サキュバス、親父にもぶたれた事ありませんでした19
「ピチウちゃん駄目でしょう? そんな事言っちゃあ。ね? ちゃんと謝れば許してあげるから、ごめんなさいって」
「……」
「どうしたの? 早く? ほら? 簡単でしょう? 私もね? 別にピチウちゃんを怒りたいわけじゃないの。でも、聞き分けが悪い子には、やっぱり躾が必要になってくるでしょう? これ以上我儘を言うなら、少し痛い思いをさせくっちゃならないの。だからね? ピチウちゃん。今の内に謝って、ね?」
「知らない! 貴女に謝る事なんてないの!」
「あら、あらあらあらあらあら。そう、そうなの。ピチウちゃんは、あくまで反抗的な態度を取るんだ。じゃ、仕方ないですね。それじゃあ、今からお仕置きをしなくちゃいけないから、ね? 我慢してね?」
「馬鹿が! 隙だけだぞ!」
「ピカちゃんは後で……ね!」
「!? しま……!」
「ピカ太お兄ちゃん!」
「おい! 落ちてたナイフが動いてかすっていったぞ!? なにこれ念動力!?」
「ナイフに呪符を仕込んでいるのでしょう。式神の簡易版みたいなものですね。ここぞという場面で使用する辺り、場慣れ感があります。それなりの死線を潜り抜けてきたのでしょう」
「感心してる場合じゃねぇよ! 毒あんだろあのナイフ! どうすんだ!」
「彼女の言動から致死性の高いものはないとは思いますが……ゴス美さん。体内に入った毒の効果などは分かりませんか?」
「先ほど確認いたしました。貝毒に近い成分で、身体に回るまでの速度が異様に早いのが特徴です。ただ、その分自然解毒までもそう時間がかからないかと」
「やはり大した毒ではないようですね。では心配でしょう」
「もう一人の俺はともかくとして、ピチウはどうするんだ?」
「上手くやるでしょう」
「上手くやるって……助けないと!」
「ピカ太さん。彼方はピチウさんをなんだと思っているんですか?」
「なんだよ突然」
「あの子は私が育てのですよ? あの程度の相手なら難なく立ち回るでしょう。助けなど必要ありません」
「そうはいっても……」
「まぁ黙って見ていない」
「大丈夫なんだろうな……」
「安心してねピカちゃん。そのナイフ、毒が塗ってけれどすぐに回復するから。でもね? ピカちゃんの身体が動く前にね? ピチウちゃん。お仕置きするね?」
「……」
「今からピチウちゃんの身体に神経系の毒を入れます。大丈夫。死にはしないし、副作用もないはずだから。でもね? 凄く痛いの。末端が燃え上がるように熱くなって、それから全身の筋肉が強張り、石を詰め込まれたみたいに硬くなるの。それで、触れただけで激痛が走り、意識を失う事もできず延々とのた打ち回る……ふふ、怖いでしょう? でもね? 大丈夫。痛みの分だけ強く反省できるから。ね? 頑張ろうね?」
「……やめろ! ピチウに触れるな! 殺すぞ!」
「大丈夫ピカちゃん。貴方も分かる時が来るから。だから、ね? 大人しく見ててね?」
「……私はどうなってもいい。だけど、ピカお兄ちゃんにはもう関わらないで!」
「何を言っているの? 家族なんだよ私達? 関わらないなんてそんなの、できるわけないじゃない」
「だったら……貴方をここで……」
!?
「! ……もう、大人しくしていてって言ったのに。急に飛びかかってくるなんてひどいじゃない」
「貴女をここで殺します。二度とピカお兄ちゃんに近付けないように!」
「……ふふ。できるかしら。ピチウちゃんに」
「おい! 止めるべきだって! 本気で殺すつもりだぞあいつ! ここで娘を殺人犯にするのか!」
「どの道本気を出さない事にはどうにもなりませんよ」
「今すぐ出ていて何とかしてやればはやいじゃねーかよ! もう親父もいないんだぜ!? もう後はピチウを救出して終わりだろ! なんでこんな余計な事してんだよ!」
「まぁまぁ輝さん。一旦落ち着いてください。考えてもみてくださいよ。今この場でダスピルクエットや私が出張ってあの阿賀ヘルという人間を再起不能にしたとするじゃないですか。でもそうすると、いざという時に困る可能性があるじゃないですか」
「なんだよいざという時って!?」
「そんなもの決まっているじゃありませんか。貴方もお分かりでしょう?」
「はぁ? なんだそれ意味が……」
「ね?」
「……」
「ともかくここは一旦静観。いいですね?」
「……くそ!」
「じゃあ、ピカちゃんが動けるようになる前に終わらせちゃわないとね。いくら私でも、二人を同時に教育するのは骨がおれますから。あぁ……母親って大変。でも、それが仕事ですもの。頑張らないと。ね? ピチウちゃん」
「……知らない!」
!
「呪符での爆破……有視界戦闘ではあまり有効にはならないのよピチウちゃん。破裂音や光熱、硝煙で自らの五感も遮っちゃうんだから」
「そんなもの、私には意味がありませんから」
「そうね。ピチウちゃんには高い探知能力があるんだもんね。でもね? 分かっていても、防げなかったら意味がないんだよ?」
「何を馬鹿な……!」
「さっき私が遠隔そうしたナイフをピカちゃんに向けて投げてたでしょう? それ、ちゃあんと覚えてなきゃ駄目だよ? そうしたら、散らばってるナイフが全部操作できて自分に向かってくるかもって、想像もできるじゃない」
「ぐっ……!」
「毒、回ったみたいね。じゃあ、お注射しますね? 大丈夫。痛みに耐えて、ちゃんと反省すればいいだけだから。ね?」
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