メイと沼田覚醒
「それじゃ、行くぞ」
アコの先導により3匹のゴブリンを発見。
メイと沼田を覚醒者にすべく、ゴブリン討伐に挑んだ。
「影の支配者! いざ、参る!」
影の支配者なら大声を出すなよ……。
影の支配者(?)――山田がゴブリンへと先陣をきる。
「臨・兵・闘・者・皆・陣・列・在・前! 我が呼び声に応えし紅蓮の炎よ、悪しき魂を浄化せよ! ――《火遁の術》!」
山田が九字を切ると、目の前のゴブリンは巻き上がる火柱に包み込まれた。
九字とか必要ないだろ……と、思っていたが……なんだあの威力?
まさか、この威力は、あの面倒な動作と詠唱を引き換えなのか?
「フッ……諸行無常なり」
ゴブリンは火遁の術で焼死。山田はすでに決めポーズに入っている。
っと、《火遁の術》の検証は後回しにして、今は自分の役割を全うするか。
スキルを使うと倒してしまうから……普通に攻撃するか。
俺はスキルを用いず、剣でゴブリンの腕に斬撃を浴びせる。
「ギィ!?」
よしっ! 成功。
振り下ろした剣はゴブリンが手にした武器ごと腕を切り落とした。
後は、倒さないように注意しつつ……ゴブリンの足を斬りつけて機動力を奪った。
「メイ! いけるか!」
「ん」
メイは頷くとゴブリンに向かって疾走。
お、初めての討伐なのにビビって……いや、よく見るとメイの表情は強張っていた。
「負けない……負けない……負けない……!」
メイは手にした剣をゴブリンの眉間に振り下ろした。
メイの覚醒は成功したか……?
ゴブリンにトドメを刺した状態で静止していたメイが動きだす。
「メイ、どうだ?」
「ん。大丈夫」
メイは『覚醒者』になれたようだ。
「沼田! いけ! 根性みせやがれ!」
役割を果たしたことに安堵していると、ワタルの怒声が聞こえてきた。
「う……うぅ……」
「いけ! お前はこのままでいいのか! これから先も震え、怯え……俺たちの後ろに隠れ続けるのか!」
「沼田君……が、がんばって……」
「沼田! 頑張れ!」
「沼田君、ファイトッ!」
瀕死のゴブリンを目の前に震えている沼田に仲間たちがエールが送る。
この間まで日本という平和な国に住んでいた普通の高校生にとって、異形の化け物とは言え……生物を殺めるのは非常に困難だ。
異形の化け物を殺し、『覚醒者』に至る。
これはこの世界から課せられた最初の試練だ。
「うわぁぁあああ!」
沼田はワタルから渡された斧を瀕死となっているゴブリンの頭部に振り下ろした。
「よしっ! 沼田! よくやった!」
ワタルは斧を振り下ろした状態で静止している沼田をハグした。
「ん……ん……? わ、わわっ!?」
静止状態から戻った沼田は突然ワタルにハグされている状況に戸惑い、後退するとゴブリンの死体につまずき転倒した。
「沼田、成功したか?」
俺はそんな倒れた沼田に手を差し出す。
「う、うん。【建築士】になったよ! 後、【建築の才】も貰えたよ!」
「よかったな。おめでとう」
「う、うん! ありがとう!」
俺の手を掴んだ沼田の表情は輝いていたのであった。
◆
一つ目の目的を達成した俺たちは川の上流へと再び歩みを進めた。
「ハル、一ついいか?」
「ナツ、なんだ?」
「さっきの話の続きだが……」
「人も《鑑定》できるって話か?」
「あぁ」
「ナツの想像通り、俺は佐伯たちのステータスも《鑑定》していたよ」
「やっぱりそうだったのか。それで、佐伯たちのステータスは?」
「俺たちよりもワンランク上だな」
「は? ってことは、あいつらは今の俺たちよりも強いってことなのか!」
ワタルが俺とナツの会話に割り込んでくる。
「そうだな。ワンランク上って言うのは、言葉通りの意味だ」
「――? どういう意味だ?」
「人を《鑑定》すると……んー、そうだな。ワタルの場合なら、こんな感じで能力を把握できる」
俺は足を止めて地面に剣で《鑑定》したときに頭に流れる情報を記した。
『種族 覚醒者
適性 戦士
特性 斧の才
ランク F+
肉体 E+
魔力 G
スキル 剣技 (F)
大剣技(F)
弓技 (F)
槍技 (F)
斧技 (E)
→パワースマッシュ
→フルスイング 』
――?
地面に記したワタルのステータスを見て、俺は違和感を覚える。
「うぉ……俺の覚えている技まで全部わかるのかよ!」
ワタルが記された自分のステータスを見て驚く。俺は覚えた違和感の正体に気になりつつも話を続けた。
「そして、佐伯のステータスはこんな感じだな」
『種族 覚醒者
適性 竜騎士
特性 力の才
ランク E+
肉体 C+
魔力 G
スキル 咆哮
龍鱗
大剣技(F)
→スラッシュ
槍技(G)』
「なるほど……確かにハルの言うとおりランクが違うな」
「立花さん、相澤、木下、内海もEランクだった」
「あれ? ハルは『佐伯くんより強いぞー!』みたいなこと言ってなかった?」
「そんなことは言った記憶ないが……さっきの佐伯とのやり取りのことを言ってるなら……ハッタリだな」
「うぉ……あの場面でハッタリとか……松山すげーな……」
「流石は某が主と認めた御仁よ……。『神算鬼謀の松山』の名は伊達ではござらぬな」
また、変な二つ名が増えたのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます