サキュバス、受肉の手伝いをする事になりました17
だいたい簡単にいうが、幾ら鬼が弱体化したからといって俺が倒せるものなのか? 体格もよくないし武器だって使えないぞ? 素人に毛が生えたような関節技だけで倒せるのか? 不安しかない。
「なぁお母さん。鬼は、結界でどれくらい弱くなるんだ?」
ガバガバ酒飲んでいるがまだ酔いは回っていない。聞くなら今だろう。
「そうですね。アブドラ・ブッチャーかタイガー・ジェット・シンくらいでしょうか」
「分かりにくいわ! せめてK-1全盛期くらいの選手で例えてくれ!」
「そうですねぇ……レミー・ボンヤスキーかミルコくらいでしょうかねぇ」
最強格じゃねぇか勘弁してくれ。マ・ポッチャなど比にならんぞ。
「鬼道は封じられるし、完全肉弾戦になると思いますから、根性で頑張ってください」
「せめてデザートイーグルとかくれませんか死んでしまいます」
「ピカ太さん、訓練もしてないのに銃が当たるとでも? ずぶの素人ならともかく相手は鬼ですよ? 銃口の向きと引き金を引くタイミングを見計らって回避するなど造作もない事でしょう」
おいおい京極真か? 結局人外じゃねーかどうやって倒すんだそんなもん。
「なら槍とか剣とか。最悪ナイフでもいいから」
「心得のない武器を持つのは返って危険です。攻撃は単調になりますし防御もままならなくなる。腹を決めて徒手空拳で挑みなさい」
「とはいってもぉ……ん?」
着信あり。誰だ珍しいな……なんだ知らん番号だ。夕食時に電話を寄越すとは礼儀を知らん奴め。一言文句を言ってやろう。ポチっと。
「誰だ」
「どうもぉ超越バイオニクスラボですぅ」
「あぁ。その節はどうも」
誰かと思えばあのオヤジか。なんで俺の電話番号知ってんだよ。
「あのーエメス八号の件についてなんですが……」
「あぁはいはい。今資金調達に奔走してるんで、もうちょい待ってもらっていいですか?」
「はいはいなるほどぉ。でー、あの、どれくらいお待ちすれば?」
「はい?」
「ですから、どれくらいお待ちすればよろしいかなぁと」
「そうですねー一年くらい待ってもらっていいですか?」
一年あればカラエフくらい強くはなれるだろう。いや、決してカラエフが弱いという意味じゃないんだが、指標としては分かりやすいかなと。
「一年ですか……うーん……」
「なんですか? どうかしたんですか?」
「いや、実はね、エメス八号を買いたいと言っている人がいまして……」
「え? マジで?」
そんな酔狂な奴がいるのか。何に使う気だ。絶対よからぬ事だろう。
「はい。それで、マリちゃんの事もあるので、一週間買い手がつかなかったらと条件を出したんですよ」
「一週間……」
「はい。なので、お買い求めになるかどうか確認させていただきたくお電話したのですが、、一年となりますとちょっと……」
「……分かった。一週間以内に用意する。ただし、絶対に他に売るなよ?」
「かしこまりました。では、お待ちしております」
「……」
切れた。
なんてこった。地力をつけて討伐する予定が突貫となってしまった。誰か精神と時の部屋用意してくんねぇかんぁ。
「どうかしたのお兄ちゃん」
マリか……いや、そうだな。こいつのためにも頑張らねばな。本来、四億などといいう金は一生働いても稼げるかどうか分からない金額。それを手にするためには、命を賭ける以外にない。
「なんでもない。ところでマリ。身体、手に入りそうだから、今の内にしたことリスト化しておけよ?」
「うん! ありがとう!」
なんて眩しい笑顔! ジジババが孫に金銭などを与える理由が分かる!
畜生! こうなったら絶達鬼殺してやる! 清洲城! 信長! 鬼殺し!
「お母さん! 結構日なんだけど! 一週間以内にどうにかならんかね!」
もう自棄だ! テンション張って大声出してこ!
「私はいつでもかまいません。ただ、ミヤネ屋を観なければならないので土日か、平日だったら夜にしてください」
こいつほんとどんだけ宮根誠司好きなんだよ!
「分かった! じゃあ次の日曜日にやろう! その間! 対策を教えてほしい」
「いいでしょう。ただ、対策といっても本当に肉弾戦となりますので、付け焼刃の技術訓練とドーピングくらいしかやる事はありませんが」
「ドーピング……」
不穏なワードで一気に萎む。激萎えだ。法的に大丈夫なんだろうなそれ。
「大丈夫ですよ。自然由来のおクスリですから。ただちょっと神経系に副作用がありますが、なんとかなるでしょう」
怖すぎるわ。何使う気だよ。死ぬよりはましだが……
「あの、お母様。それにピカ太さん。一つお願いがあるのですが……」
? なんだ? ゴス美め、何を言い出す気だ?
「いいでしょう。言ってごらんなさい」
「はい。この討伐において、ピカ太さんに帯同する事を許していただきたく」
おいおい。どうした急に。
「かまいませんが、どうしてわざわざ? 何か理由が?」
「はい。仮初とはいえ契約を交わしたとあれば一心同体にも等しく、ピカ太さんお一人だけに死地へと向かうは忍び難いと」
重い……しっかりしてるのは認めるが、あんたそんなキャラだったか?
「……分かりました。好きにしないさ。ただし。死んでも知りませんよ?」
「ありがとうございます。ピカ太さんの足を引っ張らぬよう努めます」
……なんかなぁ。本当にそれだけの理由か? 何か信じられないんだよな。なんで信じられないかのか具体的な理由は思いつかないんだが。
「課長! 頑張ってくださいね! 私も応援してます!」
「何言ってるのムー子。貴女も一緒に行くんだよ?」
「え?」
「普段クソ使えないんだから、こんな時くらい頑張って頂戴ね」
「え? え? い、いや……私、行きたく……」
「断ったらここでお前を殺す」
「いやじゃないです……楽しみです」
「ならよかった。じゃ、頑張ってね」
「はい……」
なんだか急に不安が大きくなってきたな……大丈夫かこれ。
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