例の魔法

システィア領までは馬車で3時間ほどらしいのだが、そこから屋敷まではさらに5時間ほどに揺られないといけないらしい。

なんでもシスティア領はメルト王国の公爵以下の貴族では3番目に広い領地なのだそうだ。


ちなみにメルト王国というのは今いる場所の国の名前だ。レイラが自慢げに「もう一度自己紹介致しますわ!」なんて言うのでお願いしますと言ったら色々話してくれた。


「私はメルト王国が伯爵家、レイラ・システィアですわ。システィア家と聞いてもピンと来ないということはあまりこの国のことをお知りではないのでしょう。私が教えて差し上げます!システィア家はかの世界戦争においてメルト王国の魔法軍を率いて戦った由緒ある魔法一族ですのよ!」


それから長々と話されたので簡単にまとめるとこうだ。

システィア家はメルト王国の魔法軍を管理する伯爵家の中でもかなり影響力のある名家らしい。そしてかの世界戦争では王国が攻められた際、その魔法軍を率いまたシスティア家も詳細は言えないが大魔法を敵陣に放ち形勢逆転、防衛戦争は勝利したそうだ。

それ以来、メルト王国は魔法の国として一歩先をいっているいるという。


確かに神界から見ていたが、メルト王国は世界の国の中では魔法という分野ではやや抜けている。まさかそんな国に転移できていたとは。何かの縁だろうか?

ここまで自慢げに話していたレイラだったが少ししょぼんとして「でも」と言って話を続けた。


「ここ数年、我がシスティア家の信頼は下がりつつあるのです」


「どうしてですか?」


「世界戦争に放った魔法が関係しているのです。先程も申し上げたように詳しいことはお話できないのですがその大魔法を行使できるものが戦争が終わってから約1000年間出ていないのです」


「……つまり、その大魔法を使えるのはシスティア家だけだがそのシスティア家も現状つかえない、と」


「恥ずかしながらおっしゃる通りですわ。もちろんその魔法だけではなく、全体的な魔法能力もありますので魔法軍を管理しているのですが……」


「いわば切り札的なものをつかえない現状、昔ほどの信頼はなくなっているということか」


「えぇ……」


なるほど。俺たちが神界で話していたはどうやらすぐに見つかりそうだ。





神界。


丸いテーブルを囲むように俺たち3人は座って空中に浮いている下界を映したモニターを見ている。


「そろそろメルト王国も落ちるのか」


「そのようね。これであの神器による被害は何カ国に及ぶの?」


「中小国を合わせると50は軽く超えています……」


「あのいたずらっ子め!何が面白そうだから落としてみた~。だ!私の世界が滅びかけてるじゃない!」


そう。事の発端は別の世界の神がこちらに遊びに来た際、いたずらで神器を落としたのがきっかけだ。

その神器は指輪型で効果は事象改変。その名の通り自分の思い通りにことが動くということだ。

それをあろうことか支配願望の強いバルト帝国が手に入れたのだ。


そしてバルト帝国の皇帝がその指輪を使いまずは隣国に侵略を開始。初めは指輪の使い方が上手くいかなかったのか幾度か撃退されながらも最終的にはその国を侵略した。


それを機に帝国は次々と隣国を攻め滅ぼした。

そしてバルト帝国とメルト王国の間には3つの国があったが現在ではお互いの領土が隣り合わせになり、現在はメルト王国が攻められているという状況だ。


モニターに映し出されているのは次々とメルト王国軍を蹂躙するバルト帝国軍だった。今はまだ両国の国境ではあるものの、もうすぐでメルト王国の要塞に手が届く距離だった。


俺たちも諦めかけていたその時、要塞から巨大な魔法陣が出現し、例の魔法が発動した。その魔法は一つの光線となり敵軍のど真ん中に命中。それからメルト王国が有利になり見事バルト帝国を撃退した。


それを見て俺は固まった。あの魔法は人間程度では発動できるはずがないと思っていたからだ。


「どうしたのよフェイル」


「どうしたんですか?」


2人は不思議そうに固まった俺を見る。俺はおもむろに答えた。


「あれは因果逆転。俺たち魔法だ」



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る