BORDER‐義体犯罪捜査課‐
北原小五
Chapter.1 夜空に輝く星 ‐Stars were twinkling in the night sky‐
①Chapter.1
「BORDER ‐義体犯罪捜査課‐」
弟のことが嫌いだった。
いつも笑顔でこちらの後をついてくる弟が迷惑だった。
施設の中庭は花壇や常緑樹が生えていて、読書にはうってつけだった。
いつもそこで色んな国の本を読んでは、いつかそこに行きたいなと想像を膨らませていた。
それと同時に、自分は一生ここから出られないのだろうと思うと閉塞感で胸が痛んだ。
ある日、この中の生活は楽しいのかと弟に訊ねた。
弟は私が一緒だから楽しいと答えた。
それでも私はいつも読書中に話しかけてきたり、小さなことで泣きわめく、感情豊かな弟が嫌いだった。
顔を見ているとイライラした。腹が立った。嫌いだった。
どうしようもないほど、私は── 。
【Chapter.1 夜空に輝く星‐Stars were twinkling in the night sky ‐】
鷹が鳴いている。悠々と蒼穹を飛ぶその姿はどこまでも自由で、力強かった。
中東、シリアの首都ダマスカス。
廃墟然と化したあばら家に少年たちが暮らしていた。少年たちの身体はほとんど機械でできていて、銀のフレームが太陽に照らされて光った。彼らはぼろぼろになったサッカーボールを蹴り合って遊んでいる。木と木の間が両陣営のゴールで、その上には赤い紐が結ばれている。同じく銀の義足や義手をつけた少女たちは、地面に木の枝で絵を描いて遊んでいた。甲高い声を上げて笑い合い、ときおり井戸の地下水を飲んだりした。
「みんなー!技師さんが来たわよー!」
この辺りの子供たちを教えている教師が、近辺では見かけないアジア人を連れてやってきた。アジア人数名は、彼らの義足や義手を丁寧に触れて、違和感がないか確かめた。すべての義体を精査し終わるころには村はすっかり夜になっていた。
「うちで食べていく?」
一人の少年が言った。アジア人数名は、一瞬驚いた顔をしたが、ご馳走になることにした。
夜空には星が出ていた。過去に起きた大戦や、ここで流された血などまるで全てが幻覚だったかのような穏やかな夜だった。
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