シドの国
×90
使奴の国
プロローグ 誰かが言った昔話
昔々、テレビはまだブラウン管で、携帯電話が贅沢な高級品だった頃、世界中に悪い金持ちがたくさんいました。
悪い金持ちたちは、世界中から若い女を誘拐してきて、己の欲望を満たす”性奴隷“にしていました。
とある悪い金持ちが言いました。
「ああ、つい最近
他の悪い金持ちも言いました。
「そもそも人は性奴隷に不向きだ。顔も性格も体格も、オーダーメイドというわけにはいかない。賞味期限も5年ぽっち。それなりに遊んでいたら1年も保たないだろう。そして、一体作るのに長い長い年月がかかる。幾ら金があっても、時間ばかりはどうしようもない」
「ああ、どこかに、美しく、若く、性格の良い、私を飽きさせない完璧な女がいないものだろうか」
そして、悪い金持ちたちは閃きました。
「そうだ。いないなら作ってしまえばいいんだ」
悪い金持ちたちは、悪い研究者たちに言いました。
「金なら好きなだけくれてやろう。その代わり、美しく、若く、性格の良い、私を飽きさせない性奴隷人形をたくさん作りなさい。顔も、体格も、性格も、全てが思い通りで、決して劣化しない。従順な性奴隷用の人形を」
悪い研究者たちはとても困りましたが、大金を差し出されるとすぐに笑って答えました。
「かしこまりました。必ずや、ご満足いただける品を作りましょう」
悪い研究者たちが金を欲しがれば、悪い金持ちたちは一も二もなく与えました。
不出来な試作品も、文句ひとつ言わずに買い取りました。
兵隊が必要となれば、大勢の私兵や飼いならしたマフィアを動かしました。
そうして遂に、悪い金持ちたちの満足する“使い捨て性奴隷”ができあがりました。
「どうでしょう。顔も、身長も、胸も、尻も、声も、性格も、全てがあなたの思うがまま。もしも飽きてしまったら、その時はまた新しいのを作りましょう。どんな命令にも従う理想の性奴隷です。まだ肌の色や目の色、それと黒い痣が目立ちますが、それを差し引いても立派なものでしょう」
悪い金持ちたちは大いに喜びました。
「ああ、素晴らしい。確かにこの真っ白な肌や真っ黒な目玉は気味が悪いが、“使い心地”は申し分ない。これぞ、私の求めていた完璧な女だ」
悪い研究者は満足そうに笑い、深く頭を下げて言います。
「これからも我々にお任せください。肌や目の色の不具合も、すぐに解決して見せましょう。我々の研究は、まだ始まったばかりです」
しかし、悪い金持ちたちの願いはここで終わりませんでした。
「そうだ、折角ここまで自由にできるなら、マッサージや歌も覚えさせてはどうだろうか」
悪い研究者はニコリと笑いました。
「やってみましょう」
願いがひとつ通ったことで、悪い金持ちたちは次々に注文を増やしていきました。
「身の回りの世話も任せたいな。家事もできるようにしてくれ」
「いざという時の護衛も任せたい。達人顔負けの武術も覚えさせてくれ」
「ここまで戦えるなら、いっそのこと軍事や政治の助言も欲しいな」
「一方向からの視点だけじゃダメだ! とにかく色んな知識を詰め込んでくれ!」
こうして、使い捨て性奴隷は性奴隷としてだけでなく、最早できないことなどない万能な人造人間になりました。理想の奴隷を手に入れた悪い金持ちたちと悪い研究者たちは、この万能な人造人間の成果を大いに喜び、いつまでも幸せに暮らしましたとさ。
めでたし。めでたし。
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