第49話 行き止まり

 その後、次々と現れる魔物を討伐しながら順調に進み続ける俺とテトラが辿り着いたのは、ひらかれた空間だった。

 しかし、入り口の他に通路は一つも存在しない。

 どうやらここで行き止まりみたいだ。


 その事実に対して、俺はある疑問を抱く。


「変だな。ここまでは一本道だったし、別の通路を見落としたりもしていないはずなんだが」


 それとも、俺たちが三組に分断されたあの空間のように、何かギミックが隠されているのだろうか?

 この空間にあるもので、気になるものといえば……あれか。


 奥の壁に備え付けられているその物体に目をつけ、俺たちはゆっくりと歩を進めて近付いていく。


 そこにあったのは、石で作られた巨大な犬の頭だった。

 作り物だと分かっていても、鋭い目や巨大な牙から獰猛さを感じる。


「不思議。まるで生きているみたい」

「ああ、すごい迫力だな」


 どうやらテトラも俺と同じような感想を抱いたらしい。

 それほどまでに、この彫像のクオリティは高かった。


「けどまあ、それだけだよなぁ……」


 確かに出来は良いが、現状を打破する材料になるとは思えない。

 気を取り直して、他のことを調べるべきだろう。


「テトラ、手分けしてこの部屋の中を調べてみよう。何か見つかるかもしれない」

「分かった」


 他の手掛かりを見つけるべく、俺とテトラは別々に探索を開始するのであった。



 ◇◆◇



 ――一方、フレアとエル。


「フレアさん、一体そちらにいきました!」

「了解、任せて!」


 二人は今、オークを初めとした大量の魔物たちとの戦闘を繰り広げていた。


 突如、慣れない相手とペアを組むことになったため、ある程度の苦戦を強いられるかと思ったエルだったが――すぐにその心配は無用だと分かった。


 まず前提として、フレアの実力が圧倒的だったからだ。

 最早彼女一人で十分なのではないかと思えるほどに、一人で数多くの魔物を討伐している。

 通路が狭いこともあり、今回は魔法を控えて剣のみで戦っているエルだったが、その優れた剣技は討伐ではなく、もっぱら敵の気を引くことに利用されていた。


 次に、フレアとエルは自分自身の役割を理解した上で、初対面の相手ともコミュニケーションを取れる性格であることも大きな理由だった。

 それによって、二人は見事に連携を取ることができたのだ。



「これで――最後!」


 などと考えているうちに、フレアが最後の一体を両断する。

 魔物が魔石に変わるのを見届けた後、エルはほっと一息ついた。


「お疲れ様です、フレアさん。

 ほとんどお任せしてしまいましたね、申し訳ありません」

「ううん、そんなことないよ。エルがいてくれるおかげで凄く助かったから!

 これは二人の勝利だよっ!」

「フレアさん……そうですね」


 どうやらフレアは心の底からそう思ってくれているようだった。

 フレアの優しさに対して、エルは感謝の気持ちを抱いた。


 続けて、エルは他の二組のことを考える。

 アイクとテトラの二人に関しては、実力、相性共に問題ないはず。

 魔物を相手にしても問題はないだろう。


 しかし、リーシアとシーナの二人はどうだろうか。

 二人の実力を疑う訳ではないが、僧侶であるリーシアと、どちらかと言えば敵の隙をついて攻撃を仕掛けるのが得意なシーナ。

 ここのように狭い場所で大量の魔物を相手にするのには、あまり向いていないコンビと言っても過言ではないだろう。


 それに加えて、あの二人の相性がいいと妄信することもできない。

 いや、ある意味では仲がいいと言えるかもしれないが、基本的に顔を合わせたら言い合いを始めるような間柄だ。

 そんな二人がしっかりと協力できているか、はなはだ疑問である。


 と、そのように考えているエルだったが、


「さあ、先に進むよ、エル!」

「あ……はい。今行きますね」


 フレアの呼び掛けがあったため、エルは思考を打ち切り彼女の後を追う。

 きっとあの二人なら、多少の逆境は乗り越えてくれるはずだと信じながら。


 その後、フレアとエルの二人も行き止まりの空間に辿り着き、石で作られた巨大な犬の頭を見つけるのであった。

 


 ◇◆◇



 ――一方、リーシアとシーナ。


「これは……」


 眼前に広がる驚愕の光景に、シーナは目を疑っていた。

 そこにいるのはリーシアと、大量の魔物もの。


 何故このようなことになっているのか、シーナはこれまでの経緯を思い出していた。

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