或る独白_(03)
猿が
猿は
――思えば、『興を覚える』などと言うのは久しぶりの事であった。ゆえに
他愛も無いやり取りを幾つか。それで以って
猿は応える。神に会うのに、理由はいらないと。
その返答が、
理由のないナニカに触れたのも、久しぶりの事であった。この世界の全てには意味がある。猿の言う事にも、猿には気付けぬ意味がある。しかしそれに猿自身が気付けない。ゆえに猿自身が気付けぬ『意味』を、
数世代後に、また猿が現れた。
その猿は武装をしていた。
次の猿は、すぐに現れた。
猿は対話を、
暇を持て余していた
二、三のやり取りをすると、猿は発狂して死んだ。
次の猿も、その次の猿も、全て発狂して死んだ。或いは殺した。
救い難いのは、猿どもが世界の心理の一端をも理解していないことであった。
それゆえに猿は真理に耐えきれぬ。
それに気付いた
猿の身体に刻まれた文化に帰依し、猿の使っていた言語を脳内からサルベージし、その代わり、猿を殺し得る真理は全て、
野に下り、
足がもげては、山に帰れぬ。ゆえに
そのどれもが正解であった。加えて言えば、傷付いたのはそもそも死んだ猿の身体である。
猿は
猿どもの言語を使い、猿どもの脆弱さに気遣い、猿どもに世界の真理の、一片の更に一片を零した。それを猿どもは一つの魔術体系に変え、信仰に変え、国の輪郭に変えた。猿どもは酷く喜び、
しかし、それらは
猿は
何か、受け取ってほしい。何だって差し捧げよう。何が欲しいのか。あなたのためなら命だって惜しくはない。だからどうか、いなくならないでほしい。
私は、満たされている。あなた方と共にあるだけで満たされる。あなた方に寄り添う日々は、悪いものではないから。
その返答を、猿どもは曲解した。
否。
そこまでの曲解ではなかったのかもしれない。
猿の求めに、
悲劇だったのは、
そのまま、『意図』は悠久をかけて曖昧となった。
意図が曖昧となったまま、身体を寄り添わせる快楽のみが残った。
見目麗しい遺伝子を掛け合わせ、それを巫女とし
猿がそれを求めるなら、
……そのまま、悠久の時間が過ぎた。
…………そのまま、悠久の時間が過ぎた。
………………そのまま、悠久の時間が過ぎて、
――とある、そう。
春の日に。
「……、……。」
――「嫌だ」と
……初めは眩く、美しく輝くような「愛」だったのだ。それが悠久に薄汚れ、ここに残るのは穢れた肉欲の塊だけ。気持ちよかったから、それから目を逸らしていた。
それでも、
――いつかは持っていた気がする『誇り』が、
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