サキュバス、黄鶴楼にて上司の恋路に之くを送りました24

 そうそうこれこれ。懐かしいなぁこの感じ。昔ハマってひたすら爆弾置いてた記憶が蘇るぜ。朧気だけど。ボンバーマンはシリーズを重ねるにつれ特殊能力だ乗り物だルーイだといった要素が追加されていくけれど強化アイテムのみの簡素なスタイルが個人的には好みだね。シンプルイズベスト。無敵状態で火力フル強化の下痢テロする快感といったらないよ。リモ爆と違って一歩間違えば取り返しのつかない事態になるあのスリルが堪んないね。



「もう一回聞くけど、何が目的でここにいるの貴女?」


「はい……その……」


「あぁ!? 聞こえねぇって!?」


「はぁいぃ! 申し訳ございませぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇん!」


「誰が謝れつったんだよこのタコ! 目的を聞いてんだよ目的! もーくーてーき! 分かるかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」


「はいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ分かりますぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ! 分からせていただいておりますぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!」




 お、スピードアップだ。これ車のアイコンだって思ってたんだけど普通にブーツなんだってね。後から知ってへぇってなったよ。あぁあとキックのアイコン。あれもずっと妙なマークだなぁって腑に落ちなかったんだけどよくよく見ると足で爆弾蹴ってるんだよな。子供の頃、特に掘り下げる気もなかった真実が明かされていくの楽しいよね。未だにスーパーマリオの三角ブロックが何を表してるのかはしらないんだけどね。あれも面白いもので人によってスイカだとか足のマークだとか肝臓だとか主張してはばからないんだよね。スイカはなんとなくわかるは肝臓はねーだろ。




「この度はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ! 恐れながら課長の抜け駆けを阻止すべくぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ! 単身やって来た次第でございますぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!」 


「あ?」


「というのもぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ! 元はといえば輝ピカ太は私の担当ぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ! それを横から掻っ攫われるのは如何に給料泥棒に甘んじている身であっても頗る屈辱ぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ! この上は恥を忍んで課長の足を引っ張りに来た次第ぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!」




 ステージクリアだ。久しぶりだと思いの外手こずるなぁ。敵の行動パターンが読み切れないぜ。まぁ元よりそんなに得意でもないんだけどねボンバーマン。それでも狂ったように遊んでいたのはこの軽快で妙に脱力感のあるBGMの効果かもしれん。皿洗いしてる時とか残業で死んでる時とか口ずさんでる時があるんだよね。多分音域が低稼働モードの脳に丁度フィットするんだと思う。




「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!? 身の程知らずがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁどの口でぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」


「殴るなら殴ってください! でも止まらないんですこの想い! 広がるんですこの気持ち! そりゃ確かに最初は課長を応援してましたよ! でも考えてもみてください! ワンチャンあるかもしれない男が他の誰かに取られるってそれ、絶対後悔するやつじゃないですか! 他人の幸せを間近で見せつけられるくらいなら私は傷つく事も厭わない! その代わり全人類の不幸を私は望みますぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!」


「てめぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇこのクズぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!」


「なんとでもぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ! なんとでも仰ってくださぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ! ただし何を言ったところで課長とピカ太さんとの甘い一時は訪れませぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇん! 死んでも邪魔してやりまぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁす!」



 あぁ出た出たなんか光ってる奴。こいつ倒しにくいんだよなぁ近づくと離れるし。めんどくせぇなぁ。動きを読みつつ爆弾を設置するのがもう大変で大変で……お? 楽勝に倒せたぞ? 昔より簡単な気がするな。いや違うな。俺の思考能力が上がってんだ。昔クリアできなかったり苦戦したゲームを容易に突破できるってちょっとした強くてニューゲーム感覚を味わえていいな。この調子でサクサクと……あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?



 ウワァー


 テレテレッテッテッテッテッテ~



 畜生! 一機減った!




「いい度胸だなてめぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!? ならお望み通りぶっ殺してやるよ! 納棺する時手間がかからないよう全身の骨を折りたたみながらなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」


「できれば痛みを感じぬまま安らかに逝ける有情拳でお願いしますぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!」


「甘ったれてんじゃねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ生まれてきた事を後悔する程の痛みと苦しみを覚悟しとけぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ」


「ひぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ」





 うるさいなぁさっきからなんなんだよこいつら。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る