第2話 お嬢様と夏休みと水着(1)
夏休み直前になった。
クラスメートのみんなが浮き足立っている。
俺は朝宮さんや昼河、早希ちゃんとお昼ご飯を食べながら、夏休みの計画を話した。
「で、竹居は、夏休みどうするんだ?」
「バイトかなぁ。ちょっと姉さんと約束しててさ」
「ふうん、忙しいんだな。じゃあせめて、祭にみんなで行かないか?」
「祭? いつだっけ?」
「えっと、近くでやるのは来週だな。で、隣の市のは再来週」
夏休みが目前に迫っている。
祭の日くらいはバイトを休んでもいいはずだ。
「そういうのは早希ちゃんと二人で行けばいいんじゃないの?」
「まあそうなんだが……大勢の方が楽しいだろ?」
「そんなもんかね。朝宮さんはどうす——」
「行きたいと思います!」
朝宮さんはやけ真剣に聞いていたと思ったら……食い気味で答えてきた。
「おー。ノリノリだねー」
早希ちゃんが笑った。
そっか、昼河は早希ちゃん公認で俺たちを誘ってるのか。
「でしたら、暁星さんもお誘いしても……?」
朝宮さんが意外なことを言う。
暁星のことは警戒していたように思ったのは俺の思い過ごしだろうか?
まあ、でも二人で行くわけでも無いし。
妙に勘ぐる必要は無いかな。
「竹居、暁星って誰?」
「暁星はこの前一緒にサックスを吹いていたもう一人の女の子だよ。俺の幼馴染み」
「え……あの巨乳の子? マジ?」
「そうだけど、昼河、お前なぁ?」
「やったぜ——ぐほっ」
相変わらず一言多い昼河は、早希ちゃんの鉄拳を食らった。
まあ、冗談だし早希ちゃんも分かってるんだけど、彼女の前で言うのはダメだわな。
「くそっ。なんで竹居だけそんなに可愛い女の子に……」
「私は可愛くないって言うの?」
「いや可愛いです! でも幼馴染みってあんまり新鮮じゃ——」
殺気を感じた昼河は口をつぐむ。
朝宮さんが目をキラキラさせて言う。
「あの、竹居君、花火大会の日のお昼は時間ありますか?」
「うーん、バイト次第だけど何かあるなら空けるよ?」
「あの、みなさんでお会いするなら……楽器の練習をしませんか?」
真面目か!
確かに休み中練習しないと鈍ってしまうだろうけど。
「いいけど……休み中旧校舎使えるのかな?」
「いえ、貸切のコテージが使えると思いますので、みなさんどうかなって思いまして」
「貸切のコテージ! おお。いいね」
「ですよね!? じゃあ、早速手配しておきます」
「もしかして、朝宮さんとこの?」
「いえ、知り合いが経営しているところです。多少融通が聞くと思いまし、プライベートビーチみたいな感じになっていて騒いでもいいと聞いていますし」
なんというブルジョワジー。
なるほど。そういうところなら、楽器の練習も問題ないだろう。
そう言うと昼河が無駄に目を輝かせて言う。
「なあ、朝宮さん、俺や早希も行っていいか?」
「はい、もちろんです」
「やった。泳いだりできる?」
「できますよ」
昼河は妙に乗り気のようだが……何か考えがあるのだろうか。
「じゃあ、みんなで泳ごうぜ! みんな……全員水着持参すること。もちろん花火もあるから着替えも持参で」
「じゃあ、私も水着持っていくかー」
早希ちゃんはあっさり同意してるけどさあ、昼河は女子勢の水着見たいだけじゃないのか?
「水着ですか……? 持っていないので買わないといけませんね」
え?
「朝宮さん、水着もってくの?」
「はい! 楽しそうですし、竹居君も泳ぎますよね?」
めっちゃ楽しみのようで、笑う朝宮さん。
水着……。
これは行くしか無いか。
やれやれだぜ。
「竹居、にやけてるぞ」
「う、うるさいな……」
俺の反応に、みんなが笑った。
そして……夏が、夏休みがやって来る——。
夏休みになった。
姉さんに借りたお金を返すため俺はバイトを始めた。
朝宮さんとの旅行が泊まりになったのが原因だが、悔いは無い。
そして……祭、花火大会の日。
休みが始まってすぐの日曜日だ。
俺は朝宮さんや暁星に久しぶりに会うため、当日、少しそわそわしていた。
まずはコテージに行くということで、俺と朝宮さんと暁星が集まる。
昼河と早希ちゃんは別口で来るのだという。
集合場所の駅。
朝七時に着くと、朝宮さんと暁星が既に待っていた。
「久しぶり、暁星、朝宮さん」
「タクヤ、久しぶりっ!」
「竹居君、ほんとうに久しぶりですね」
二人の笑顔が眩しい。
彼女らは、もう夏全開だ。
朝宮さんは、キャミソールワンピース……朝宮さんってワンピース好き?
暁星はゆるいTシャツに長めのスカート着ている。
服装の割にぐっと女の子っぽい感じが増しているような気がするのは、なぜだろう?
朝宮さんと暁星はかなり打ち解けていた。
俺が気後れしたくらいだ。
二人に混ざって夏休みの過ごし方を話しながら、俺たちは移動を始める。
こうやって、みんなと知らない場所にお出かけするのって、ものすごくわくわくする。
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