サキュバス、狙ってる男の妹と同居しました15

 しかし家具ねぇ……家具だけで百七十万超える物貰うって相当な気がするなぁ……使わないのに「こくれくれ!」とも言えないし、例え無料仕入れ低価格販売であっても転売は絶対にしたくないし……居間に置くソファでも貰うか? いや、これはピチウの報酬なわけだから、それに便乗しようなんて姑息な真似はできん。でもそうすると部屋の中に収まる範囲で選択せざるを得ないぞ。大量生産された流通品では総額いっても八十万くらいだろう。なんともはやリーズナブルなお仕事引き受け。これは対策を立てねばなるまい。なるまいが、今は除霊に専念しよう。



「して、ピチウ。どうやって霊を倒すんだ?」


「そうだね。二手に分かれて追い込む感じでいこうかな」


「二手に分かれる?」


「うん。マリちゃん。プランちゃん。協力してくれる?」


「はい! 分かりましたピチウお姉ちゃん!」


「承知いたしました!」



「ありがと……丸さん。このお店、中間階層に事務室とか、空けられる部屋ってありますか?」


「えぇ……各階にバックヤードがございますので、そちらであれば……」


「ではそこを使わせていただきますね」


「ちょっとまてピチウ。どうする気だよ」


「一階と屋上から気を発しながら相手を追い込んでいくんだよ。ハンターハンターでやってて、一回やってみたかったんだ。いつもは一人だし、お母さんと行く時はサポートとか荷物持ちとかだからこういう連携できなくって」



 やってみたかったんだじゃねぇよ。遊び感覚か。



「というか、お前以外はそんな強くないだろ。俺はともかくマリとプランはどうすんだよ」


「え? マリちゃんとプランちゃん、多分中の中か上くらいあるよ?」


「え?」



 嘘だろ? だってこいつらと普段暮らしててなんの変調もないんだぞ? いくらそういう力の薄い俺でも近くにセルジュニアくらい強いのいたら分かるんだぞ? それをお前……



「あ、信じてないなぁピカお兄ちゃん。マリちゃん。プランちゃん。ちょっと出してみてよ。”力”」


「OK!」


「かしこまりました!」



 バン!



「……!」


「……ひぃ!」



 うっわ寒い! なんだこれ? めっちゃ危険な感じがする! 丸なんて泡吹いちゃってるじゃねえか。



「あ、もういよ二人とも」


「は~い」


「Ui」



 収まった……うわぁ冷や汗凄い。なんこれ? めっちゃヤバいじゃん。え? 怖。



「……お前らこんな力隠してたの?」


「隠してたっていうか、使いどころがなかたっというか……」


「普段オーラを開放する機会もございませんので、必然的にお見せす事がなかっただけでございます」


「プランはまだ分かるがマリは単なる元浮幽霊だろ? そんな強力な力あるはずが……」


「なんか身体貰ったら急に霊的な力が強まっちゃって。おかげでたまに喧嘩とか挑まれて困るんだ」


「喧嘩? 誰に?」


「幽霊」


「へぇ……」



 仙水かお前は。



「マリちゃんの場合は霊体の頃に孔が開きっぱなしだったらから鍛えられたんだと思うんだけど、資質もあるんじゃないかなぁ。昔、なんか霊的な体験とかした事ある?」


「う~ん……分からないけど、父親クソに薬草食べさせられたり変な儀式に参加した事はあるよ?」


「多分そういう影響もあるのかもね。こういう力って割と後天的に育ちがちだから、知らず知らずの内に育まれていったのかも」



 ……世界観が分からねぇ。

 分からねぇけども。


「どんだけ力が強かろうが子供に別働を任せるのは駄目だろ。もしかしたら戦うかもしれないんだろ?」



 ここに連れてきたのは俺だし、なんなら戦力として計算していたわけだからこんな事言えないんだけれども。



「その辺は大丈夫。プランちゃんは強力な守護呪術がかかってるから、並の幽霊は攻撃した瞬間に消滅するよ」


「え? なにそれ? なんでそんな事になってるの?」


「あ、それはペーが私に施してくれたものですね。今の世の中は物騒だからって」



 人間世界で幽霊が襲ってくる事なんてそうないだろ……



「マリちゃんもそれなりに実用的な退魔術っぽいのがかけられてるから多分大丈夫だと思う」


「なんだそのスッキリしない言い方は」


「う~ん……ちょっと特殊過ぎて正確に把握できないんだよねぇ……感覚的に効果はなんとなくで分かるんだけど、構造はさっぱり」



 それは多分ゴス美の仕業だな。あいつ、どっかの部族の謎な魔術を取得してるとか言ってたし。



「でもピチウお姉ちゃん。私、さっきも言ったけどよく喧嘩売られるよ?」


「多分霊質的に効かないタイプだったんだろうね」


「なんだ霊質って」


「体質みたいなものかな。他にも色々な要因が関係しているかも。五行とか相性とか……」



 メガテンとか東京魔神学園みたいだな。もういいやこの話は。別次元過ぎて聞く気もついていく気にもなれん。下手したら精神汚染されて狂人の仲間入りだ。触らぬ神にたたりなし。日常生活にこういう話を持ち込まないようにしないと。



「まぁそんなわけで、二人は大丈夫というか、この中で一番安心まであるね。だから心配しなくても大丈夫だよ」


「とはいってもだな……」


「で、一番危険なのはピカお兄ちゃんから」


「え?」


「そりゃそうだよ。中途半端に力持ってるだけなんだから。見えちゃう分逆に認識されちゃって標的にされちゃうかもね」


「えー……」



 なんか、さんかく窓の外側は夜とか見える子ちゃんみたいだな……

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る