例の魔法と俺の魔法

「因果逆転?それに私たちにも抗えるってどういうこと?」


シアは不思議そうな顔で見つめてくる。


「因果逆転とは因果、ここでは結果だな。それを変えてしまうということだ。この魔法陣を見る限り逆転だから結果を反対にするといったところか。そしてこの因果逆転を極めれば結果を自由に操れるようになる。つまり……」


「今回の神器と同等の力を得る可能性があるって事?」


シアは難しそうな顔をしながら自分の考察を述べる。そしてその考察はビンゴだ。


「そうだ。事象改変と因果逆転では術者の力の差もあるので一概には言えないが後者の方が力は強い。そして今は事象改変を使った帝国軍に対してメルト王国軍は因果逆転を使った。魔法陣を見るに術者の心配はいらないだろう」


「……つまりこの世界戦争を止められるかもしれないってこと?」


「あぁ。あとは神器を皇帝さんから離せればいいが……」


「それは無理そうですね。今は戦況の不況なんか知りませんから優雅にワインなんか飲んでますし。あの人お風呂に入る時も肌身離さず身につけてますから」


「だよなぁ。やっぱり外に出たタイミングで魔法撃つしかないのか」


神界から下界に向けて魔法を放つ時、力の加減が効きづらいので天災と呼ばれるような事になるかもしれない。

あんまりこれはやりたくなかったんだけどなぁ。


「仕方ない、腹を括ってやるか。あいつが街道に出た時に雷の撃つよ」


「まぁ仕方ないわね。神器の回収はどうする?」


「あー、それどうしよ」


って感じで神器の回収方法を話しているうちに1000年の時が経過していたりする。

ちゃんと雷は撃ったよ?案の定天災って呼ばれる羽目になったけど。





あれからしばらく話していたレイラが今度は俺の事について聞いてきた。


「フェイル様はどこからいらっしゃったのですか?」


「ん?あー……周りには山しかない田舎からかな?」


「それも聞きたかったのですがそうではなくて、いきなりあの場に現れたことを教えて欲しいのです」


「えーっと、内緒で」


「どうしてですの?」


「色々とな」


一応この世界では転移魔法というのは希少な存在である。この前確認しただけでも5人もいなかったはずだ。一応秘密にしておく。

なんで分かるかって?俺は魔法神だぞ、魔法のことなら全能さ。

そういえばさっきの盗賊団(だったらしい)は途中によった街の衛兵さんに言っておいたので今頃連行されているだろう。


「いいですわ。私も色々隠していますし。ではもうひとつお聞きします。旅人と仰っていましたけれど荷物がないようですが本当に旅人ですか?」


やっべ忘れてた。全部異空間に入れたままだった。


「アイテムボックスを使えますのでそこに全て入れています。旅というものはなるべく身軽の方がいいですからね」


旅なんかしたことないのに旅について語っていいのだろうか?まぁいいや。


「アイテムボックスをお持ちなんですか?」


「えぇ。一応使えます」


厳密に言えばアイテムボックスでは無い。

アイテムボックスはその名の通り物を収納する魔法だが俺が使っているのは空間魔法で異空間を作り出しそこを収納として使っている。空間魔法なので生物も入れられるいわば上位互換の魔法だ。本来の空間魔法とは違うのだが色々便利なので使っている。

魔法を自由自在に操れる魔法神の特権だな。


「フェイル様、外を見てください!あれがシスティア領の領都ですわ!」


俺は窓を開けて外を見る。そこには10メートルはあろうかという壁がそびえ立っていた。

どうやら領土に着いたみたいだ。8時間ほど馬車に揺られていたので外はもう夕日で赤くなっている


「おぉ。凄いですね」


「そうでしょう!」


実の所ここは神界から何度か見ていたりする。

これだけ大きいと神界からも少しは見えたりするのだ。なるほど、ここはシスティア領だったのか。


「それにしても行商人の数が多いですね」


「もちろんです!ここは東にある国々から入ってきたものが一旦ここに来るのです。そしてそこからメルト王国中に行き渡るのですわ!」


それは神界から見ていた。ここってシスティア領だったんだ。

神界からは色々見える。だが見えるだけだ。人が行き交う様子は見えてもその個人がどこの誰で、なんの話をしているのかは分からない。

神界にいればなんでもわかるというのが普通のようだが意外と不便なのだ。


「さぁ!この壁を抜ければ屋敷まではすぐですわ!」


俺たちの乗っている馬車は検問で一旦止まったものの数秒もすれば再び動きだした。そりゃ領主の馬車なんだから検問なんかしないだろう。


街の中はもう日が傾いているのにそれなりに活気があった。主に飲食店に人が多い。この感じだと日中も人で溢れていることだろう。

そんな町の中を俺たちの馬車は屋敷に向けて進んでいく。



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