#140文字小説 まとめ
紺野 真夜中
No.1~No.5
【No.1】
数行も読まない内にしおりを挟んで伏せる。隠すようにノートの下に置いたスマホの通知を確認して「ばか」と呟いた。
“今日中に連絡する”
そう返信があったきり、昇った太陽がまた沈みはじめても彼からの連絡は途絶えたままだ。
「約束なんかいらない。あなたの言葉だけ欲しいのに」
【No.2】
隣にいたきみが突然駆け出した。たまに来るあの子に笑いかけている。
あの子はきれいだ。ちゃんと自分を持った大人に見える。それに優しくてユーモアもあるなんて敵いそうにない。
過ごした時間は私のほうが長い。そんなことに意味はない。
嫉妬が私を孤独に突き落とす。
【No.3】
「いつまでも友だちだよ」
そう言ったそばから私は疑いかかる。ふたりの永遠を信じたいけれど、きみは新しい出会いを心待ちにしているんでしょう。
用済みとなって離ればなれになる瞬間を思うのは怖いから。怖いのは離れたくないからだよ。
ああ、私だけこんなにも本気なんだね。
【No.4】
君よ、先に行け。
脆く弱い私を置いていけ。
大丈夫。
私は私で歩いていく。どんなにのろまでも前へ進むことを諦めたりしない。君の栄光は私の希望。だから振り返らなくていい。
信じてる。
だから俺は先に行くよ。君はきっと立ち止まったりしない。
忘れないで。
君の栄光は俺の喜び。
【No.5】
その繋がりを斧で断ち切ったのは私だった。とても悩んだ。罪悪感に苦しんだ。笑っている奴ら全員、敵に見えて涙を流した夜もあった。
けれど君は知らないでしょう。被害者だと思っている君にこの痛みを想像することはできないでしょう。
さよなら。私はこの鎖の残骸を越え先へ行く。
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