サキュバス、家族旅行時の父親のテンションにマジついていけない感じでした18

 なんだその銃の悪魔とか戦争の悪魔みたいなネーミングは。チェンソーマンの世界感だったら絶対強いじゃんそんなの。だってミイラ、ミイラなんだぜ? ミイラを司る悪魔ってなんだよお前。そんなん確実にワイトキングですわ。バギクロスですわ。



「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……」


「? あいつのうめき声、なんか苦しんでいるように聞こえるんだが?」


「あの悪魔、どうやら呪法で封じ込められるようです。知能もなく能力も制限されておりますが、とてつもない魔力の渦を感じます」


「ふぅん。しかし今までなんともなかったんだろ? なんだって急に動き出したんだ?」


「それは恐らく貴族悪魔の血族である私の魔力に触発された結果かと」



 お前のせいかい。



「物理攻撃が聞くなら私の両腕機銃ダブルガトリングガンで蜂の巣にしちゃっていいかなプランちゃん。普段は使えないから、こういう機会に弾数消費したくて」



 平気で物騒な事言うなマリの奴。確かに経年劣化した銃弾をいつまでも腕に仕込んでおくのは危険ではあるけども。



「いえ、下手に衝撃を与えて封印が解けてしまったらどのような事になるか想像がつきません。ここは聖なる力で浄化するのが最善です」


「そっか。残念。でも聖なる力ってどうやって使うの?」


「それは……」



 チラチラ。



 ……見られているような気がする。プランにチラチラと目配せされているような感じがする。でもそんなのきっと勘違いだよね。だって意味分かんないもん。なに聖なる力って。ホーリー的な? 無理だよ俺そんなん。アレクサンダーの魔石だって持ってないし。



「……ピカ太様。お願いします」


「え? なに? なにをお願いされたの俺?」


「聖なる力でミイラの悪魔を倒してください」



 あ、やっぱり俺の方見てたのは気のせいじゃなかったんだ。期待を込めてチラチラ見ていらっしゃったんだ。ふぅん。馬鹿なの? できるっきゃねーだろんなもん。俺に何を求めてんだ。こちとら戦闘力五以下の極めてスタンダードな一般ヒューマンだぞ。聖なる力どころかこうして悪魔と対峙してる時点で過ぎた非日常だわ。俺の平和な日々を返してくれ。



「悪いが無理だプラン。俺はそんな技使えん」


「問題ございません。凄く集中して攻撃を与えていただければ確実にダメージが入ります。ピカ太様は身体に流れる破邪の血によって常時聖なる力が発揮されているのです」


「なんだその設定初耳だぞ。都合のいい事もあるものだな」


「なんと仰られようと事実ですので。それと、これまでムー子さんを攻撃し続けた結果力の向上が認められております。現時点でピカ太様の攻撃は並のエクソシストより祓いの効果があると思っていただいて結構です」


 なんだぁそりゃ? ドラゴンころしかぁ? ご都合主義ここに極まる。というか本当かぁその話。俄かには信じられないんだが。



「まぁいい。それが事実と仮定して、俺の攻撃があのミイラに通るとしよう。しかしあいつ、そりなりの魔力持ってんだろ? 並のエクソシストに毛が生えた程度のパワーで倒せるのか? 俺は無理な気がするんだが」


「申し訳ございませんがそこはガッツで頑張っていただければと」



 う~~~~~~~~~ん精神論! 昭和の野球部じゃねぇんだからよ! もっと論理的な事言ってくれよ! 困るよ俺だってそんな事言われたら! ガッツなんてねーし!



「あ、お兄ちゃん、攻撃くるよ?」


「なに? うぉ! あっぶね!」



 くそ! あいつ当り前に包帯伸ばして攻撃してきやがる! ファンタジーだぜ!



「うだうだ言ってないで覚悟を決めるしかないよお兄ちゃん。このミイラ、完全にこっちを攻撃対象として認識しちゃったから」


「ピカ太様。マリ様の仰る通りです。申し訳ございませんが、戦うご準備を」


「好き勝手言ってくれるなお前ら! 畜生分かったよ! やればいいんだろやれば!」



 まったくふざけやがって! 最近いつも貧乏くじを引かされる気がする! この世の理不尽が憎い! 逃れられぬ不条理に怒りの炎が限界突破だ! 仕方ない! こうなりゃせめて使いたかった技を試させてもらうぜぇ! うぉりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ! 全力ダッシュだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!



「!?」



 !



 バンテージを回避して接近既に懐ぉ! 長いリーチが逆に隙となったなぁ! だが後悔先に立たずだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ! 死ねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ! 




 足払い。




「!? !? !? !? !? !? !? !? !?」



 ストン。



 ストンて。

 存外簡単に倒れてくれたな。ありがとう! そしてここからが本番だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!



「くらえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ! テリー・ファンクの必殺技ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ! テキサス! クローバー! ホールドォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!」

 


 その両足の腱ぶった切ってくれるぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!


「……あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」



 !



 あっとあっぶね!




 こいつ! 技かけられてる状態で包帯を伸ばしてきやがった! ありかよそんなん!



「ピカ太様! サブミッションは危険です! 打撃で攻めてください! 打撃で!」




 え~~~? ストライキング~~~~~~~? 気乗りしねぇ~~~~~~~~~~

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