サキュバス、アルパチーノとロバートデニーロの不仲説を聞いて思わずオレンジを口に含みました22

「で、そのオカマの霊とやらはどこにいらっしゃるんですか?」


「あぁ、プランが持ち帰ったから、多分屋敷にいる。あいつらがタクシーで帰省する際についていって回収してくるよ」


「え? ちょ、え? なに? なんて?」


「いや、だから、プランが持ち帰ったから……」


「そこから。もうそこから意味不明なんですよ。なに? 持ち帰った? どこで? なんで? なにがあったんですか?」


「あれ? 言わなかったっけ?」


「聞いてな~~~~~~~~~~~~~~~~~~い! 聞いてないで~~~~~~~~~~~~~~~~~~~す! 私何も知りませ~~~~~~~~~~~~~~~~ん! 存じ上げませ~~~~~~~~~~~~~~~~~~ん! ピカ太さんっていっつもそう! どうして何も話してくれないんですか!?」


「いや、たまたまそれだけ話してなかっただけだと思うんだけど……」


「そんな事ないですよ! この前だって町内会の食事会の事黙ってたじゃないですか!」


「いや、あれは忙しいし、参加の必要もないかなと思って……」


「なわけーーーーーーー! なわけないでしょーーーーーーーーーーー! ご近所付き合いは必須アクション! 疎かにすれば即村八分で数多の嫌がらせを受けるんですよ!?」


「そんな時代錯誤な……」


「いーーーーーーーーーーーーーえあります! マンション住まいならともかく一軒家であれば確実にあります! いいですかピカ太さん! 人間は社会性を持つ生物なんですよ!? その根本的な習性がそう簡単に変わるわけないでしょうが! いつの時代だって相互コミュニケーションは絶対的に必要なんです! TwitterをはじめとしたSNS利用者の数が多いのもそうした理由があるからなんですよ! 基本的に人間は交流を求めるものだし交われない者は排斥されていくんです! 分かりますか!?」


「わ、分かる……」


「分かったなら謝ってください! すみませんでしたって!」


「すみませんでした……」


「本当に悪いと思ってますか!?」


「いや、それは……言わされてるだけだし……」


「思・っ・て・ま・す・よ・ね・!?」


「はい……悪いと思っています……」


「ならいいです。で、なんですかそのオカマの霊っていうのは。どういう経緯で知り合ったんですか?」



 切り替えが早いな。情緒のスイッチがピーキー過ぎて怖い。



「この前、ピチウたちと百貨店行っただろ?」


「えぇ。確か私に悪魔祓いの相場をお聞きになった日の事ですね」


「そう。その日に、出会った」


「……」


「……」


「……」


「……」


「……で?」


「? なにが?」


「なにが? じゃないですよ。どうやって知り合ったかとかあるじゃないですか」


「あ、それいる?」


「いるに決まってるでしょう! なんで!? なんでそんな結果だけ分かればいいみたいな考え方なんですか!? もっと中身を教えてくださいよ!」


「わ、分かったよ……分かったからちょっと落ち着てくれ」



 なんか今日凄い怒るなゴス美……



「百貨店で霊障があったんだけど、その片づけをしにきた従業員がピチウに霊能力がある事に気が付いて除霊を頼んできたんだよ。で、じゃあやりましょうって話になって退治したわけだが、よく分からんうちに除霊はやめとこうってなったらしく、プランが引き取る事になったんだ」


「何があって除霊をやめたんですか?」


「さぁ? 俺その時、気を失ってたし」


「え? なんで?」


「そのオカマの幽霊と肉弾戦になったんだが、そいつ元闇の格闘家でめっちゃ強かったんだよ。で、これは勝てんなってなった時、なんか記憶が飛んで、気がついたら俺が勝ってた」


「……急に展開が変わりましたけど、それ本当に会った事なんですか? 嘘ついてないです?」


「確かに自分で言っていてなんだその超展開はって思ったけど全部真実だからしかたがない。なんだろうな元闇の格闘家って」


「そこもそうなんですが、記憶がないという辺りが一番気になりました」


「これに関しては俺もよく分からないんだよな。そういえば、鬼を退治した時も似たような感覚になった気がする。ほら、身体を乗っ取られた時」


「……」


「? どうした?」


「いえ……」


「……これあれか? もしかして、俺が昔の記憶ないのと関係があるやつ?」


「断言はできませんが、恐らくは……」


「……」



 

 ……ここにきて色々な事柄がリンクしてきたけど、そんな重要なキーパーソンなの俺? いったい自分に何が起こっているのか全然分からないし思ったより怖いし不安だな。漫画とか映画でこういう設定あるじゃん。で、自分が仮にこうなっても、多分ここまで悩まないし冷静でいられるって思ってたんだけど、実際になってみるとね、駄目だね。甘かったわ過去の俺。なんだろう、自分が自分じゃなくなっていくような感覚。心の一部がずっと何かに食べられていくのを実感する不快感。いやぁ、きっつい。なんか急にナーバスになってきた。これ大丈夫かな俺。ちゃんと対応できるかな。できる事ならずっと寝てたい。寝ていたいが……




「ともかくとして、やる事はやらんといかんな」


「……そうですね」



 これはピチウのためでもあるし、諦めてしまったら強力してくれるゴス美に申し訳が立たない。ここは心に火を入れて、頑張ろう。

 あ、そうだ。ゴス美といえば……


「そういえば課長。お前、幽霊苦手だけど、その辺り大丈夫? この作戦、多分そこらじゅうに悪鬼悪霊が犇めく事態になると思うんだけど」


「……キツ目の薬を持っていきます」


「……すまんな」

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