第6話  空間

・・・・・・・・視線を感じる・・・・・・・・・


ナースセンターを抜けた病室の廊下に数人の男女がいる。

一斉にこちらを見ている!

その中から一人の男が小走りにこちらに向かってくるのが見えた。

あきらかに私の顔を見ながら近寄ってくる。


「こんにちは!僕ゆうじです。あなたのお名前はなんですか?」


ものすごく屈託のない笑顔に少し戸惑いながら・・。


私・「東条です。」


「どこから来たの?」


私・「・・・・・・・・」


その光景を見ていた看護師の一人が近づいてきて、おそらく年齢的には少年であろう男の人に向かって一言だけ。


「はい!もういいわよね。」


そう言って少年を向こうの部屋の方に誘導していった。


他の人間達もそれぞれに個性的な、なぜか独特の雰囲気を醸し出していた。

私は一番奥の個室に案内され、ここが今日から過ごす部屋だと説明された。

部屋の中にはベッドが1台とテレビ、洗面台、床頭台が置いてあり広さは多分4畳くらいだと思った。

部屋の壁は真っ白で、天井も床もすべてが真っ白である。

ひとつだけ非常に気になる事がある。


========窓に鉄格子のような金属が=========


しかも窓が開く気配すら感じない!!


一通り部屋の説明を受けてから看護師と伊藤氏は部屋を出て行った。


ここで思い出すのは一緒に来たはずの両親?が部屋の中まで来なかった事だ。

そういえば、どこまで一緒に来ていたんだろう?

確か車を降りて、伊藤氏と挨拶をしてエレベーターに乗ったところまでは一緒だったはずだ!

医者とでも話をしているのかと思い、とりあえずベッドに腰をかけて時間が過ぎるのを待っていた。


入院するんだと、ここで冷静になって考える事が出来ている。

しかし・・・・・。


一体何が起きて今の状況になっているんだろう?

頭痛や倦怠感が少し収まってきたら、いろんな事を考える余裕も出てきているからこその疑問の数々。


そんな事を考えながらどの位の時間が経過したんだろう?

この部屋には時計も無いし、自分の腕にも時計が装着していないみたいだし・・。


おそらく数時間の間は一人でこの部屋で時間を過ごした。

やっと人の気配を、部屋の前で感じる事ができた。

しかし、中々部屋のドアをノックもしなければ開ける事もしない。

それどころか、誰か数人で話しているような声がした瞬間に、この一面真っ白の部屋で、ゆういつの希望であろう外への通路の鍵が・・・・。


・・・・・・・・・・部屋の鍵が確実に閉まった・・・・・・・・・・


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