第3話 私の復讐と夢

誰かに必要とされたい。

愛されたいと願う。



「・・・ねぇ、リデル。1つだけ聞いて良い?」

「なんですか?」

「私、が、死んで、あちらはどうなったの?」



人生を終わらせる事。

それが、私の出来る小さな彼らに対する復讐だった。

その結末は?



「・・知りたいですか?」

「えぇ、知りたいわ。」

「・・・・、学校は、大惨事ですね。なんせ、屋上から生徒が飛び降りて亡くなったんですから、当然の事ですが。」

「・・・そう。」



小さく、笑みを浮かべる。

そう、か。



「ふふっ、ちゃんと私の復讐は叶ったんだ?」



笑った。

これからの彼らの事を考えて。

物語の悪役は、最後にこう言うんでしょ?

ーーーーざまぁ、と。



「私への苛めが世間に知れ渡るかしら?誰が被害者で、加害者なのかも。」



生徒が屋上から飛び降りたのだもの。

メディアは大喜びで、私が飛び降りた原因究明に勤しむだろう。

私の死に関わった人間。

その原因と理由を面白く暴く為に。



「リデル、私ね?学校の屋上から飛び降りる前に、教育委員会に向けてノートを送ったの。」

「ノート?」

「そう、私がクラスメイト達に虐められていた事を克明に記したノートよ。どんな事をクラスメイト達にされ、抵抗や拒絶したかが克明に書かれたノートは、どうなったのかしら?」



学校の屋上に向かう前に、郵便局から送ったノート。

施設の人や学校の誰かの手に渡れば、隠ぺいの為に破棄される懸念があり、直接、直筆のノートと手紙を教育委員会に向けて送ってやったのだ。

もちろん、学校の屋上にも手紙は残したが。



「きっと、あのノートは無能で最低な人間達を地獄へ落とす波紋の一つになるわよね?」



私を虐めたクラスメイト達。

あの男の言葉を信じ、私を見放した施設の人間。



「ふふ、あははは、全員、私以上に苦しんで、これから先ずっと地獄を味わえば良い。」



その為の、ノート。

大きな波紋となる為の、布石。

後で自分達の犯した過ちを後悔しても遅いんだと痛感して、生き地獄を味わえ。



「当然の報いよ。」



全ての人間から批難され、私の痛みを理解しろ。

居場所さえなかった私の苦しみを。



「私へした事を誰にも隠蔽などさせないわ。そう、教育委員会にもね?」



懸念があった。

教育委員会の連中が隠蔽する事を。



「だから、私は一言だけ手紙の最後に書いておいたの。このノートを見た貴方達以外にも、この事実を知る人は他にもいるので、揉み消さないで調査した方が良いですよって。」



嘘も方便。

だって、その真実を知るのは私だけ。

教育委員会の人達が、それが嘘か真実なのか知る術はないのだから。



「これで教育委員会の人達も、自分達の為に学校の問題を隠蔽しようなんて考えられるかしら?」



私は思わない。



「私の考えでは、きちんと教育委員会は調査をすると思うのよね?だって、後で真実がバレてしまったら困るもの。」



私の手紙の一言を無視は出来ないだろう。

リスクは最小限にと考える。

自分達への傷が小さくなる方へと、きちんと私が誘導してあげるのだ。



「これで、真実は必ず明かされるわ。」



笑いが止まらない。

無意味に死んでなんかやるものか。

これは、復讐なのだから。



「あぁ、きっと担任も、今回の事で責任を取らされるわね。」



だって何もしなかったんだもの。

頑張って最後は、ちゃんと私の担任として、その責任を果たして下さいね?

自業自得なんだから。



「何もしなかったなんて、何の免罪符にもなり得ないものね?」



見て見ぬ振りする方が、タチが悪い。

だから記入してあげたの。

担任の先生からは何もしても、されてもいませんと。



「私、事実しか書いてないでしょう?」



嘘は何一つ書いてない。

ノートに記されているのは、真実だけ。



「あぁ、クラスメイト達や担任、学校の上層部に施設の職員達は、世間やマスコミにどんな言い訳をするのかな?」



自分は知らなかった?

無関係?



「全員が関係者で、罰を受ける必要があるよね?」



注目を浴び、批難されろ。

人1人を自殺に追いやった加害者なのだから。



「その様子では、地球に何の未練は無さそうですね?」

「もちろん、あいつらへの私の復讐は叶ったんだもの、なんの未練も無いわ。」



むしろ、あの世界にお別れできて清々している。

案場所へ戻りたいとも思えない。



「未練があるとすれば、あいつらがこれか先、どうなるのか見れないのが残念な事ぐらいよ。」



どんな風に苦しむのかしら?

満面の笑みできっぱりと言い切る私に、リデルは首を傾げた。



「それなら、他の世界にします?」

「えっ!?他の世界って?」

「地球とは異なる、別の世界の事です。言うなれば、異世界。」



・・・なに、それ。

すごく、最高なんですけど。



「魔法は!!?その異世界に行けば、魔法は使えるの?リデル、どうなの!?」

「は、はい、使えます。」

「っっ、よっしゃー!!それなら、行くしかないでしょ!」



迫る私に引くリデル。

そんなリデルに構う事なく、1人ガッツポーズ。

来ました。

良く物語にある、別の世界への異世界転生。



「あぁ、夢の異世界。」



憧れだった。

こんな最低な世界を捨てて、別の世界へって。



「・・・魔法、使いたいんですか?」

「はぁ?リデル、なに言ってんの?異世界って言ったら、魔法でしょう!?漫画や小説なら魔法は定番でしょうが!」

「は、はぁ、」



困ったように、リデルは頬をかく。

いまいち理解出来ていなかろうが、呆れられても、私には関係がない。



「ふっ、ボッチを舐めるなよ!」



私の趣味と言えば、お金のかからない読書ぐらいしか無かった。

あとは、勉強?

寂しい奴と、言うなかれ。

お金のかからない図書館で本を借りて、読書する事が私の唯一の贅沢だったんだから。



「で、では、異世界に向かうと言う事で良いですか?」

「もちろん!」



こちらの世界での、私の復讐は叶った。

なら、新しい異世界で別の人生を始めてみるのも良いじゃないか。

笑顔で頷いた。

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