ知らないが、を守る為の城門。
兵士もいるようだ。
・・・あれから、モンスターを狩りまくった私は、日暮れ前に街のある方角へと向かった。
そして、目の前に街が。
「さて、私も列に並びますか!」
日暮れ前だからか、城門は人の出入りが多い。
無事に入れれば良いが・・・。
こっそりと溜め息を吐きつつ、覚悟を決めた私は列の最後尾へと向かった。
「あっ、いけない、忘れてた!自分のステータスを隠蔽で隠しておかなきゃ。」
危ない、危ない。
誰が鑑定のスキルを持っているか分からないんだから、注意しなくちゃね!
一部のスキルとユニークスキルは隠蔽で隠して、と。
名前:ディアレンシア・ソウル
LV21
性別:女
年齢:16
種族:人族
称号:世界を渡りし者、神に見守られし者
HP:1420/1420
MP:1050/1050
スキル(一部隠蔽中)
言語理解、空間収納、鑑定、経験値倍増、マップ、気配察知、危険察知、隠蔽、状態異常耐性、体力回復上昇、魔力回復上昇、攻撃力上昇、防御力上昇、身体強化、精神耐性、全属性魔法、詠唱破棄、武器作成、思考加速、剣術、体術
ユニークスキル(隠蔽中)
創造魔法
ーーーーこれで良し。
安心して、列の最後尾へと並んだ。
そして、人の列に並び待つ事数十分ーー
「よし、次の人。」
ーーーーようやく、私の番です。
「ん?君、見ない顔だな。この街へは初めてか?」
警備兵に問われる。
ほう、ちゃんと顔を覚えているなんて、この人は職務に忠実なんだな。
好感が持てた。
だから、笑顔で答える。
「はい、この街は初めてです。今までここから遠い田舎町にいたので。」
「っっ、そ、そうか、君はこの街へは何をしに?」
あれ?
警備兵の顔が赤くなった。
ーーーーあぁ、今の私のこの顔が原因か・・・。
苦笑いで答える。
「少し剣術の覚えがあるので、この街で冒険者になろうかと。」
決めていた。
しばらく、魔法が使える事は秘めていようと。
まだレベルが低い内は、他人に自分の全ての手の内を明かすのは、きっと死を招くだろうから。
そんなバカな事はしない。
「ほう、剣術を。若いのにすごいな。今の年齢は、14・・15才か?」
「16才になりました。」
「ーーーーなら、成人は過ぎてるのか。それでも、その歳でしっかりしてるな。」
「ありがとうございます。」
スラスラと、作っておいた嘘を並べる。
まぁ、全部が嘘って訳じゃないんだけどね?
遠い場所から来たのは本当だし。
この世界の、ではないってだけでね。
「では、確認の為にこの玉に手を置いてくれるか?」
「ええっと、これは?」
「初めて見るか?これは、犯罪履歴を見る為の魔道具だ。身体に害があるものでは無いので、安心してくれ。」
「そうなんですね、分かりました。」
なるほど、この魔道具で事前に犯罪者を街へ入る前に弾くわけね。
納得して、玉の上に手を置く。
「・・・うん、犯罪履歴はないようだな。ーーーーあぁ、言い忘れていた。」
「はい?」
「ーーーーようこそ、ルーベルン国へ。」
警備兵は、にっこりと笑った。
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