サキュバス、狙ってる男の妹と同居しました1

 いや、いい夜だった。

 いやぁ飲んだし食べたし話したし、中々に満足した。ふぅ。夜風が気持ちいいぜ。酔うと外の空気が美味しく感じるよね。なんでだろうね。どうでもいいかあっはっはっは!



「あ~あ~メーシャちゃん。帰っちゃうんだもんなぁ。まだ宵の口だってのになぁ~」



 こいつまだ言ってるよ。いいじゃないか別に楽しかったんだし。無理して朝まで付き合ってもらったって変な空気になるだけだぞ。一番楽しい時に解散するのが一番いいんだよこいうのは。

 という事を二度くらい言ったのに聞きゃしねんだよなこいつ。絶対好きな食べ物吐くまでがっつくタイプだよな。



「ピカ太さぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん。飲み足りなくないっすかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!? 飲み足りないっすよねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ! 追加! 追加でもう一軒行きましょう! 今日はとことん! とことんです! いいおでん屋あるんすよ! どうですか!? 日本酒でキュッ! っと!」


 

 飲み足りないのは事実だし中々魅力的な提案だが、そうはいかんのだ。何故なら俺は帰宅してHI-νを拝まなきゃならんし、それに……



「課長が早く帰って来いって言ってんだよ。今日は帰宅」


「えぇ~~~~~~~~~」


 

 何の用か知らんが何かあるのだろう。では早々に帰る。それがマナー。大人というものだ。

 もっとも、帰宅の報を送って以降スマフォに連絡が入っていない事からそこまで大した内容でもないだろう。しかし、それでもあいつには普段助けられているのだから、ここは素直に帰るが吉である。



「ピカ太さんはいつから課長の犬になったんですかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!? マキまとデンジですかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!? 私というものがありながらぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ! なんで課長なんかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!? あ、分かった! 分かっちゃいました! おっぱい! おっぱいでしょ! うんうん分かる! 分かりますよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ! そうですよねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ! そりゃそうですよねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ! 課長、おっぱいおっきいですもんねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ! バストサイズHカップですもんねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ! ま、私もH度なら負けませんけどぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ! どうですかピカ太さぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん! 確かめてみますかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!? 私のH度をぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!?」



 うるさいなこいつ。いっかい黙らすか。



「……実は黙っていたんだが。俺もHなんだ」


「え? うっそ本当!? なんだよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ! 普段”興味ないね……”なんてクラウド・ストライフみたいな態度取ってるくせにぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ! 本当はその気あったんじゃないですかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ! このむっつり! エロゲリラ工作員! 令和のスケベアサシン!」


「まぁ、HはHでも……」


「へ?」


「ヘルの方だがなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」


「ギャァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!」


 BGM邦子のテーマ.



 さて、目障りなムー子をフロントネック・チャンスリー・ドロップで血祭りにあげた事だし、コンビニで酒でも買って帰るか。ん? なんだ酒の自販機あるじゃん。今日日めずらしいな。お、ワンカップ。しかも熱燗。いいね! 外で飲むホットのワンカップだなんて通だね! よーし買っちゃお……


 ガチャン。


 出てきた出てきた。よしよし蓋開けて……


 グビ。



 っあ~~~~~染みるね! いやぁ熱燗ってのはいいね。なんだか英気が養われていくように感じる! よし、このままムー子のアホが復活するまで一服するとするか。


 グビグビ。


 

 トゥルリン。


 っと、メッセージ。誰だ? ゴス美だ。了なんだ解スタンプでも送ってきたか? いや、なんか文字あるわ。箇条書きだわ。なになに?



 帰り、以下の飲み物とお菓子を買ってきていただきますようお願いいたします。

 コーク(青い方)。

 乳酸菌飲料(プレミアム)

 紅茶(ジャルダンブルー)

 ポテチ(九州醤油)。

 クグロフ(キャラメリゼ)。

 モンブラン(できたて)。



 グビグビ。



 ……注文が多い。

 量もそうだが内容もだ。え? なに? なんて? コークは分かるよ? うん。青いやつね。俺もどっちかというとそっちが好きだよ。ちょっと苦みがあるのがいいよね。


 グビグビ。


 乳酸菌飲料のプレミアムもまだいい。あれ冬季限定だった気がするけど、鈍器ドンキ行けば多分あるだろう。だが次だ。


 ガシャン。


 なに? シャルダンブルー? 何がブルーだ。こんなもんお遣いに頼まれる俺の方がブルーになるわ。普通にペットボトルのティーでいいよペットボトルので。


 グビグビ。


 まぁ飲み物はいいよ。代替品も容易に用意できるし。でもな? 次よ。お菓子よ。お菓子編よ。なに? ポテチ(九州醤油)? 地域限定商品じゃねーか。今から羽田で飛べと? 冗談じゃないよ。


 グビグビ。


そんでクグロフ(キャラメリゼ)。何語だお前は。日本語で喋れ。


 ガシャン。


 その次のモンブラン(できたて)。作れって事? ねぇこれ作れってこと? 無茶言うな! 生まれてこの方菓子なんて作った事ねーんだよ! ふっざけ! なんこれ!? ふっざけ!? どうせっちゅーねん! コーク以外全滅の可能性もあるぞこれ!


 グビグビグビグビ。


 それともこれはあれか? 無理難題を言って体よく婚約を断るジャパニーズOKOTOWARIスタイルか? おかしくな~~~~い? 俺なんにも求めてなくな~~~~~い? なんな~~~~~ん? これなんな~~~~~ん? 全然分かんね! ぜっんぜんわっかんねぇぁこれ! どーしよっか!




「うぅ……脳みそからアルコールが漏れて出てくる……」



 お、丁度よかった。ムー子が起きたぞ。こいつにも聞いてみよう。



「ムー子。課長からお遣いを頼まれたんだが、これ、どうしたらいいと思う?」


「え~? なんですか~っと……え? なにこれ? う~~ん分かんない。全然分かんない」


「だよな~~~~~分かんねぇよな~~~~~~」


「うん! 私分かんない! 分かんない! 分かんないフェスティバル開幕! ふぅっふ~~~~!」


「いぇ~~~~~~~い! 開幕いぇ~~~~~~~い!」



 なんか段々楽しくなってきたぞ! よ~~~~~しこうなりゃヤケだ! コンビニでそれっぽいもの買ってこ! お! ちょうどいい感じにあったぞコンビニ! はい! 入店! まずはコーク(青い方)! 赤いのしかない! しゃあない! 苦みを出すためにコーヒーを一緒に買っていこう! 混ぜれば多分似た味になる! 次に乳酸菌飲料(プレミアム)! これもない! 普通のやつと牛乳でOK! 濃厚になれば満足するやろ! 次! 紅茶! もうこれは全部買っちゃう! あるだけ買っちゃう! ひゅう! ティーパーティー! コンビニエンスティーパーティーだぜぇ! 飲み物買ったら次お菓子! ポテチと醤油と鰹節と砂糖をチョイス! 混ぜれば多分九州醤油味になるやろ! 次はなんだっけ!? グスタフカールみたいなやつ! 分からん! キャラメルでも買っとけ! はい最後モンブラン! これは天津甘栗とケーキで代用! 口に入れれば一緒一緒! マリアージュマリアージュ! あとは酒と! 酒と! 酒! OK! 会計ドン! お幾らですか!?



「五千八百二十三円でございます」


「カードで!」


「カードお預かりいたします……はい。こちらレシートと控えでございます」


「ありがと! じゃ!」



 さぁ帰るぞ! うわぁ重ぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉい! 袋が重おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉい! なんこれ!? こんな買った!? 嘘やろ!?



「おいムー子! 半分持て!」


「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!? か弱い女の子にぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!? 荷物を持たせますかふつぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅうぅぅぅぅ!?」


「うるさいぞ。いいから持て。で、飲みながら帰るぞ」


「あ、それナイスアイディーア! じゃ、持ちます! ……っと、さ、準備完了! ビール持ちましたよ!


「よろしい! では! かんぱぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁい!」


「かんぱぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁい!」



 カシュ! ゴク! 



 上手い! 外飲みは最高だな! しかしなんでこんな大量に買ったんだっけ? ま、いっか! しかし遠いなぁ家! 遠い遠い……え? ついてる!? 近! 到着してんじゃぁぁぁぁぁぁぁぁん! よっしゃぁ! 玄関開放! 帰ったでぇお前ら! 土産もちゃんとあるでぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ! 




「あ、お帰りピカお兄ちゃん」 



 ブー!

 ビールで毒霧! ちょ、え? なん? なんで?



「ちょ、なに? 汚いんですけど?」



 すまんかった! いやそうじゃない! なんで!? なんでお前がここにいるの!?



「お帰りなさいピカ太さん。って、なんですかその大荷物」



 いや、荷物じゃなくてね!?



「な、なん?」


「なんですか? どうかしましたかピカ太さん?」


「なんで!? なんで……!?」





 なんで妹のピチウがいるの!?





「なんでって、そりゃあ、一緒に住むためだよピカお兄ちゃん」


「お母さまから伺っていないんですかピカ太さん」


「初耳だよ!」



 なんだ! いったい何が起こったというんだ! どういう展開!? これいったいどいういう展開!? もう分かんね!! ぜんっぜんわっかんね! あ~~~もう! 


 とりあえず、風呂入ってビール飲もう……

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