おまけ
サキュバス、家族旅行時の父親のテンションにマジついていけない感じでした1
※このストーリーは五章、六章あたりの時系列に組み込まれる内容となっております。
そんなわけで俺とプランとマリは三泊四日の旅行にやって来たわけである。
都内某所。行動範囲内だがわざわざ宿を借り余裕を持ったスケジュールで調整。約束していた博物館と水族館を連れていくと言ったら泊まりたいと聞かないため渋々と了承したのだが、あぁ、金と時間が飛んでいく……俺は石油王じゃないんだぞ畜生。それにだ。
「もっとあるだろTHE・CITYみたいな観光地。ランドとかシーとか。なんでだよ。なんで都心部で水族館だの博物館だのなんだ」
「お兄ちゃんは馬鹿だねぇ。何も分かってないよ。いーい? 確かに規模や施設は地方の方がしっかりしてるけど、都心では狭い土地の中でどうやって顧客を満足させるのかっていう試行錯誤を見る事ができるの。そこはマーケティングとブランディングに始まり、動線から展示、展覧を通して開催側のメッセージを如何に伝えるかという弛まない努力が形作られているんだよ。単純に自然と触れ合ったり広大な土地で遊んだりするだけじゃなく、限定された環境で最大限の効果を得ようと日夜頑張っている職員の方々の姿を垣間見る事も大事な情操教育だと私は思うよお兄ちゃん」
一理あると思うがその台詞は大人が大人に対して述べるものであり決して子供が大人に聞かせる内容ではない。まぁマリが小憎たらしく歳不相応な事を言うのは日常茶飯事。慣れたものではあるが、将来どうなるかまるで想像できず心配ではある。親でもない俺が悩む問題でもなく、大きなお世話といわれても反論の仕様がないわけであるが、それでも保護者の任を預かっている以上最低限の義務は果たさなければならないわけで、マリには子供としての生活を送ってもらって適当に大人になって二十五くらいに年上の公務員か二流、三流の当たり障りのない、将来的には課長か部長職くらいで出世が止まって「いやぁ中間管理ってのは大変だけどねぇ? ほら、生活ってあるじゃない。仕事に対しては情熱もないし楽しくもないけど、こっちも家族がいるからさ。そこそこの地位とサラリーがないと、ねぇ?」みたいな夢も希望もないけど社会人として極めて真っ当な感性を持った退屈な大人と結婚してもらって幸せでもないけど特にも不満もなくただだらりと時の進むままに老いていっていつの間にか生まれた子供や孫たちに囲まれながら「あぁなんかあっという間に死んじゃったなぁ」みたいな軽いノリで生涯を終えてほしいと思っているんだ。あまり子供らしからぬ言動をもって悪目立ちするのであれば是非もなし。丁度良い機会故、此度の旅行でねじ曲がってしまった幼心を存分に矯正してやろう。素直になぁれっ! 素直になぁれっ! 素直に……素直に素直に素直になぁれっ……!
「それにしてもピカ太様、どうして此度はピカ太様だけなのでございますか? 以前はピチウ様もいらっしゃると伺っておりましたが」
「あぁ、なんか、地元の友達が遊びに来たから無理になったんだってさ」
その割にはあまり楽しそうじゃなかったが、まぁ付き合いというのもあるんだろう。女の社会は男以上に義理やしがらみが多いと聞く。たった一度の無粋や無遠慮によってカーストを転げ落ちるなんて事もザラらしい。妹の社会性を無視するわけにはいかぬ故な。許せ、マリ、プラン。
「ゴス美お姉ちゃんもいないし、なんだかタイミング悪かったね」
「課長は多忙だからなぁ……ムー子は暇してたけど」
「ムー子お姉さんはいいや」
「マリさんに同意見でございます」
哀れムー子。子供にさえ相手にされず。仮に同伴許可が下りても断固拒否する所存であるがね。子守りの最中に馬鹿の相手などしてられん。あのアホには部屋で配信活動してもろて、 投げ銭で自分が使った電気代をしっかり払ってもらおう。
「それにしても、大人がお兄ちゃんだけって頼りないよねぇ」
な!?
「そうですねぇ。二十代三十代の男性というと、歳の割に精神や考え方が幼い事も多々ありますので」
「おいおいおいおい。お前らおいおいおいおい。待てと。この俺が頼りない、精神が幼いだと? それは聞き捨てならねぇなぁ」
「え~~~~~~~~~~~~~~~~だって事実じゃ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ん」
「Oui。まったくもって同意見でございます」
「はぁ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~!? いったいどの辺がいい歳して責任も義務もなく一人気ままな独身貴族をエンジョイしてる社会生産性皆無な能天気男に見えるというんだ~~~~~~~~~~~~~~~~~!? 説明してみろこのヤロ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~!?」
「大人なのにアニメとか漫画とかゲームとかの話ししかしないとことか」
「うぐっ!?」
「そのくせ古い作品ばかりで新しいものには消極的な態度を示しつつ”う~~~~~~~ん。今の子はこういうのが好きなのか~~~~~~~~~~そっかそっか~~~~~~~~~~”などと謎のマウントをお取りになるところなど」
「ぐぅっ!」
「ついでにゴス美お姉ちゃんに面倒見てもらっているくせにお返しとか全然しない辺りとか」
「がぁっ!」
「それからぁ……」
「いい! もういいから! ほら! もう駅に着くよ! 降りる準備しよ!?」
「もうとっくにできてるよ」
「できていないのはピカ太様だけでございます」
「……」
こいつらほんと、ほんと!
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