三年目

100話:高校生活三年目の始まり

 四月。今日から三年生になる。クラスは去年と同じ一組。


「まっつん〜……雛子また、しずほのと離れたぁ……」


「私とは同じだったよ」


「知ってる〜……それは嬉しいけど、ショボンだよぉ……」


 同じクラスの音楽部員は雛子だけ。雫、炎華、なっちゃんは隣だ。


「てか、離れても隣なんだから別に良くない? 体育一緒じゃん」


「やだぁー! 同じクラスが良かったぁー!」


 炎華に泣きつく雛子。苦笑いする雫。そこになっちゃんが通りかかる。「朝から元気だねぇ」と苦笑いしながらクラス表を確認するが、その表情はだんだん曇っていく。


「げっ! まっつんとお別れじゃん!」


「そうだよ」


「えー! まっつんと同じクラスが良かった!」


 なっちゃんに泣きつかれる。何故か「ヒナはまっつんと同じクラスだよ」とマウントを取る雛子。するとなっちゃんは雫と炎華の肩を抱いて「こっちにはしずほのがいるもんねー」とマウントを取り返す。


「ヒナのしずほのを返せ!」


「「いや、別にお前のじゃないし」」


 流石幼馴染。息ぴったりだ。


「はいはい。もう行くよ雛子」


「ぶー……」


「決まっちゃったもんはしょうがないでしょ」


 拗ねる雛子を連れて教室に入る。クラス替えをしたと言っても、一年間体育で一緒にやってきたし、半数は去年と変わらないメンツだ。見知らぬ顔は居ない。演劇部の加賀くんと百合ヲタコンビも同じクラスだ。


「百合ヲタコンビは向こう行ってほしかったな……」


「まっつん酷い!」


「そういうこと言うと百合漫画の主人公にするぞ!」


「まっつんと姐さんをモデルにしたキャラで薄い本描くぞ!」


「どんな脅しだよ」


「ちょっと読みたいなそれ。いくら?」


 しれっと会話に参加して来たのは姐さんだ。何故いるのかと問うと「暇だから来た」とのこと。


「幼馴染コンビ居るじゃん」


「あいつらはほら、それぞれ彼女といちゃついてるから」


 それを聞いた百合ヲタコンビが教室を出て行く。全くあの二人は。


「私も実さんのところに——」


 言いかけてハッとする姐さん。


「あー……卒業したんだった……」


 寂しそうなその顔を見て思わずニヤニヤしてしまうと、頭を思い切り叩かれた。


「……ニヤニヤしんさんな。ボケ」


「すみません。実さんロスになってる姐さん可愛くて」


「うるせぇ」


「姐さん可愛いー」


「その可愛いは嬉しくない」


「えー? 褒めてますよ?」


「嘘つけ。馬鹿にしてんだろ」


「あははっ。すみません〜」


「ったく……。……実さんには言うなよ」


「はーい。黙っときますー」


 予冷を合図に、姐さんは教室を出て行く。入れ替わりで入って来たのは三崎先生だ。どうやら、担任も去年と変わらないらしい。「また幸生先生かぁ……」と、雛子がため息を吐いた。


「三木さん。ため息を吐くんじゃない。あと、み「はーい。三崎先生〜」最後まで言わせろよ!」


 笑い声に包まれて、私達の三年目が始まった。

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