第二話 話し合いと謝罪

秋人君達に会う当日になり、僕達はカフェの前で待っていた。え?なんで駅前じゃないかって?気分です。


「奏先輩!お待たせしました!」


秋人君と来てくれた美緒がこちらに来ていた。秋人君は笑顔で、美緒は複雑そうな顔をしていた。まぁ、あれから日は経つけど顔を合わせづらいのはわかる。というより僕らが悪いんだけどね…


「こんにちは秋人君。大丈夫だよ、僕らも今来たところだから」


「それなら良かったです。では中に入りましょうか」


僕らは軽く挨拶を交わした後カフェの中に入っていく。僕の隣にいた汐音と秋人君のちょっと後ろにいた美緒は無言のままだ…なんだか雰囲気が怖いなぁ…


僕らは店員に人数を伝え窓側の奥の席に座った。席順としては、僕と秋人君が窓側、僕の隣に汐音、秋人君の隣に美緒が座っている。


「それで、いきなりですけど本題に…美緒さん。この写真なんですけど…この隣にいる男性ってどちら様なんですか?」


「あー…その人は…」


美緒は一旦発言を止め僕の方を見てきた。その目には、「なんで奏は知らないの!?」とでも言いたげな雰囲気が出ていた…いや、僕も知らないしなんなら覚えてないかもだよ?


「……私のお父さんの友人の息子さんよ。この前久々に会ったから出かけてたのよ。その写真もその時のだと思うわ」


あ~…確かに名前は知らないけど存在は知っていた。本当になかなか会わないから覚えてなかっただけだったよ。


「……そう、でしたか。なんだ。僕の勘違いか…」


そう言う割には秋人君のテンションは下がっているように見えた。仲睦まじく歩いていたから知り合いとはいえ彼氏がいるのに手を繋いでいたから少なからずショックを受けているのだろうな…


「彼と手を繋いでいた事については本当に悪いと思ってるの。でも…小さい頃からしてたから断りづらくて…秋人君。ごめんなさい…」


「美緒さん…いえ、僕も疑っている部分がありましたから…事情が知れて僕も安心しました」


んーこれ、僕達居なくても良かったのでは?普通に会って仲直りできた気がするよ…


「まぁ、何はともあれ二人が仲直りできたようで何より…ん?仲直りと言うより話し合いというべきなのかな?」


「んー…どうなんでしょう?まぁ、そこは別にいいじゃないですか」


それもそうか…こら秋人君。テーブルの下で隠れて美緒と恋人繋ぎするんじゃないよ。僕らでもそれは流石にできないからね!?羨ましいとかじゃないから!


「あの、僕からは以上なんですけど…奏先輩、話したいことがあったのでは?」


「あぁ、そうだったね。危うく忘れるところだったよ」


僕は前の席に美緒になるようにしてほしいと伝え、秋人君達の席順を変えてもらった。美緒が前に来たことを確認して僕は深呼吸をして話をし始める


「美緒。前の事についてだけど…ごめん。流石にあれは言いすぎたよ」


僕は深々と頭を下げ謝罪をする。美緒はそれを見て目を見開いていた。まるで信じられないものを見ているかのようだった


「えっ…な、何いきなり。あれは元々私が悪いんだよ?奏の昔の事を知らなかったけど、それでも突き放したのは私の方なのに…」


「いや、その件に関しては僕も悪いよ。ちゃんと説明していればよかったのにね…」


僕が過去について最初に会った頃言わなかった理由は、同情されたくなかったから。特別扱いをされたくなかったからである。僕としては、過去の話を聞いて辛かったねって言ってほしくなかったし、それであの子は辛い思いをしてきた。だから優しくしてあげよう等と思われたくなかったのだ。過去じゃなくて今の僕を見てほしかったから…


「美緒との生活が楽しくて、幸せに感じていたから僕も記憶から過去の事を消しちゃってたんだよ。だから説明の仕様もなかった…こんなのはただの言い訳だってのはわかってるよ。それでも、美緒に酷いことをしたしこうなって当然だとも考えちゃった。この数カ月美緒と離れてからの生活は楽だった。でも、過去を思い出した瞬間罪悪感が出てきて…今更なんだよって言われるのは当然だよ。それでも…謝らせてほしい」


胸のうちから溢れる言葉を告げ、僕は顔を上げた。無断なのは許してほしいけど、今美緒がどんな顔をしているのか気になってしまったのだ。美緒はというと…豆鉄砲を食らった鳩のような顔をしていた


「……奏。ありがとう。謝ってくれて。正直すごく嬉しい。仲直りできるならしたいけど…ごめんなさい。私には、前と同じように接することができないかも…だって…」


そう言って、美緒は少し悲しそうな笑みを浮かべ…


「私には秋人君がいて、奏には美沢さんがいる。だから…私は今の関係を大事にしたいから…お互いに大事な人とちゃんと接していってあげてほしいなって。私はそう考えてるの」


つまり美緒は、昔みたいに仲睦まじくしたい、話もしたいけど今居る大切な人との時間を優先したい…と言いたいのだろうね。それならまぁ…うん。今はそれがいいかもね


「わかったよ。なら前の件は、僕達が互いに馬鹿したって事に…していいのかな」


「うん。それなら…私も大丈夫」


美緒は右手を僕の前に出してきた。それは、仲直りの合図でもあった。僕は右手を取り握手をした。


「こうなるなんて夢にも思ってなかったよ…私達は馬鹿をしたのにこんなあっさり仲直りしちゃってさ…」


「仕方ないよ…僕としては美緒に見捨てられたと思ってたけど、実際は僕も同じなんだって知れて良かったと思うし、反省も仲直りもできた。まだぎこちないかもしれないけどこれから四人で集まって話ができればいいなって思うよ」


僕、美緒、秋人君、汐音。この四人はきっと…きっとこれからも仲良くできると僕は思っている。この関係をもっとよくしていけたら、きっと楽しいだろう…そして僕は、幸せになってまた過去を忘れるかもしれない。でも、それでもいいなとさえ、今は思うのだから…

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る