不穏な空気
『種族 覚醒者
適性 聖女
特性 回復の才
ランク F++
肉体 F+
魔力 E+
スキル 聖魔法(E)
→ヒール
→ホーリーライト
→ホーリーブースト
→フォースヒール
杖技 (F) 』
――!?
立花さんの肉体が俺よりも高い?
いやいや……ねーよ……ナツよりも低いのは納得できるが、立花さんよりも肉体――運動神経が低いのはあり得ないだろ……。
と、言うことは……考えられるのは、レベルアップ?
気になるのはランクのFの後ろに付いている二つの+。
俺とナツのランクは無印のF。つまり、立花さんはランクが俺とナツよりも上と言うことになる。
俺は得られた情報を頭の中で整理する。
えっと……つまり、鑑定が強化されたり、新しい魔法を習得したのは魔物を倒したことによるレベルアップの恩恵じゃない?
魔法や鑑定のようなスキルは使用頻度――熟練度によって成長し、それとは別に魔物を倒したらレベルアップ――ランクアップの恩恵がある……ということなのか?
レッツ実験! と、いきたいが……今は拠点に佐伯たちがいるので、それを許してはくれないだろう。
実験をするのは夜だな。
仮に今の考察が合っていたら、どうする?
今後は夜な夜な一人で森でレベル上げに励めばいいのか? ってか、何で俺の行動が制限されているんだよ……!
ダメだ……考えることが多すぎる……そして、何より眠い……。
今は夜に備えて寝るとしようか……。
そして、俺は太陽が昇る時間に眠りに就いたのであった。
◆
「おいっ!! 辻野!! ふざけるなっ!!」
気持ち良く睡眠していると……相澤の罵声が外から聞こえてきた。
「ふざけているのはどっちよ! 相澤君がそんなに食べたらハルの分が無くなるでしょ!」
「は? 呑気に寝ている方が悪いんだろ!」
「ハルだって昼はみんなの食材を集めてたりして大変なんだからね!」
相澤と喧嘩しているのはアキ?
そして、喧嘩の原因は……俺?
俺は起き上がり騒ぎの元凶となっている二人の元へと向かった。
「アキ、どうした?」
「あ!? ハル、おはよう!」
「おはよう。で、何を騒いでるんだ?」
「聞いてよ! 相澤君たちが酷いんだよ!」
「聞くから、何があった?」
「相澤君がね、残っている食材を全部食べようとしたの!」
「俺たちはお前たちと違って命を張って戦っているんだ! 呑気に木の実を集めているだけのお前たちと違って腹も減るんだよ!」
「呑気にって! 食材を集めろって言ったのは佐伯君たちでしょ!」
「は? ざけんな! その食材を調理して旨い飯にしているのは誰だ! 宮野だろっ! 宮野が料理人の適性を習得出来たのは誰のお陰だ!」
相澤とアキの口論は更にヒートアップする。
「つまり、喧嘩の原因は……相澤君が俺の分の朝飯まで食おうとしたのが原因、ってことでいいのか?」
「それだけじゃないよ! 美味しい食材は全部相澤君たちのグループが独占するの!」
「だから、俺たちは命を張って戦ってるんだ! 働かざる者食うべからず! って言葉くらい知ってるだろうが!」
「剛、それは俺たちが何もしていないとでも、言いたいのか?」
相澤とアキの口喧嘩にナツが口を挟んだ。
「チッ……そういう訳じゃねーけど……ただ、俺たちは拠点でのんびりとお留守番しているお前たちとは違って大変なんだよ!」
今までナツには頭が上がらなかった相澤が、ナツに反旗を翻した。
「剛ッ! 言っていいことと悪い――」
「ナツ!」
俺は相澤の言葉に激昂しそうになったナツを諌める。
「とりあえず、相澤君はお腹が空いているんだろ? いいよ、俺の分も食べて。はい、これでこの件は終了! 各自、自分の出来ることを頑張ろう!」
俺はパンッ! と手を叩いて、無理やりこの場を終息させた。
「ハル、いいの?」
「いいよ、後で何か拾って食うから」
「でも……」
「松山! 宮野も忙しいんだ! 自分勝手に宮野を使うんじゃねーぞ!」
「……了解」
使うって……宮野さんは道具かよ。
「で、今日は誰を連れて探索に行くの?」
俺は今の騒ぎを静観していた佐伯に視線を移して声を掛けた。
「今日の探索は……なしだ。少し、休息も必要だからな」
「あん? 松山、冬ニの意見に文句があるのかよ!」
佐伯が俺の質問に答えると、何も言っていないのに相澤が下っ端のチンピラの如く絡んでくる。
「ない、ない。文句なんてないよ」
俺は手を振って相澤のイチャモンを躱し、自分の寝床へと戻るのであった。
さてと……佐伯の思惑はともかく、相澤の暴走を静観するあたり……佐伯のグループによる独裁政権は着実に進んでいるな。
「ハル、いいの?」
「ハル、何で止めたんだ!」
俺の寝床に勝手に侵入してきた二人の幼馴染が文句を言ってくる。
「今、佐伯のグループと争うのは得策じゃない……それより、二人に相談がある」
「相談?」
「何でも聞いてくれ!」
俺は二人にクラスメイト全員の名前を記載した、ノートを見せるのであった。
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