サキュバス、メイドインヘブンのためにドロローサへの道を歩みました1

 ……良好!


 傷も癒え痛みも引いた。長い長い療養生活だったがついに、ついに完全回復だ!

それにしても、いやぁ最近怪我多すぎだって。元アマチュアボクサーの霊を倒したり鬼倒したり裏格闘技の選手倒したり親父倒したりさぁ。普通だったら全部死んでるよ。なんで生きてんだろ俺。いや、本当に謎。異能生存体か? という事はずっとブラック環境で働けるじゃん! やったー! レッドショルダーマーチ! ……殺してくれ。




 コンコン




 ノック音。誰だぁ?




「空いてるよ」


「お邪魔しまぁす! ご主人様ぁ! 貴方の隣でプリティご奉仕! ギャラクティカビューティー島ムー子です!」


「……」


「どうですかぁ!? この衣裳! ばりっばりのメイドですよぉ!? 似合いますかぁ!? 似合いますよねぇ! なんたってこのムー子ちゃんが絶対領域展開したクラシカル&モダーンなメイドレス着てるんですからぁ!? 悶絶必至は免れませんよねぇ!? はい! というわけで御唱和ください! アナタと一緒に~~~~~!? ビックリドッキリラブシャワー! はい!」


「出ていけ」


「御唱和! 御唱和ください!」


「黙れ」


「んもう! なんなんですか! 私がせっかくこうして来ているってのにその態度! バチが当たりますよ! あ、分かった~~~~~~~~~~~このムー子ちゃんがかわい子ちゃん過ぎて言葉がでないからそんな邪険にするんでしょ~~~~~~~~~~~~~! も~~~~~~~~~~~~~~~ピカ太さんったら~~~~~~~~~~~~~~~~~! か~~~~~~~~~~~~~~~~~わい~~~~~~~~~~~~~~~~~~~!」


「殺すぞ」


「照れなくたって! 照れなくたっていいんですよピカ太さん! ほらほらほらほら~~~~~~~~どうですか~~~~~~~~~~~~~一回転しちゃったりして~~~~~~~~~~はためくスカートフリフリですよ~~~~~~~~~~~~~~どうですか~~~~~~~~~~~~~? 素直な感想お聞かせくださ~~~~~~~~~~~~~い!」


「おぞましい」


「またまた~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ピカ太さんまたまた~~~~~~~~~~~~~~~!」


「三秒やる。その間に失せなければ頸椎を折る」


「お~~~~~~~~~~~? できますかピカ太さんに~~~~~~~~~~~~~? このムー子ちゃんメイドのフォルムを攻撃できるというんですか~~~~~~~~~~~~~~~~~~? やれるもんならやってみなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……」




 炸裂アックスボンバー! ハルク・ホーガンの魂をその身に刻め!




「ひ、酷いじゃないですか! 本当に攻撃するなんて! 無慈悲!」


「警告はした。それに十分慈悲深いぜ。そのメイド服が傷まないようにやってやったんだからな。とういかいい歳してなんて恰好してんだお前。恥ずかしくないのか」


「なに言ってんですかピカ太さん。今期、三六歳の女性がメイドやってる作品があるんですよ? 年齢による偏見は捨てるべきです」


「あぁアキバ冥途戦争。面白いよな。俺は赤い超新星が好きだよ」


「愛美・スーパーノヴァ・山岸ですね。ラーメン屋でビールと醤油ラーメンとカツ丼頼むパロディ演出よかったです」


「そうそう。幸せの黄……なんて? 愛美・スーパー……なに?」


「愛美・スーパーノヴァ・山岸。愛美のフルネームですよ。Wikipediaに書いてあります」


「知らなかったそんなの……」


「ピカ太さんにわかですねぇ。そんな事よりどうですかこのメイド衣裳!? 素敵ですよね!?」


「いや、だからおぞましいって。なんだってそんな恰好してんだよ」


「お? 聞いちゃいますか? それはですね~~~~~~~~~……新規オープンするメイドカフェのオープニングスタッフをやるからです!」


「……なんで?」


「ゴス美課長が新規事業として展開するんですって。メイド喫茶は固定客が掴みやすい。コンカフェ自体はレッドオーシャンだがやりようによっては収益に繋がる。らしいです」


「まぁ、適当なドリンクと料理に割高な値段ふっかけられるのと、オプションで収益出せるからな。でも、ハマればいいけど結構難しいんじゃねのか? 人件費高めだしターゲットも限定的だし」


「その辺の難しい話は知りませんが、専務の所有している都心の土地付き居抜き物件を借りるのでほぼタダみたいなもんらしいです。まぁ、その分売り上げは多めに献上しないといけないらしいですけど」


「ふぅん。じゃあ大丈夫か。集客や常連作りもサキュバスの力使えば問題ないだろうし」


「あ、今回は能力使わない感じでいくんですよ。他企業の客を根こそぎ奪って市場を乱すのはよくないので」


「毎回思うんだが、なんで悪魔なのにそんなフェアプレイ精神に溢れてんだよ」


「上手い事共存しないと悪魔もやっていけませんから……というわけで、オープンしたらピカ太さんもきてくださいね!?」


「嫌だ」


「そんな事言わず! ね!?」


「嫌だ」


「えっとぉ、聞こえないなぁ? なんて?」


「嫌だ」


「えっとぉ、聞こえないなぁ? なんて?」


「嫌だ」


「えっとぉ、聞こえないなぁ? なんて?」


「……」


「えっとぉ、聞こえないなぁ? なんて?」


「……はぁ……分かったよ。行ってやるよ」




 めんどくせぇなぁ。もういいや。適当に約束しておいて当日バックレよ。




「やったぁ! さすがピカ太さん! 信じてましたよ私は!」


「で、いつオープンすんの?」


「今日です。なので同伴お願いしま~~~~す!」


「……」




 ……迂闊!

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