第49話 宣託の導師(7)

 なんだか寝心地が悪くて、目が覚めた。体にゴツゴツと何か当たっている感じがする。


(石、取りきれてなかったかな……)


 寝る前に寝床にする地面に転がっていた石は予め取っておいたのだが、まだあったのか。背中やら肩やらが痛む。寝返りを打とうとして、気づく。

 ゴツゴツとぶつかる感触は、僕が動いていなくても下から突き上げてくる。なにかに、突かれているのだ。


「ッーー!」


 飛び起きた。暗がりになった広場はなにも見えない。体に巻いた毛布をみて、とりあえず穴が開いたりしていないことを確認する。幸い突き刺されるまではいっていないようだ。


(一体何だ……!?)


 暗闇に目は慣れてきたが、周囲にそれらしいものはなにも見えない。自分の寝ていた場所を確認するが僅かな膨らみがあるだけで、確認できるものはなにもない。

 焦る思考を落ち着けながら視線を動かす。と、広場に他の姿がないことに気づく。隣に寝ていたはずの先生が、居ない。


「先生……!?」


 いよいよ思考にパニックが起きる。必死に周囲を見回して姿を探す。緑の光の膜に包まれて視界が効きにくいが、それでも人影の有無くらいはわかる。


(もしかしてもう、襲われて……!?)


 嫌な予想に冷や汗が流れる。体が震えるのを自覚した瞬間、目の前の地面が持ち上がる。ドン、と衝撃を生んだそれはしかし、地面を僅かに持ち上げただけで終わる。地面を割って現れたのは鋭いくちばしだった。本来だったなら僕の体を貫いたはずのそれは緑の光の膜が覆い、すぐに地面へと押し戻す。


「結界、地面にも張られてるのか……」


 息と一緒に言葉を吐き出して、一度大きく深呼吸をする。


(結界の中にいれば襲われても大丈夫、なはず。でも先生の姿はない。ということは……)


 外に出たのだ。一瞬落ち着きかけた思考は焦りで埋め尽くされて固まる。足が止まり、震えと冷や汗で体が冷たくなる。数歩後ろにふらついたところで、目の前の地面が更に数度、突き上げられる。


(どうする、どうする……!?)


 混乱、焦燥、怒り、後悔。先は見えず周囲の光景と同様に思考も闇に飲まれていく。

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