サキュバス、狙ってる男の妹と同居しました12
「やはり! いや! そうだと思ったのです! お客様からは並々ならぬ力があると感じておりました!」
なんというおべっか。客商売とはいえ露骨過ぎやしないか?
「それほどでも」
あ、全然関係ない感じだわこいつ。むしろ誇ってるわ。誇らしげだわ。称えられて少しうれしそうだわ。チョロ過ぎだわ。
「それで、何か御用でしょうか?」
「はい……実は、先ほど過ぎ去っていった幽霊についてなのですが……」
「はい」
「……ここではなんですので、事務所の方へお越しいただいてもよろしいでしょうか?」
「分かりました……だって、ピカお兄ちゃん」
「……」
なにが”だって”だ。まったく面倒事を持ち込みやがって。ここは安請け合いしないよう釘を……あぁ……もう先行ってるよ。くそ、見失わないように後をつけねば……うん? なんだ? マリとプランがこちらを見ている。なにか言いたげだな……
「どうした二人とも」
「……お兄ちゃん。私達もいかなきゃ駄目?」
「まだ全然百貨店を見ておりません」
あ、なるほど。そういう事。う~ん……
どうしよ。このままいけば間違いなく除霊のお願いをされるだろう。ピチウの判断によるが、頼まれれば恐らくは断るまい。そこへマリとプランを連れて行くのはどうかなとは思う。真っ当な大人であればどこかで遊ばせておくだろう。
でもこいつら、対霊なら確実に俺より役立つんだよなぁ。子供に戦いを強いるというのは言語道断の所業ではあるがしかし、俺の霊的パワーは恐らくラディッツに「たったの五? ゴミめ」と言われるくらいのクソ雑魚具合。仮に打撃が有効であったとしてもフィジカル面でめっちゃ強いというわけでもなし。はっきりいってドン・観音寺みたいなもんだから首を突っ込まない方が賢明である。それを考えると、元幽霊で人造人間であるマリとサキュバスのプランの戦力は重要。ピチウ一人でも対応可能化もしれんが、万が一という事も考えられる。戦える人間は多い方がいい。そうなると……
「すまんが、しばらく付き合ってくれ」。
苦渋の決断。だが仕方ない。この二人が抜けてしまってはどうにも立ち行かなくなる可能性が出てくる。いってみればカイとハヤトのいないホワイトベースに等しい。アムロだけでジオンに太刀打ちするのは流石に厳しい。
「えぇ~あんまり気乗りしないなぁ~」
「申し訳ございませんピカ太様。私も、マリさんと同じ意見でございます……」
「すまん。今度またどっかで穴埋めするから」
あ、俺ったらまた軽々にそんな事を口走って……
「本当!? じゃあ私、水族館いきたい! ペンギンさんがガラス張りの水槽で泳いでるとこ! プランちゃんどこ行きたい!?」
「それならば私、国立博物館へ行きたく存じます」
ほらね? そりゃ遠慮なくいってくるよ。そらそうだよ。せっかくの楽しみ潰されたんだもん。
あぁ……また休みが子守りで潰れてしまう……仕方ないとはいえ、やるせない……しかし約束を取り付けたのはこれで本日二度目。人数にして三人。なんだぁ? ギャルゲーかこれは? 勘弁してくれ。まぁそんな事いってもなにも解決しないわけで。腹を決めねばしょうがないわけで。返事をしなければならないわけで。早くしないとピチウを見失うわけで。
「分かった。水族館に博物館な。いつになるかは分からんが、一緒に行こうか」
「やったぁ! 約束だよ!」
「ありがとうございますピカ太様!」
……とりあえず、予定日を決めない事で多少のゆとりと余裕はできた。優先度はゴス美の方が高いから、早めにいつがいいか聞いておこう。スケジューリングは大変大事。なんだかますますギャルゲーじみてきたな……さながらときメモのようなタイトさだ。
ときメモといえばガールズサイドの四作目が発売されてたな。なんでも氷室先生の親戚が登場するらしい。過去作との繋がりがあるとちょっとわくわくするよね。
その他、新システムのマリィ・ガーデンで攻略キャラクター達の相関性が直感的に分かったり複数人デートなども楽しるんだって。俺男だけどやってみようかな!
ときめきメモリアル Girl's Side 4th Heart! 絶賛発売中!
そんなわけでマリとプランを連れて従業員の後を追い事務所とやらに到着。さすがに百貨店ともなるといい造りをしているな。住めるんじゃないか? これ。
「ご足労いただきありがとうございます。まずはお茶でも……」
「あ、どうも」
ズズズ。
茶は普通だ。玉露でも出てくるかと思ったが、さすがにそこまで金はかけれんか。
「それで、いったいどういったご用件でしょうか」
単刀直入だなピチウ。楽でいいけど、妙に場慣れしてる感があるな。頼もしい限りだ。
「はい……あの、先ほど見られたかと存じますが、当百貨店には幽霊が住み着いておりまして……」
「はい」
「それでその、先ほども申し上げましたが、お客様に大変な霊的素養があるとお見受けいたしまして……」
また調子のいい事を……
いや、違う。これは本気だな。だとしたら根拠は……
「実は私、所謂見えるタイプでして……まぁ差し当たってそれ以外に特別な事は何一つないんですが、ともかく視認できるんでございます。そのせいか、"力"の有無も感知できるのでございます」
「あぁやっぱり。微弱ながら"波動"を感じたので、もしやと思ったんですよ」
"力"とか"波動"とか能力バトル漫画か。なんだか世界観が突飛過ぎていまひとつ入り込めないし現実味が湧かないなぁ。
「それで、お客様を見込んでお願いがございます……どうか、当百貨店に住んでいるあの幽霊を退治していただけないでしょうか……」
はいきましたこの展開。予想通りのクエスト発生。やれやれ、とんだ強制イベントだよ。勘弁してくれ。ピチウもどうせ受けるんだろう? お兄ちゃん知ってるよ?
「う~ん……」
……お? 悩んでいる? これはワンチャンOKOTOWARIの可能性?
「すみません。ちょっと私の一存では決められませんので……」
よもや? よもやよもや?
「お母さんに相談させてもらっていいですか?」
「あ、はい。それはもちろん……」
あ、駄目ですねこれは。イベント開始です。お疲れさまでした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます